5年に1度の国勢調査をめぐり、同性婚の実現などを目指す団体が、同居する同性カップル世帯も集計対象にするよう呼びかけている。
国勢調査は政策形成の基礎となる重要な統計だ。しかし前回2020年調査では、同性パートナーが「配偶者」と回答しても、集計時には「他の親族」と処理された。
このため、団体は9月26日、メディア向けのオンライン説明会を開き、今回こそ同性カップル世帯の実態を把握し、政策に反映してほしいとうったえた。
●国勢調査に「同性世帯」反映されず
同性カップル世帯も対象にするよう呼びかけているのは、一般社団法人「Marriage For All Japan」(マリフォー)。
マリフォーは2010年から国勢調査の改善を要望し、2020年には「レインボー国勢調査」プロジェクトを立ち上げ、26自治体から賛同を得た。
その後、同性カップルの社会的認知は広がり、現在539自治体でパートナーシップ制度を導入。人口の約93%をカバーしているという。住民票の続柄に「夫・妻(未届)」と記載できる自治体も17に増えた。
司法判断も変化している。全国で進む同性婚訴訟では、5つの高裁がいずれも「同性カップルに婚姻させないのは違憲」と判断。さらに2024年3月の最高裁判決は、同性パートナーも「事実上婚姻と同様の事情にある」と認め、犯罪被害者給付金制度の対象に含まれる可能性を示唆した。
●国も「ありのままの回答を」
一方、総務省統計局や歴代総務大臣はこれまで「全国一律の基準で婚姻を把握する必要がある」として、同性カップルを婚姻関係として集計できないとの立場を維持してきた。
しかし、2025年3月、参院予算委員会で、総務省統計局は「同性パートナーについては、国としての法制度が整備されていない中、お住まいの世帯の方が判断された続き柄で御回答いただくこととなっている」と答弁。
どのように集計するかは明らかとなっていないが、マリフォーの池田宏さんは「そこで、今回の国勢調査では、"ありのまま回答しよう"ということで、全国に広く呼びかけています」と説明した。
マリフォーが提案する回答例(提供画像)
●「国勢調査はありのままの実態調査が可能」
説明会に登壇した早稲田大学の釜野さおり教授は「国勢調査は1920年の開始当初より、事実婚や内縁関係を含めて調査できるようになっています。法律にない関係だから回答できないということはありません」と強調した
また、品川区の森澤恭子区長は「5年に一度の大規模調査だからこそ、同性カップルの回答が"ありのまま"に集計され、施策の基盤に活かされることが重要です」と述べ、自治体の立場から実態把握の必要性をうったえた。
品川区では10月1日から、同性カップルの住民票の続柄に、異性カップルの事実婚と同じように「夫・妻(未届)」と表記できるようにするという。