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ジョジョの奇妙な生い立ち…第5部主人公「ジョルノ・ジョバァーナ」は法的に誰の子?
2018年06月24日 08時45分

人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の第5部「黄金の風」のテレビアニメが2018年10月から放送されることが6月21日に発表された。

第5部の主人公、ジョルノ・ジョバァーナの生い立ちは複雑だ。父親は第1部から登場する吸血鬼(元人間)ディオ・ブランドー。ディオは、第1部の主人公であるジョナサン・ジョースターの首から下の肉体を乗っ取っている。

そのディオと関係をもった、とある日本人女性との間に生まれたのがジョルノだ。

ジョルノの母はディオとは結婚せず、その後イタリア人男性と結婚し、ジョルノはイタリア国籍という設定になっている(ジョルノの本名は、「汐華初流乃(しおばな はるの)」という日本名だ)。

物語が始まる2001年の段階ではディオは死亡したことになっているが、法的には、ジョルノは誰の子ということになるのだろうか。ジョナサンの子なのか、それともディオの子ということになるのか。

仮にディオが存命だった場合、日本の法律ではジョルノがディオに対して「父親と認めてほしい」と求めることは可能なのか。ジョジョの問題に詳しい松本常広弁護士に聞いた。

「これはひどいテーマですね。5部アニメ化にテンションが上がった編集者が無理やり作ったテーマとしか思えない(笑)」

そこを何とかお願いします。

「話を単純化するため、舞台・登場人物の国籍をすべて日本と仮定して考えたいと思いますが、それでもひどい。何せジョナサンは1868年生まれでジョルノは1985年生まれ…この時点でめちゃくちゃです。しかも、ジョナサンは1889年に死亡扱いになっている。この辺りも全部無視して検討することにします。

まず、ディオはあくまでジョナサンの肉体(ボディ)を奪っただけなので、戸籍上はジョナサンのままなのだと思います。ディオ・ブランドーというのは芸名みたいなものです。 

次に、ジョルノについてです。ディオとジョルノ母が結婚していないとなると、ジョルノは母親の戸籍に載ることになるのですが、認知の問題が出てきます。認知されないと、ジョルノの戸籍の父親欄は空白ということになります。認知があって初めて法的な親子関係が生じますし、戸籍の父親欄に父親の名前が記載されることになるのです」

認知はどのように行われるのでしょうか?

「2つの方法があって、1つは父親が『自分が父である』と認めて役場に届ける任意認知です。ディオが任意認知をするとは考えにくいので、もう一つの方法、裁判所に認知の訴え(その前提として認知調停が必要)を起こすという強制認知を検討することになります。

強制認知では、DNA鑑定が重視されます。もっとも、ディオがDNA鑑定を拒んだ場合、鑑定を強制することはできません。ジョルノ側は、ディオとジョルノ母の性的関係など妊娠・出産に至る事情から親子関係を立証することになります」

ジョルノ母は、ジョルノ出産後も「幼いジョルノをおきざりにして」「よく夜の街に遊びに出かけ」るような女性だったみたいですね。

「ええ、ですからDNA鑑定拒否の場合、立証のハードルは高いかもしれません。もっとも、本件では、ディオがあっさりDNA鑑定に応じる可能性があります」

えっ!ディオの方が鑑定に応じるんですか?

「はい。その前提として、ジョルノがジョナサンとディオどちらのDNAを受け継いでいるかを考える必要があります。作中には、ジョルノの髪が『金色』になったことについて『エジプトで死んだ父親の遺伝』という表現があります。

もっとも、この点について、承太郎は「『スタンド能力』が最近になって目覚めた証拠なのかもしれない」と述べており遺伝との関係は判然としません。しかし、普通に考えれば、ディオの首から下はジョナサンの肉体なので、ジョルノはジョナサンのDNAを受け継いでいると考えられるでしょう。

そうすると、ディオは、DNA鑑定に応じ、口の中の粘膜を採取して提出すれば良いのです。口内のDNAはディオのDNAです。したがって、ジョルノのDNAとは一致しません。その結果、認知の訴えは棄却されます。ジョルノにとっては、父だと思っていた人が父ではなかったという残念な結果に終わってしまうんです。

仮にジョルノ側が頭部とそれ以外のDNAが違うと知っていたとして、そういう主張をしたとしても、裁判所では笑われるだけでしょう。以上から、最初の問いに戻ると、法的にはジョルノが誰の子か不明ということになります。

