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2年目外資系OLを襲った試練「あなたの部署は売却されます」…転籍拒否はできるのか
2018年05月20日 10時10分

「今この事業部で働いている社員は全員、売却先の会社で働くことになります」。都内の外資企業に勤めるユウコさん(20代女性・仮名)はつい先日、自分の部署が2018年度末までに他社に売却されると聞き、驚いた。

海外の本社とのテレビ会議中に突然発表されたもので、対象の部署には不安が広がっている。

給与については「転籍して2年間は同じ水準以上を保証する」と言われたものの、周りは「先行きが見えない」と不安にかられ、転職活動を始めている。ユウコさんは入社してまだ日も浅く、転職するよりも今の会社に残りたいと考えているそうだ。

もともと入社した時にも「売却されるかもしれない」という話は一応あったが、「色々な可能性がある会社」といい、当然、別の部署に異動できるかのような説明をされたという。

「今この事業部で働いている社員は全員、売却先の会社で働くことになります」。都内の外資企業に勤めるユウコさん(20代女性・仮名)はつい先日、自分の部署が2018年度末までに他社に売却されると聞き、驚いた。

海外の本社とのテレビ会議中に突然発表されたもので、対象の部署には不安が広がっている。

給与については「転籍して2年間は同じ水準以上を保証する」と言われたものの、周りは「先行きが見えない」と不安にかられ、転職活動を始めている。ユウコさんは入社してまだ日も浅く、転職するよりも今の会社に残りたいと考えているそうだ。

もともと入社した時にも「売却されるかもしれない」という話は一応あったが、「色々な可能性がある会社」といい、当然、別の部署に異動できるかのような説明をされたという。

●「事業譲渡」か「会社分割」かで異なる

こうした場合、次の会社への転籍を断ることはできるのだろうか。

野中武弁護士は、「今回の売却の手法が『事業譲渡』であれば転籍は拒絶できますが、『会社分割』であれば強制的に転籍されてしまいます。まずは、ご自分の部署がどのような法的枠組みで売却されるのかを確認する必要があります」と説明する。

ではまず、今回の売却の手法が「事業譲渡」の場合はどうなるのか。

「『事業譲渡』(会社法467条以下)で従業員を転籍するには、個別に労働者の同意が必要となります。『事業譲渡』は、法的にはあくまでも事業を売却するという『取引』です。そのため、どの従業員の労働契約を取引の対象とするのかも定めることができます。

しかし、労働者からみれば、誰が雇用主となるのかは非常に重要なことですから、事業譲渡の対象とするには、労働者から個別に同意を得る必要があります」

所属部署が売却の対象になっても、「事業譲渡」の手法であれば、従業員の地位がすぐさま売却先に移転されるわけではないということだ。

「そうなります。ユウコさんとしては、今の会社に残りたいということであれば、転籍を拒絶することができます。

ただ、ユウコさんが転籍に応じない場合、会社は、他の部署へ異動させたり、場合によっては降格、解雇などをしてくる可能性があります。会社側のその対応が有効かどうかについては、それぞれの事案の具体的な状況によるでしょう」

●「会社分割」であれば強制的に転籍

次に、売却の手法が「会社分割」の場合はどうなるのか。

「『会社分割』(会社法757条以下)の場合は、会社の事業の全部または一部が分割され、労働契約も含めて会社の権利義務が包括的に売却先の会社に引き継がれます。株主総会の特別決議が必要な手続きです。

これは、契約関係が丸ごと分割先の会社に移転されるということです。『会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律』によれば、分割された事業に『主として』従事する労働者の労働契約は、分割先に当然引き継がれるものと規定されています。

したがって、ユウコさんは、自分が主として従事している部署が会社分割の対象とされた場合には、同意がなくても強制的に転籍させられてしまいます。

なお、会社分割の場合、分割によりこれまでの組織がただ分割されただけで、労働契約の内容は従前と同一であるとされています。『会社分割に伴い使用者が講ずべき指針』(平成12年12月27日労告127)によれば、会社分割を理由とする労働条件の変更はできないと解されています」

売却の手法が「会社分割」の場合は、労働条件は変わらないものの、強制的に転籍されてしまうということか。

「はい。『事業譲渡』と『会社分割』とは、表面的な事象は似ているものの、法的には大きく異なります。ユウコさんは、上司による『売却される』などの口頭の説明を鵜呑みにすることなく、正確な情報を入手した上で、専門家に相談して対応することをお薦めします」

(弁護士ドットコムニュース)

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