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迷惑客に揺れる「回転寿司」、スゴい仕組みはどう進化してきたのか
2023年03月20日 10時05分

スシローやくら寿司などの大手回転寿司チェーンでは、「客テロ」とも呼ばれる迷惑行為が多発した。

一連の迷惑行為をきっかけにして、回転寿司チェーンの「すし銚子丸」は、回転レーンを使用した商品の提供を4月26日までに順次終了し、タッチパネルを使った全品フルオーダー制に移行すると発表して話題になった。

回転寿司は「回る」という仕組み自体が画期的だったが、このような提供方法はどのようにして生まれ、広がっていったのだろうか。

スシローやくら寿司などの大手回転寿司チェーンでは、「客テロ」とも呼ばれる迷惑行為が多発した。

一連の迷惑行為をきっかけにして、回転寿司チェーンの「すし銚子丸」は、回転レーンを使用した商品の提供を4月26日までに順次終了し、タッチパネルを使った全品フルオーダー制に移行すると発表して話題になった。

回転寿司は「回る」という仕組み自体が画期的だったが、このような提供方法はどのようにして生まれ、広がっていったのだろうか。

●ヒントになったのは、ビール製造のベルトコンベア

日本で最初に「回る寿司屋」を始めたのは、大阪で立ち食い寿司店を営んでいた白石義明氏だ。寿司4貫を20円という破格の値段で提供していたため、店に客が殺到し、より効率的に寿司を提供する方法はないかと考えていた。

そこで、視察したビール工場でベルトコンベアで運ばれていくビール瓶に次々とビールが注入される様子を見て、これを寿司にも活用しようと考えた。

コーナー部分でスムーズに寿司を回せないという問題に対しては、ある日ふと手に取った名刺の束を扇形に開いたところから、コーナーも扇形に展開すればよいのではないかと思いつき、アイデアを形にしていった。

こうして1958年に「廻る元禄寿司 1号店」を東大阪市で開店し、回る仕組みは1962年に「コンベヤ附調理食台」として、白石義明の名義で実用新案登録された。

特許情報プラットフォームより(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S37-018526/EB63727E8B01A8433DB9B4E8EDC8DD58B160DBE9345C9B3FE09D88D5B64D1109/22/ja)

1968年に東日本にも初出店したが、江川金鐘氏が白石氏の元を訪れ、回転寿司のレーン普及を目的に名古屋以北における販売契約を締結したことで、東日本では江川氏の「元禄寿司」が展開されていくこととなった。実用新案によって保護された元禄寿司は、1970年の大阪万国博覧会をきっかけに全国的に知名度をあげ、日本中に店舗を展開していった。

また、元禄寿司を経営していた元禄産業は、「まわる」「回転」などを商標登録していたため、1997年に使用を認めるまでは、他社は回転寿司という表現を使えなかった。

●1978年に実用新案権が満期を迎えると、競争が激化

1978年に「コンベヤ附調理食台」の実用新案権が満期を迎え権利が切れると、さまざまな企業が新規参入し、競争が激化していく。そして、今では一般的になっているさまざまな仕組みが生まれていった。

例えば、お茶が出てくる寿司コンベア機「自動給茶装置付寿司コンベア機」だ。元禄寿司が回転寿司業界をほぼ独占していた頃、駅前や繁華街などにある小さな店では省スペースのため上段に湯呑みが流れ下段に寿司が流れる「2段レーン」が多くの店で採用されていたのだが、お茶を入れた湯呑みが流れていたり、お茶の入ったポットが上段にあったため、やけどをする人も多かった。

そこで、コンベアと給茶装置が一体化した現在の装置が1974年に北日本カコーで開発された。また同年に皿洗浄機も販売されるなど、回転寿司はさらなる進化を遂げることになる。

●寿司カバーや皿回収システムなども開発

1978年に実用新案権が切れてから多くの企業が新規参入したことで、回転寿司店が急増した一方、寿司を握る職人が需要に対して足りない状況となる。1980年になると、北日本カコーはじめ各社が「寿司ロボット」を開発していった。

また、従来は楕円型のレーンの中で職人が寿司を握ってレーンに流すという提供形式だったものを、「無添くら寿司」の前身である「回転寿司くら」が「直線型レーン」を業界で初めて導入した。これによって、アルバイトがバックヤードで作った寿司をレーンに流せば良くなり、職人が不要であるため大量生産・多店舗展開がますます可能となった。

そんなくら寿司では、その後「寿司カバー」や皿回収システム「ビッくらポン」などの画期的なアイデアが生まれていった。どちらも特許を取得しており、寿司カバーは海外展開も見据えて米国などで特許が取得されている。

また、スシローの「回転ずし管理システム」では、寿司皿にICチップ、メニュー立てに発信回路部分がつけられており、寿司がレーンを進んだ距離がわかるようになっている。商品の種類ごとに廃棄されるまでの移動距離が設定され、それ以上の距離を進んだものは自動廃棄されるようになっている。もちろん、これも特許取得済みだ。

特許情報プラットフォームより(特許3607253)

●迷惑行為を受けて、AIカメラシステムの導入も

今回の迷惑行為を受けて、くら寿司は3月2日、回転レーンでの迷惑行為を防止する「新AIカメラシステム」の導入を発表した。回転レーン上に設置されたAIカメラによって、レーン上を流れる寿司カバーの不審な開閉を検知すると、本部のアラートがなり、店舗に連絡する仕組みだ。

くら寿司プレスリリースより(https://kyodonewsprwire.jp/release/202303013483)

すし銚子丸のように、回転レーンの使用をやめるケースがある一方で、くら寿司のように、技術的な対策を強化することで乗り切ろうという動きも出ている。ずっと進化を遂げてきた回転寿司がどう変わっていくのか、とても興味深い。

<参考文献>
「回転寿司の経営学」(米川伸生、東洋経済新報社)

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