もっとも、ジョルノにとって大切な『ファミリー』はギャングスターとしての『ファミリー』だと思うので、本件は彼にとって何ら影響を与えないのではないかと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の第5部「黄金の風」のテレビアニメが2018年10月から放送されることが6月21日に発表された。

第5部の主人公、ジョルノ・ジョバァーナの生い立ちは複雑だ。父親は第1部から登場する吸血鬼(元人間)ディオ・ブランドー。ディオは、第1部の主人公であるジョナサン・ジョースターの首から下の肉体を乗っ取っている。

そのディオと関係をもった、とある日本人女性との間に生まれたのがジョルノだ。

ジョルノの母はディオとは結婚せず、その後イタリア人男性と結婚し、ジョルノはイタリア国籍という設定になっている(ジョルノの本名は、「汐華初流乃(しおばな はるの)」という日本名だ)。

物語が始まる2001年の段階ではディオは死亡したことになっているが、法的には、ジョルノは誰の子ということになるのだろうか。ジョナサンの子なのか、それともディオの子ということになるのか。

仮にディオが存命だった場合、日本の法律ではジョルノがディオに対して「父親と認めてほしい」と求めることは可能なのか。ジョジョの問題に詳しい松本常広弁護士に聞いた。

●あえて考察した結果…

「これはひどいテーマですね。5部アニメ化にテンションが上がった編集者が無理やり作ったテーマとしか思えない(笑)」

そこを何とかお願いします。

「話を単純化するため、舞台・登場人物の国籍をすべて日本と仮定して考えたいと思いますが、それでもひどい。何せジョナサンは1868年生まれでジョルノは1985年生まれ…この時点でめちゃくちゃです。しかも、ジョナサンは1889年に死亡扱いになっている。この辺りも全部無視して検討することにします。

まず、ディオはあくまでジョナサンの肉体(ボディ)を奪っただけなので、戸籍上はジョナサンのままなのだと思います。ディオ・ブランドーというのは芸名みたいなものです。 

次に、ジョルノについてです。ディオとジョルノ母が結婚していないとなると、ジョルノは母親の戸籍に載ることになるのですが、認知の問題が出てきます。認知されないと、ジョルノの戸籍の父親欄は空白ということになります。認知があって初めて法的な親子関係が生じますし、戸籍の父親欄に父親の名前が記載されることになるのです」

認知はどのように行われるのでしょうか?

「2つの方法があって、1つは父親が『自分が父である』と認めて役場に届ける任意認知です。ディオが任意認知をするとは考えにくいので、もう一つの方法、裁判所に認知の訴え(その前提として認知調停が必要)を起こすという強制認知を検討することになります。

強制認知では、DNA鑑定が重視されます。もっとも、ディオがDNA鑑定を拒んだ場合、鑑定を強制することはできません。ジョルノ側は、ディオとジョルノ母の性的関係など妊娠・出産に至る事情から親子関係を立証することになります」

ジョルノ母は、ジョルノ出産後も「幼いジョルノをおきざりにして」「よく夜の街に遊びに出かけ」るような女性だったみたいですね。

「ええ、ですからDNA鑑定拒否の場合、立証のハードルは高いかもしれません。もっとも、本件では、ディオがあっさりDNA鑑定に応じる可能性があります」

えっ!ディオの方が鑑定に応じるんですか?

「はい。その前提として、ジョルノがジョナサンとディオどちらのDNAを受け継いでいるかを考える必要があります。作中には、ジョルノの髪が『金色』になったことについて『エジプトで死んだ父親の遺伝』という表現があります。

もっとも、この点について、承太郎は「『スタンド能力』が最近になって目覚めた証拠なのかもしれない」と述べており遺伝との関係は判然としません。しかし、普通に考えれば、ディオの首から下はジョナサンの肉体なので、ジョルノはジョナサンのDNAを受け継いでいると考えられるでしょう。

そうすると、ディオは、DNA鑑定に応じ、口の中の粘膜を採取して提出すれば良いのです。口内のDNAはディオのDNAです。したがって、ジョルノのDNAとは一致しません。その結果、認知の訴えは棄却されます。ジョルノにとっては、父だと思っていた人が父ではなかったという残念な結果に終わってしまうんです。

仮にジョルノ側が頭部とそれ以外のDNAが違うと知っていたとして、そういう主張をしたとしても、裁判所では笑われるだけでしょう。以上から、最初の問いに戻ると、法的にはジョルノが誰の子か不明ということになります。

もっとも、ジョルノにとって大切な『ファミリー』はギャングスターとしての『ファミリー』だと思うので、本件は彼にとって何ら影響を与えないのではないかと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

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