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社長のパワハラで退職を決意「せめて将来分の給料をもらいたい」 逸失利益として認められる?
2024年12月16日 10時21分
#パワハラ #適応障害 #退職勧告

パワハラを受けたので退職するつもりだが、慰謝料と将来もらえるはずだった報酬を請求したい——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者が勤める会社の社長は、社員を罵倒したり過剰な責任追及をしたりすることが多々あり、これまでも社内で問題になっていました。

パート勤務の相談者も、この社長からミスをあげつらわれて恫喝されたことがあったそうです。また「業務態度が良くない」「あなたとは働きたくない」などと言われてきました。心身を害したため、会社からは慰留されましたが、退職を決意したようです。

心療内科で適応障害の診断をもらったという相談者ですが、退職にあたってパワハラを理由に損害請求したいと考えているようですが、可能なのでしょうか。徳田隆裕弁護士に聞きました。

パワハラを受けたので退職するつもりだが、慰謝料と将来もらえるはずだった報酬を請求したい——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者が勤める会社の社長は、社員を罵倒したり過剰な責任追及をしたりすることが多々あり、これまでも社内で問題になっていました。

パート勤務の相談者も、この社長からミスをあげつらわれて恫喝されたことがあったそうです。また「業務態度が良くない」「あなたとは働きたくない」などと言われてきました。心身を害したため、会社からは慰留されましたが、退職を決意したようです。

心療内科で適応障害の診断をもらったという相談者ですが、退職にあたってパワハラを理由に損害請求したいと考えているようですが、可能なのでしょうか。徳田隆裕弁護士に聞きました。

●パワハラ3要件を満たしており「違法」

——社長の相談者に対する言動は「パワハラ」なのでしょうか。

パワハラとは、(1)職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)その雇用する労働者の就業環境が害されること、をいいます。

今回の件は、(1)社長と社員という職場の優越的な関係を背景としており、(2)恫喝は、業務上必要かつ相当な範囲を超えており、(3)結果として、相談者は心身を害してしまったので、就業環境が害されました。

パワハラの3つの要件を満たすため、違法なパワハラに該当すると考えます。

——「あなたとは働きたくない」などと言われた相談者としては、これを「退職勧告」だと捉えたようです。

「あなたとは働きたくない」というメッセージは、背景に「あなたとは働きたくない。だから、辞めてくれ」という真意が隠されていますので、退職勧奨と評価されると考えます。

●将来の報酬「逸失利益として認められない可能性ある」

——会社に賠償請求する場合、慰謝料のほかに、将来もらえるはずだった報酬も請求できるのでしょうか。

会社は、労働者に対して、労働者がその意に反して退職することがないように職場環境を整備する義務を負っています。

執拗な退職強要や嫌がらせ等のパワハラによって、退職のやむなきに至った場合には、退職していなければ得られたはずの収入を逸失利益として請求することは可能です。

もっとも、パワハラや退職勧奨を受けて、労働者が退職届を提出した場合、自己都合退職を選択したのであり、退職を余儀なくされたとはいえないとして、逸失利益の損害が否定される場合もありえます。また、逸失利益の損害は、再就職可能な期間に制限される場合もあり、1年以上の逸失利益が認められるのは難しいと考えます。

パワハラを原因として退職した場合、不就労期間に対する逸失利益が認められた裁判例は多くはありません。

今回のケースでは、会社から退職を遺留されたにもかかわらず、相談者が自ら退職を選択していますので、逸失利益の損害が否定される可能性はあります。

——会社側の責任追及で留意すべきことは何でしょうか。

社長からの恫喝の内容を具体的に証明できなければ、損害賠償請求が認められない可能性があります。社長からの恫喝の録音がない場合には、恫喝を受けたことの証明は難しいです。

また、仮に、恫喝の証明に成功したとしても、逸失利益は否定される可能性があり、慰謝料の金額も低額に認定される可能性があります。

そのため、弁護士に依頼して損害賠償請求する場合には費用対効果をよく検討し、認められる損害賠償額よりも弁護士費用の方が多くならないように気をつける必要があります。

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