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落し物を拾ったまま、忙しくて届けられず…「ネコババ」で逮捕されちゃう?
2018年10月02日 09時50分

「落し物を拾ったんですけど、忙しくて警察に届けそびれてしまいました。どうすべきでしょうか」ーー。こんな質問が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者はある日、スーパーマーケットで落し物のカバンを見つけました。ところが、交番に届けようと思ったのに、うっかり忘れてしまったそうです。その後も、忙しくてなかなか機会を作れず、1週間がたってしまったといいます。

拾ったものを自分のものにすると、「遺失物横領罪」に問われる可能性があります。相談者の場合、見た目は「ネコババ」と変わらない状態といえそうです。何か罪に問われる可能性はあるのでしょうか。染矢修孝弁護士に聞きました。

「落し物を拾ったんですけど、忙しくて警察に届けそびれてしまいました。どうすべきでしょうか」ーー。こんな質問が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者はある日、スーパーマーケットで落し物のカバンを見つけました。ところが、交番に届けようと思ったのに、うっかり忘れてしまったそうです。その後も、忙しくてなかなか機会を作れず、1週間がたってしまったといいます。

拾ったものを自分のものにすると、「遺失物横領罪」に問われる可能性があります。相談者の場合、見た目は「ネコババ」と変わらない状態といえそうです。何か罪に問われる可能性はあるのでしょうか。染矢修孝弁護士に聞きました。

●遺失物横領、いつから「既遂」になる?

ーー今回のような場合、犯罪になってしまうのでしょうか?

問題となるのは、「遺失物横領罪」がどの時点で、既遂(犯罪に着手した後、その犯罪を完成させるくらいの意味と考えてください)となるのか、という点です。

この点については、「占有離脱物であることを認識しながら、不法領得の意思をもってこれを領得、すなわち、不法領得の意思を発現する外部的行為(例えば、拾得、隠匿等)をす」ると、既遂となると考えられています(「条解刑法(第3版)」813頁参照)。

抽象的で難しいので、本件の場合に当てはめて考えます。

相談者は、スーパーマーケットで落し物のカバンを見つけ、それを拾った時点では、あくまで「交番に届けようと思って」いたのですから、通常は、「不法領得の意思」なるものは無かったと考えられます。そのため、この時点では、遺失物横領罪は成立しないものと考えられます。

もっとも、気が変わり、第三者に売却して現金に換えてしまったような場合には、売却行為を行った時点で、「不法領得の意思をもってこれを領得」したものとなり、「遺失物横領罪」が成立することとなります。

また、第三者へ「売却」するといった行為ではなく、「不法領得の意思」をもって「隠匿」(物を隠して発見できなくするくらいの意味と考えてください)したと評価される場合にも、その時点で遺失物横領罪が成立する場合がありますので、注意が必要です。

ーー拾った時点では、遺失物横領にならなくても、家に長期間置いていたら「隠匿」を疑われないでしょうか?

後で警察に届けるつもりであっても、どのくらいの期間、自宅などで持っていると、「隠匿」と評価される可能性があるのかーー。

あくまで私見ですが、通常仕事などをしていても数日中には、最寄りの警察署へ届けに行くことは可能であると考えられるため、やはり数日から1週間くらいが一つの目安になるのではないかと考えます。

自宅に保管していた「期間」だけで、遺失物横領罪の成否が決まるわけではもちろんないのですが、本事例のようなケースでは、落し物を拾ってからどのくらいの時間が経過しているのか、この点も、遺失物横領罪の成否を考えるうえで一つの重要なポイントとなるものと考えられるため、落し物を拾った場合には、出来る限り、速やかに最寄の交番など届けることが肝要といえます。

ーー最終的に疑惑が晴れても、取り調べなどを受けたら嫌ですものね。

●窃盗罪より遺失物横領罪の方が軽い

ーーところで遺失物横領罪に問われると、どの程度の罰則があるのでしょう?

「遺失物横領罪」に関して、刑法254条によると、「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役または十万円以下の罰金もしくは科料に処せられる」と規定されています。「占有離脱物横領罪」という呼び方をすることもあります。

どのような場合に成立するかについては、過去の判例をみると、電車内に乗客が置き忘れた物など、誰の占有にも属していないと考えられる物について、持ち去った場合などがその典型例となります。

しばしば、どちらに該当するのか区別が問題となる犯罪類型に、「窃盗罪」(刑法235条)がありますが、窃盗罪は、あくまで持ち去った物が「他人の占有下」にあったと言える場合に成立することとなります。スーパーの商品の「万引き」などがその典型となります。

つまり、行為者が持ち去った物が、「他人の占有下にあった」かどうかが区別のメルクマールということです。

ちなみに、窃盗罪の場合には、「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」(刑法235条)とされているため、「遺失物横領罪」の方が、「窃盗罪」よりも軽い法定刑となっています。他人の占有を侵害するものではない点で、違法性の程度が低いと評価できることなどが理由だと考えられます。

(弁護士ドットコムニュース)

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