3510.jpg
パナ「1時間単位の有給」議論  導入企業2割、「効率化損ねる」懸念打ち破れるか
2018年03月29日 09時31分

2018年春の労使交渉で、パナソニックが家庭の事情を理由とした有給休暇を1時間単位で取得できる仕組みを4月から導入すると労使に回答したことが報じられている。

労組は、パナソニックで有給休暇の一種となっている「ファミリーサポート休暇」を使いやすくするよう求めたという。親の介護や子どもの学校行事、育児、出産などを理由に使える制度で、これまでは半日単位での取得が条件。労組は、これを1時間単位で取れるようにしたい考えだった。

厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、時間あたりで年次有給休暇を取得できる制度がある企業割合は18.7%(2017年調査)にとどまる。取得率も49.4%(2016年)と低く、政府が目標とする「2020年までに70%」を達成できるかは不透明な状況だ。

時間単位の取得を認めれば、労働者はより有給休暇を柔軟に取りやすいとみられるが、時間単位で取得できる企業が大多数ではないのはなぜなのか。取得率が低迷する背景はーー。労働問題に詳しい河村健夫弁護士に聞いた。

2018年春の労使交渉で、パナソニックが家庭の事情を理由とした有給休暇を1時間単位で取得できる仕組みを4月から導入すると労使に回答したことが報じられている。

労組は、パナソニックで有給休暇の一種となっている「ファミリーサポート休暇」を使いやすくするよう求めたという。親の介護や子どもの学校行事、育児、出産などを理由に使える制度で、これまでは半日単位での取得が条件。労組は、これを1時間単位で取れるようにしたい考えだった。

厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、時間あたりで年次有給休暇を取得できる制度がある企業割合は18.7%(2017年調査)にとどまる。取得率も49.4%(2016年)と低く、政府が目標とする「2020年までに70%」を達成できるかは不透明な状況だ。

時間単位の取得を認めれば、労働者はより有給休暇を柔軟に取りやすいとみられるが、時間単位で取得できる企業が大多数ではないのはなぜなのか。取得率が低迷する背景はーー。労働問題に詳しい河村健夫弁護士に聞いた。

●賢く活用「年間40回、有給で1時間早く退社」も可能

ーー時間単位の取得はどのような使い方が考えられますか

「例えば、資格取得のため予備校などに通学しているけれど、毎週1回の講義に間に合うためには定時の17時退社では無理。16時10分には会社を出なければならないという方のことをイメージしてください。

こういったときに有給を取得する方もいるかと思いますが、有給は原則として1日単位で勤続6年半以上の方でも付与日数は年間20日ですから、有給を毎週使っていたらあっという間になくなってしまいます。

そんなときの強い味方が『時間単位の有給休暇』制度です。年間5日分までとの制限はありますが、1時間単位での有給取得が可能。上の例で1日の所定労働時間が8時間なら、5日分で40時間分使えます。毎週1時間ずつ有給を使えば、40回も「毎週1時間分、有給で早退」できます。これで勉強もバッチリですね」

ーー時間単位の取得はいつから認められていますか

「時間単位の有給は、低迷する有給取得率のアップを図り、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を図る観点から2010年に導入されました。便利な制度ではあるのですが、残念なことに導入は進みません」

●導入はワークライフバランス重視のアピールに

ーーどのような原因が考えられますか

「(1)制度を導入するには改めて『労使協定』の締結が必要で、労働組合が機能しない企業などでは「労使協定」の締結が進まない

(2)経営者から見て、制度を導入すると勤怠管理が複雑になり、不規則な時間単位で有給を取る労働者が増加して『細切れ勤務』だらけとなり業務の能率を損なうと感じかねない

(3)1日単位での有給取得率が低迷する現状では、いくら時間単位の有給制度を導入しても有給取得に対する心理的ハードルは下がらないなどが考えられます」

ーー時間単位の導入は企業にとってプラスに働きませんか

「様々な業界で人手不足が顕在化している現在、時間単位の有給制度を導入することは『当社はワークライフバランスを重視する』との具体的アピールになりますから、企業側も積極的に導入を試みて欲しい制度です。

同時に、労働者も積極的に有給を取得して、有給を使うことが当たり前の職場環境を作ることです。幹(=1日単位の有給)が細いのに枝葉(時間単位の有給)を繁らせようとしても上手くいくはずがありません。有給をバリバリ使い、職場に戻ったら一層活き活きと働く。こういった環境こそが時間単位の有給が最もその効果を発揮できる職場だと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る