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橋下前市長と職員の1対1メールは「公文書」、地裁が認定…どんな意義があるのか
2016年10月21日 08時34分

大阪市の橋下徹前市長が在任中、職員と1対1で交わしたメールは「公文書」なのか。そもそも公文書にあたらないとした大阪市の非公開決定を不服として、その取り消しと公開の義務付けを求めた行政訴訟で、大阪地裁は9月9日、1対1のメールは「公文書に当たり得る」として、非公開とした大阪市の決定を取り消した。なお、大阪市は控訴している。

この裁判では、2012年に橋下前市長が職員と個別に送受信したメールのうち、公文書として扱わなかった分のメールの開示を求めていた。この判決はどのような意義があるのか。開示請求をした石橋徹也弁護士服部崇博弁護士に話を聞いた。

大阪市の橋下徹前市長が在任中、職員と1対1で交わしたメールは「公文書」なのか。そもそも公文書にあたらないとした大阪市の非公開決定を不服として、その取り消しと公開の義務付けを求めた行政訴訟で、大阪地裁は9月9日、1対1のメールは「公文書に当たり得る」として、非公開とした大阪市の決定を取り消した。なお、大阪市は控訴している。

この裁判では、2012年に橋下前市長が職員と個別に送受信したメールのうち、公文書として扱わなかった分のメールの開示を求めていた。この判決はどのような意義があるのか。開示請求をした石橋徹也弁護士服部崇博弁護士に話を聞いた。

●大阪市のルールとは?

ーー従来、大阪市はどのように判断をしていたのでしょうか?

石橋弁護士「大阪市は、公文書の定義、メールの公文書該当性に関しては従来、次のように判断していました。

大阪市の情報公開条例では、公文書を以下のように定義しています。

(a)職員が職務上作成または取得したものであり、

(b)職員が組織的に用いるものとして、実施機関で保管しているもの(大阪市情報公開条例2条2項)

そして、『大阪市公文書管理条例解釈・運用の手引』で、大阪市は、組織共用の実質を備えた状態で実施機関が保有しているものとして、下記の要件を満たす電子メールは『公文書に該当する』としていました。

・1対1メールのうち、公用PCの共有フォルダで保有、プリントアウトしたものを当事者以外の職員が保有

・1対1メールの内容が転送先の公用PCで保有

・一体多数のメール

つまり、大阪市では、職員が1対1でやり取りをしただけの電子メールであれば、その内容如何を問わず、一律で、公文書とは扱わない、としていたのです」

●「重要なメールでも、意図的に隠蔽できる」状態だった

ーー裁判の争点はどこにあったのでしょうか?

石橋弁護士「原告は、1対1でやりとりされたからといって、それだけで組織共用の実質がないとは言えないとして提訴しました。組織共用とは、組織において業務上必要なものとして利用されたり、保存されている状態にあることを指します。

本件の争点は『1対1でやり取りをされたメールが組織共用の実質を欠くか否か』、つまり『1対1のメールでも、業務メールと言えるのかどうか』という点にありました」

ーー裁判所はどのように判断したのでしょうか?

石橋弁護士「裁判所は、公開対象のメールの中には公文書が含まれていると判断し、これに反する大阪市の非公開決定を違法として取り消しました。その理由は、主に以下の4点です。

(1)公開対象となったメールが市長と職員間のメールであることを踏まえ、業務と密接に関連し、継続利用が予定される情報が頻回にやり取りされると見込まれること

(2)大阪市の業務には緊急性・迅速性が要請されるものがあり電子メールを用いることが多いと考えられること

(3)こうした伝達が口頭のみで行われるとは考え難いこと

(4)こうした電子メールは事後の配布や引き継ぎに備えて保管されていると想定されると見込まれること

つまり、本判決は『1対1でやり取りをしていれば公文書ではない』としてきた大阪市の扱いを明確に否定したことになります。

大阪市の扱いの一番の問題は、いかに重要なメールであったとしても、意図的に隠蔽できるところにありました。本来、情報公開の対象として市民の監視と批判の対象とされるべき重要な職務命令や業務に関する指示であったとしても、市長から職員に対し1対1でメール送信してしまえば(複数の職員に送るものであっても、バラバラに送ってしまえば「1対1」です)、公文書ですらなくなってしまうという扱いだったのです。

こうした扱いは、情報公開の理念を真っ向から否定し去りかねない危険な扱いであり、それを裁判所が完全に否定したことには重要な意義があると考えています」

服部弁護士「裁判所は、1対1のメールであることだけを理由に、組織共用性がないとした大阪市の主張を採用しませんでした。大阪市の主張を前提にすれば、1対1のメールであれば、どのようなメールであっても公文書に該当しないこととなり、行政にとって都合の悪いメールは全て隠蔽することができてしまいますので、裁判所の判断は妥当であり、また情報公開実務においても重要な意義があると思います」

【取材協力弁護士】

石橋徹也(いしばし てつや)弁護士

平成14年10月に大阪弁護士会に登録し、大阪市内の法律事務所にて、約10年間執務した後、平成25年4月に至心法律事務所を設立する。大阪弁護士会の情報問題対策委員会副委員長として、情報公開法・個人情報法の調査研究等を行っているほか、見張り番弁護団に所属し、情報公開訴訟や住民訴訟等の代理人を務めている。

事務所名   :至心法律事務所

事務所URL:http://shishin-law.com/staff/

服部崇博(はっとり たかひろ)弁護士

平成23年2月に大阪弁護士会に登録する。現在は、石橋弁護士と同じく、大阪弁護士会の情報問題対策委員会に所属し、見張り番弁護団に所属する。情報公開請求訴訟では、原告となる場合もある。

事務所名   :田中清和法律事務所

事務所URL:http://www.tanaka-seiwa-law.com/index.html

(弁護士ドットコムニュース)

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