3592.jpg
逆走、信号無視?「ママチャリ女性」のモザイクなし映像拡散、SNSで"特定班"暴走も…法的リスクあり
2024年04月16日 17時49分
#モザイク #特定

「ママチャリの人」というワードが、4月16日までX(エックス)上でトレンドになっている。

自転車(ママチャリ)に子どもを乗せて走っていた女性を映したドライブレコーダーの動画が投稿され、大きく拡散しているからだ。

映像では、交差点を右折しようとした女性の自転車が、乗用車の前に立ちふさがる形となっている。その後、乗用車に向かって指差して何か叫んだり、スマホで電話したり、撮影したりするような素ぶりもみられる。

この映像だけでは、実際に交通法規に反する行為があったか定かではないが、女性の進行方向は赤信号だったことから、「信号無視」「逆走」「進路妨害」などの交通違反があるとして、大きく批判された。

さらに、モザイクなどの処理がなされず、女性や子どもの顔がハッキリと映っていたため、Xやネットでは「特定」も進んでいる。

そして、「ママチャリ逆走おばさん」呼ばわりしたうえで、真偽は不明ながら、女性の名前や居住エリア、家族構成や夫の勤め先などまでが投稿される事態となっているのだ。

しかし、あまりに過熱する「特定」には、大きな法的リスクが生じる可能性がある。インターネットの問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

「ママチャリの人」というワードが、4月16日までX(エックス)上でトレンドになっている。

自転車(ママチャリ)に子どもを乗せて走っていた女性を映したドライブレコーダーの動画が投稿され、大きく拡散しているからだ。

映像では、交差点を右折しようとした女性の自転車が、乗用車の前に立ちふさがる形となっている。その後、乗用車に向かって指差して何か叫んだり、スマホで電話したり、撮影したりするような素ぶりもみられる。

この映像だけでは、実際に交通法規に反する行為があったか定かではないが、女性の進行方向は赤信号だったことから、「信号無視」「逆走」「進路妨害」などの交通違反があるとして、大きく批判された。

さらに、モザイクなどの処理がなされず、女性や子どもの顔がハッキリと映っていたため、Xやネットでは「特定」も進んでいる。

そして、「ママチャリ逆走おばさん」呼ばわりしたうえで、真偽は不明ながら、女性の名前や居住エリア、家族構成や夫の勤め先などまでが投稿される事態となっているのだ。

しかし、あまりに過熱する「特定」には、大きな法的リスクが生じる可能性がある。インターネットの問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

●一部に公共性があると言えるも、モザイクなしは「報復目的と捉えられる可能性も」

——女性の映像のほか、「特定」した女性の名前などを公開・拡散することにはどんな法的問題があるのでしょうか

違法行為をしているという指摘をする点で名誉毀損、容姿が判別できる状態で投稿されている点で肖像権侵害やプライバシー権侵害、また個人情報を特定して公開している点はプライバシー権侵害の問題があるといえます。

もしも、女性に信号無視や逆走、進路妨害などがあるとすれば、これらは道路交通法違反にあたる行為なので、指摘すること自体には公共性があると言えるでしょう。

しかし、仮に女性の行為に問題があったとしても、それを指摘するのであれば、容姿が判別できないようにモザイク処理などすればよいはずです。

道路交通法違反があるとしても、このような自転車での違反は日常的に起きている違反ともいえ、違反の度合いが軽微であると評価しうる中、あえてモザイクなしで動画を投稿したことから、一定の「報復的目的」があったと見られても仕方ないといえます。

動画を投稿するだけでなく、女性の個人情報を特定して公表していくことも、もっぱら「興味本位」の行動であり、まとめサイト等については「アフィリエイト」報酬目的のもので、いずれも保護するべき必要性に乏しいといえます。

そのため、女性の道路交通法違反が疑われる行為や、その後の行動が正当であるとは必ずしも言えない面が含まれるにしても、それを晒して攻撃対象にするかのような行為が正当であるとすることは難しいといえます。

●誤情報が原因で「別人」に深刻な被害が生じる可能性も

——女性の名前や家族構成などを「特定」したとして、公表する動きもみられます

女性の名前や居住エリア、家族構成や夫の勤め先なども指摘されているようですが、これらの情報が間違っていた場合、間違って特定された人に対する明確な名誉毀損になります。深刻な誹謗中傷を引き起こすことも考えられます。

まとめサイトの中には、民事・刑事で責任を問われることを回避しようとするためか、「誤情報の可能性がある」と注記したものもあるようですが、必ずしもそれだけで免責されるとは限らず、不用意な情報拡散は避けるべきといえます。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る