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猫20匹「飼育放棄」ケージ野ざらし、ミイラ化死骸も…「ネグレクト」の現場
2018年03月10日 09時48分

空前のペットブームといわれる中、埼玉県三芳町の民家でこのほど、適正な飼育を放棄された20匹以上の猫がみつかった。5〜8匹の猫が詰め込まれた複数のケージが庭に置いてあった。雨よけとして、ガムテープとペットフードの袋で補強されて、猫たちが逃げ出さないように施錠されている。そんな異様な見た目もさることながら、猫の糞尿のにおいが漂い、掃除も行き届いていない不衛生な環境だった。(弁護士ドットコムニュース・山下真史)

空前のペットブームといわれる中、埼玉県三芳町の民家でこのほど、適正な飼育を放棄された20匹以上の猫がみつかった。5〜8匹の猫が詰め込まれた複数のケージが庭に置いてあった。雨よけとして、ガムテープとペットフードの袋で補強されて、猫たちが逃げ出さないように施錠されている。そんな異様な見た目もさることながら、猫の糞尿のにおいが漂い、掃除も行き届いていない不衛生な環境だった。(弁護士ドットコムニュース・山下真史)

●「氷山の一角にすぎない」

猫たちの救出に尽力したNPO法人「にゃいるどはーと」(埼玉県朝霞市)のスタッフが2月中旬、この民家に初めて入ったとき、ミイラ化した猫など、計3匹の死骸があったという。ケージの中からは、まともなエサが与えられておらず、冬の寒さや不衛生な環境で衰弱している猫もみつかった。2月下旬、弁護士ドットコムニュースの記者が訪れたときにも、目を悪くした猫がケージの奥で寒そうに毛布にくるまっていた。

「にゃいるどはーと」理事長の東江ルミ子さんによると、三芳町のケースは、動物の「ネグレクト」にあたる。ネグレクトは、近所の人たちが異変に気づかなかったり、気づいても何も言わないことが多いため、「今回のケースは、氷山の一角にすぎない」という。どうして、こんな悲惨なことが起きるのか。

適正な飼育を放棄された猫たち(埼玉県三芳町・2018年2月26日撮影)

●「病気になっても病院に連れて行かず、死んでもそのまま放置」

そもそも、動物のネグレクト(飼い殺し)は、適正な飼育を怠ったり、放棄したりすることをいう。自分たちでは世話しきれないほど異常な数を飼って、繁殖させてしまう「多頭飼育崩壊」と共通している点も多い。だが、東江さんは「多頭飼育崩壊よりも虐待に近い」と指摘する。

ネグレクトの飼い主は、当初は「かわいそう」という感情から飼いはじめるが、犬や猫についての正しい知識やそもそもの生活能力がない。そのため、動物が病気になっても病院に連れて行かなかったり、死んでしまってもそのまま放置するということがしばしば起きるという。

今回の飼い主も、性格が残忍というわけでなく、虐待しているという意識もないように感じた。ただ、少なくとも、猫の飼い方について、本を読んだり、ほかの人から聞いて世話をしたりするような能力はないとも思えた。

「飼い主本人は、『かわいそう』な猫たちを世話してあげてるつもり、良いことをしているつもりです。だから、過酷な環境を与えていることにまったく気づいていません。何匹も死なせてしまったとしても、やがて慣れてしまうのです」(東江さん)

適正な飼育を放棄された猫たち(埼玉県三芳町・2018年2月26日撮影)

●「地域の人たちもみんな目をそむけている」

ネグレクトの飼い主は、地域関係がうまくいっていない孤独な人が少なくない。「地域の人たちもみんな目をそむけているのです」(東江さん)。三芳町の飼い主にもまさにそういう印象を受けた。だから、東江さんはまず、その飼い主に「あなたの味方だ」と伝えたという。「あなたは間違っている」と上から目線や邪険に接してしまうと、飼い主も心を閉じてしまうからだ。

「正解は誰にもわかりません。だから、私はその人を受け入れるようにしています。飼い方は間違っていたけど、『愛』があったことは認めてあげたい。そうじゃないと逃げ場がなくなるからです。そのうえで、『虐待と思われても仕方ない』と伝えないといけません」(東江さん)

ただ、ネグレクトから猫たちを救出しても、一件落着というわけではない。飼い主がまた同じことを繰り返さないようにしないといけないからだ。東江さんは、ネグレクトの飼い主をボランティアに引き込むなど、より深いところまで関わっていく必要性を感じている。

適正な飼育を放棄された猫たち(埼玉県三芳町・2018年2月26日撮影)

●「動物をモノとして扱っている法律をすべて変えるべきだ」

ペットブームに沸く中、犬や猫など人気の動物は、小さいうちからペットショップで売られている。中には、生後数週間という子猫もいる。動物をとりまく環境を改善するため、動物愛護法改正の気運が高まっており、専門家からは、ペットショップや繁殖業者に対する規制強化を求める声があがっている。

東江さんは「動物を『モノ』として扱っている法律をすべて変えるべきだ」と主張する。現行法上、他人が飼っている動物を殺しても「器物損壊」という罪を問われる程度。そして、家族のように愛情を注いだとしても、死んだら「廃棄物」(ゴミ)扱いになる。つまり、「動物=モノ」だ。

「動物愛護法の改正は悪くないことですが、結局は『モノ』扱いのため、よほど悪質なケースをのぞいては、警察が動かないことが多い。そういう現状を変えないと意味がありません。悪徳な繁殖業者がはびこるのも『モノ』だからです。『モノ』ではなく『命』に変えれば、いろいろな規制をつけていけるのではないでしょうか」(東江さん)

適正な飼育を放棄された猫たち(埼玉県三芳町・2018年2月26日撮影)

●「そんなに簡単に、命をつぎに託していいのか」

さらに、東江さんは「繁殖業者だけでなく、ボランティア団体にも規制を取り入れてほしい」と語気を強める。ボランティアの中には、目の前の問題の解決のため、不妊・去勢手術をしないまま、猫の譲渡するところがあるという。

また最近では、中古品を譲れる「ネット掲示板」を使って、猫を譲っている人も現れてきている。たとえば、相手と駅で待ち合わせをして、そのまま引き渡して終わり・・・というケースもあるようだ。

「そんなに簡単に、命をつぎに託していいのでしょうか。結局、無責任な飼い主だった場合、今回のようなネグレクトが起きてしまいます。我が子を託すという意識でやってもらいたいです。そうじゃないと、『世の中ぜんぶが腐ってる』と言わざるをえません」(東江さん)

適正な飼育を放棄された猫たち(埼玉県三芳町・2018年2月26日撮影)

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