1826.jpg
電車飛び込み、はね飛ばされた体が女性直撃…鉄道会社にホームドア設置義務はないの?
2017年01月21日 08時02分

大田区仲六郷の京急線雑色駅で、1月8日午後8時35分ごろ、進入してきた電車にはね飛ばされた男性の体が、ホーム上にいた20代の女性に直撃する事故が起きた。報道によると、女性は頭や腕を打撲する軽傷を負ったという。男性は20代と見られ、約1時間後に死亡が確認された。

防犯カメラには男性がホームから線路に飛び込む様子が写っており、蒲田署は、男性が自殺したとみて身元などを調べている。

このニュースに対してネット上では、「被害者女性、可哀想すぎる」「全駅に飛び込み出来ないようにホームドア設置するのMUSTにしてほしい」といった声が上がっていた。線路への飛び込み自殺が相次ぐ中、自殺防止のために、鉄道会社にはホームドアを設置するなどの義務はないのだろうか。甲本晃啓弁護士に聞いた。

大田区仲六郷の京急線雑色駅で、1月8日午後8時35分ごろ、進入してきた電車にはね飛ばされた男性の体が、ホーム上にいた20代の女性に直撃する事故が起きた。報道によると、女性は頭や腕を打撲する軽傷を負ったという。男性は20代と見られ、約1時間後に死亡が確認された。

防犯カメラには男性がホームから線路に飛び込む様子が写っており、蒲田署は、男性が自殺したとみて身元などを調べている。

このニュースに対してネット上では、「被害者女性、可哀想すぎる」「全駅に飛び込み出来ないようにホームドア設置するのMUSTにしてほしい」といった声が上がっていた。線路への飛び込み自殺が相次ぐ中、自殺防止のために、鉄道会社にはホームドアを設置するなどの義務はないのだろうか。甲本晃啓弁護士に聞いた。

●「あと10年もすれば設置義務が認められるようになる」

「近年、徐々に大都市圏の駅で、新しい安全設備としてホームドアの設置が進んでいます。まだ普及の度合いは高くなく、ホームドアなどの法的な設置義務について、現在は認められていません。しかし、あと10年も経てば大都市近郊では認められるようになるだろうと思います」

甲本弁護士はこのように述べる。

「駅の安全設備が未設置で、そのために利用者が事故に巻き込まれた場合、鉄道会社は工作物責任(民法717条)に基づく損害賠償義務を負う場合があります。工作物責任とは、建築物やその付帯設備が、通常備えているべき安全性を欠いている場合に生じる責任です。

工作物責任について、参考になる訴訟を紹介しましょう。昭和40年代に起きた、点字ブロックが設置されていない駅で起きた視覚障害者の転落事故に関する訴訟です。

この訴訟で最高裁は、新しく開発された駅の安全設備が未設置の場合に、鉄道会社に工作物責任が生じるか否かを判断する基準として、(1)安全設備の標準化および普及の度合い、(2)当該駅での具体的な事故発生の危険からみた設置必要性の程度、(3)安全設備の設置が困難である事情の有無などを総合考慮するとしています(なお、この判例は国鉄での事故でしたので、民法717条ではなく国家賠償法2条に関する判断です)」

甲本弁護士は、今回事故があった京急線雑色駅について次のように指摘する。

「近年高架化された駅で、躯体構造もしっかりしていると考えられるため、重さのあるホームドアを設置すること自体は可能ですが、ドアの数や位置が異なる車両が停車するため、ホームドアの設置に向けて、まだ解決すべき技術的な課題があると思われます。現在において設置義務があると認めるのは困難でしょう。

もっとも、京浜急行では設置の必要性が高い主要5駅に2020年までにホームドアを設置する計画です(http://www.keikyu.co.jp/company/news/2016/20161222HP_16192MT.html)。雑色駅は、高速で通過する列車が多い駅であり、実際に今回の事故も起きていますので、主要駅を皮切りにホームドアの普及が順調に進めば、そう遠くない時期に、同駅においても設置義務が生じてくるのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る