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「発達障害を退職理由にするよう指示された」 日本年金機構の元職員が慰謝料求め提訴
2024年01月12日 17時32分
#障害者雇用

日本年金機構(東京都)で働いていた30代男性職員が1月12日、障害を理由に退職させられたなどとして、年金機構に対して慰謝料など約1200万円を求め、東京地裁に提訴した。

訴状によると、原告側は「上司のハラスメントなどが原因で休業、その後、面談などで退職を強いられた上、発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)を理由にするよう書面で“指示”された」と主張している。

日本年金機構広報室は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し「訴状を見ていないため、コメントをいたしかねる」と回答した。

原告代理人の嶋﨑量弁護士は、提訴後の記者会見で「働きやすい環境を整えるべきなのに、むしろ真逆の対応で極めて不適切。障害者雇用促進法の理念に反している」と説明した。

原告男性も会見に出席し「厚生労働省所管の組織なのに、理解がないんだなと思う」と話し、障害者への合理的配慮を社会全体で考えるきっかけになってほしいとの思いを述べた。

日本年金機構(東京都)で働いていた30代男性職員が1月12日、障害を理由に退職させられたなどとして、年金機構に対して慰謝料など約1200万円を求め、東京地裁に提訴した。

訴状によると、原告側は「上司のハラスメントなどが原因で休業、その後、面談などで退職を強いられた上、発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)を理由にするよう書面で“指示”された」と主張している。

日本年金機構広報室は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し「訴状を見ていないため、コメントをいたしかねる」と回答した。

原告代理人の嶋﨑量弁護士は、提訴後の記者会見で「働きやすい環境を整えるべきなのに、むしろ真逆の対応で極めて不適切。障害者雇用促進法の理念に反している」と説明した。

原告男性も会見に出席し「厚生労働省所管の組織なのに、理解がないんだなと思う」と話し、障害者への合理的配慮を社会全体で考えるきっかけになってほしいとの思いを述べた。

●年金機構は「退職勧奨」などの事実を認めず

原告側の説明によると、男性は2018年4月に入社し、翌年7月に登用試験を受けて正規職員となった。その4カ月後、上司に叱責されたことなどが原因で、過呼吸・めまい・不眠などの適応障害を発症したという。2020年1月に休職し、同年3月には発達障害の一つ「ADHD」と診断された。

同年10月、男性が機構との面談で診断について告げた際、職員から「そういうことであれば、働ける場所はない」などと言われたという。その数日後に「退職願」のひな形と共に退職の手続き書類が送られており、その書類には注釈として「退職願の〝理由〟欄には、例えば『注意欠陥多動性障害にて通院加療中であるが、現状では復帰することが困難なため』等と記入(略)してください」との記載があったとしている。

男性は「当時は精神状態も悪く、そうせざるを得ないものだと思ってしまった」といい、機構側の指示通りに記入し送付。12月末に退職に至った。

原告側によると、上司が机を叩くなどしたり、苛立った態度で接したりした行為などが原因で強い心理的負荷がかかったことは、2022年に労災として認定されている。一方、年金機構側はこれまでの交渉で、上司の行為や退職勧奨の事実は認められないと回答しており、今回の提訴に至ったという。

●原告代理人「法の禁じる差別的取り扱いだ」

嶋﨑弁護士は「内部のハラスメント相談室に連絡し、労働局での調停もあったが、機構側は向き合ってこなかった。裁判所を通じて責任を問うていきたい」と述べた。2016年に施行された改正障害者雇用促進法では、事業主による差別の禁止や合理的配慮の提供の義務を規定し、厚労省が細かく指針も出している。

「本来ならば事業主として原告の障害を把握し、それに応じた合理的配慮をすべきところ、むしろ障害を理由に退職を強いたのであり、法の禁じる差別的取り扱いだ」(嶋﨑弁護士)

2018年におこなわれた日本年金機構の運営評議会議事録には、委員からの問いに対する機構側の回答として、このような記載がある。

「障害者の雇用については非常に重要なことと考えており、全国の年金事務所・事務センターで、有期雇用職員、無期転換職員として配置している。2019年度から、障害者の法定雇用率(国、地方公共団体等)が2.5%へ引き上げられるが、機構における直近の雇用率はこの基準を超えており、引き続き取り組んでまいりたい」
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