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拾った時計を「ネットオークション」で売却したら、持ち主が落札…どんな罪になる?
2016年11月21日 00時00分

落とし物の時計を拾い、ネットオークションで売ってしまった。罪に問われるのか?弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある男性が相談を寄せました。

自分が通っている学校内で時計を拾ったという男性。当時、お金に困っており、時計をオークションアプリで売ってしまったそうです。ところがなんと、落札者が時計の元々の持ち主で、男性のもとに簡易書留で「窃盗及び有償処分の嫌疑について」の書類が届いたとのこと。

男性は「愚かかつ浅はかな行動であったと深く反省」しているといいますが、落とし物を拾って売却したことは、どのような法的問題があるのでしょうか?高橋辰三弁護士の解説をお届けします。

落とし物の時計を拾い、ネットオークションで売ってしまった。罪に問われるのか?弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある男性が相談を寄せました。

自分が通っている学校内で時計を拾ったという男性。当時、お金に困っており、時計をオークションアプリで売ってしまったそうです。ところがなんと、落札者が時計の元々の持ち主で、男性のもとに簡易書留で「窃盗及び有償処分の嫌疑について」の書類が届いたとのこと。

男性は「愚かかつ浅はかな行動であったと深く反省」しているといいますが、落とし物を拾って売却したことは、どのような法的問題があるのでしょうか?高橋辰三弁護士の解説をお届けします。

●落とし物を拾って売ったら、どんな問題がある?

落とし物のように、持ち主の意思によらないでその所持を離れたもの(動産)は「占有離脱物」と呼ばれます。これを拾って自分のものにすると、通常、「遺失物等横領罪」(刑法254条)が成立します。落とし物に見えても、実際は持ち主がそこに置いただけだったなど、持ち主の占有が及んでいるものを拾って自分のものにした場合は、「窃盗罪」が成立します。

拾った落とし物を売却した場合には、買主に対して「詐欺罪」(刑法246条)が成立する可能性があります。ただし、落とし物を第三者に売却して立件された例は少なく、遺失物等横領罪の他に別途、詐欺罪が成立するかは、見解の分かれるところでしょう。

落とし物を買った買主は、買った物が落とし物と分かっていれば買わなかった、ということであれば、詐欺による売買契約の取消(民法96条)または錯誤(民法95条)による無効を主張し、売主に代金の返還を求めることができます。

●時計の持ち主に「精神的被害及び商品代金の賠償」を支払うべき?

今回、男性は落とし物の時計を拾ったということですが、時計の所有権がすぐに拾い主である男性に移転することはありません。民法240条は、遺失物は、遺失物法の定めるところに従って公告をして、3ヵ月経っても所有者が判明しなければ、拾った者が所有権を取得すると定めています。今回は持ち主がすぐに名乗り出ているので、所有権は移転しません。

時計の所有権は持ち主にありますので、時計を拾った男性は、持ち主に時計を返す必要があります。オークションで売却し、持ち主からお金を受け取った場合には、損害賠償として、商品代金や落札者が負担した送料や手数料などを支払わなければなりません。

一般的には精神的被害の慰謝料請求は認められませんが、仮に今回、持ち主が遺失物等横領罪として被害届を出すなどしていれば、拾って売却した人が示談金として商品代金に上乗せした金銭を支払うことになる可能性があるでしょう。

●第三者が落札した場合はどうなる?

今回のケースは時計の持ち主が落札者でしたが、仮に、全く関係のない第三者が時計を落札した場合について考えてみます。

第三者が、その時計が遺失物や盗品であることを知って落札した場合、「盗品等有償譲受罪」(刑法256条2項)が成立しますが、事情を何も知らない、全く関係のない第三者が落札した場合には犯罪は成立しません。

そのような第三者は、たとえ時計が盗品だったとしても、そのことを知らず、かつ、知らなかったことについて過失もなければ、「即時取得」(民法192条)という制度により、適法に時計を取得できます。

時計の元の持ち主は所有権を失うことになりますが、遺失の日から2年間であれば、時計を落札した第三者に落札金額を弁償することにより、落札者に対して時計の返還を求めることができます(民法193条、民法194条)。

(弁護士ドットコムライフ)

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