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企業間のポイント交換は「不課税」、国敗訴で確定…弁護士に聞く判決のポイント
2021年11月03日 08時17分

企業が発行したポイントを利用者が別のポイントに交換する際、企業間で発生する資金の移動が消費税の課税対象となる「対価」に当たるのか——。近畿地方などで導入されている交通系ICカード「PiTaPa(ピタパ)」の運営事業者と課税する国との間で争われた裁判の判決がこのほど確定した。

原告会社のポイントは、航空会社のマイルなど、提携法人の別のポイントから交換できる仕組みになっており、利用者から交換を申請されると、同社のポイントが利用者に付与される。その際、提携法人が10ポイント当たり1円の資金を原告会社に支払う仕組みとなっている。

時事通信(10月17日)によると、原告側は「ポイント還元のための実費であり、経済的利益ではない」として、課税対象には当たらないと主張。これに対し、国側は「ポイント付与という役務の提供を条件とする対価」と反論していた。

一審・大阪地裁は原告の訴えを退けていたが、二審・大阪高裁は、資金の移動について「無償取引に該当し、課税対象とならない」と判断。原告の訴えを認め、国側に逆転敗訴を言い渡した。

国側は上告を断念し、判決が10月14日付で確定。2011~2015年度のポイント交換の際に掛けられた消費税は原告会社に還付されるという。

ポイントの交換は各種サービスで実施されている。今回の判決が確定したことで、今後のポイント制度や国の税務にどのような影響を与えるだろうか。森中剛弁護士に聞いた。

企業が発行したポイントを利用者が別のポイントに交換する際、企業間で発生する資金の移動が消費税の課税対象となる「対価」に当たるのか——。近畿地方などで導入されている交通系ICカード「PiTaPa(ピタパ)」の運営事業者と課税する国との間で争われた裁判の判決がこのほど確定した。

原告会社のポイントは、航空会社のマイルなど、提携法人の別のポイントから交換できる仕組みになっており、利用者から交換を申請されると、同社のポイントが利用者に付与される。その際、提携法人が10ポイント当たり1円の資金を原告会社に支払う仕組みとなっている。

時事通信(10月17日)によると、原告側は「ポイント還元のための実費であり、経済的利益ではない」として、課税対象には当たらないと主張。これに対し、国側は「ポイント付与という役務の提供を条件とする対価」と反論していた。

一審・大阪地裁は原告の訴えを退けていたが、二審・大阪高裁は、資金の移動について「無償取引に該当し、課税対象とならない」と判断。原告の訴えを認め、国側に逆転敗訴を言い渡した。

国側は上告を断念し、判決が10月14日付で確定。2011~2015年度のポイント交換の際に掛けられた消費税は原告会社に還付されるという。

ポイントの交換は各種サービスで実施されている。今回の判決が確定したことで、今後のポイント制度や国の税務にどのような影響を与えるだろうか。森中剛弁護士に聞いた。

●「役務の提供」に該当するか否かが争点に

——今回の裁判における要点は何でしょうか。

様々な店舗でカードやアプリを提示すると、支払金額に応じて付与されるポイント制度は国内でかなり普及しており、消費者の多くが色々なポイントを集めていると思います。中でも、共通ポイントは提携先がたくさんあり、様々な店舗やネットショッピング等でも貯めることができ、またポイントで支払うことができるサービスもたくさんあって便利ですよね。

今回の事案は、その共通ポイントを会社間で交換する際に、資金移動が行われることから、税務当局がその移動に目をつけて、消費税を課税したことに対し、課税された会社が、この資金移動に対する課税はおかしいとして国を訴えたというものです。

消費税法4条1項は、「国内において事業者が行った資産の譲渡等(中略)には、この法律により、消費税を課する。」と規定しています。そして、同法2条1項8号は、「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(中略)をいう」と規定しています。

報道されている内容の限りでは、今回の裁判でも、ポイント交換の際に企業間で行われる資金の移動について、消費税課税の対象となる「国内において事業者が行った、事業として対価を得て行われた資産の譲渡等(役務の提供)」に該当するか否かが争点となったようです。

国税庁の通達では、無償による資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、消費税課税の対象となる資産の譲渡等に該当しないとされていることから、「対価を得て行われた」のか、「無償」なのかを巡って、原告・被告の主張立証が繰り広げられ、裁判所は無償であると判断して原告の訴えを認めたようです。

——ポイント交換に関するこれまでの税実務はどうなっていたのでしょうか。

今回のような場合に、税実務上どのように処理すべきかについて、国税庁の明確な基準等はなかったようですが、国税庁が公表している「共通ポイント制度を利用する事業者及びポイント会員の一般的な処理例」では、会計時の仕分け方法について、「加盟店とポイント制度の運営企業との取引については、対価性がないこと(消費税不課税)を前提とした処理としている」と記載されています。

また、税務大学校『論叢』の論文においても、ポイントの流通は不課税とする取り扱いが相当と考えられると記載されております。

ただ、2011年~2015年度の消費税は還付されるとのことですので、大阪国税局は課税取引に該当するとして取り扱ってきたことがうかがえます。

●「支払わなくてよくなった消費税額はかなりの金額に」

——判決が確定したことで、今後の税制にはどのような影響があるのでしょうか。

今回の判決が確定したことで、同様の事例では、事業者は今後、ポイント交換にかかる資金移動について消費税を課税されないことになり、他方で、これまで納税した消費税について還付を受けることができるかもしれません。

ただし、あくまでも高裁判決であり、最高裁判決ではなく、この裁判例の射程(同様の判断がなされる事案の範囲や幅のこと)がどの程度なのかもわかりませんので、ポイント交換の際の事業者間の資金移動すべてが不課税取引となるとまでいえるのか、事実関係が異なれば判断も異なってくるのかなどについては、今後の事例の蓄積を待つほかありません。

また、事業者間の取引に関する裁判例ですので、消費者サイドにはあまり影響はないかもしれませんが、支払わなくてよくなった消費税額はかなりの金額になると思われますので、もしかしたら、今後のポイント付与率などに影響するかもしれません。

——今回の判決をどのように見ていますか。

前述した国税庁公表の処理例によると、ポイント会員がポイントを使用して商品などを購入した場合には、元の金額(ポイント使用による割引前の本来の販売額)に消費税が課税され、事業者は当該商品の販売代金に対して適切な消費税を納税することになるとされています。

したがって、個人的には、今回の高裁判決のように、ポイント交換の際の資金移動は不課税取引であるとすることは適切な判断だったのではないかと思います。

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