「外出先でモバイルバッテリーをレンタルしたのですが、それを友人に貸したら返却がされず、利用料と違約金を請求されていますが、私が支払わないといけないのでしょうか ?」という相談が弁護士ドットコムニュース編集部に寄せられました。
相談者は、モバイルバッテリーシェアリングサービスの大手「ChargeSPOT」を普段からよく利用していたそうです。あるとき友人がバッテリー切れで困っていたので自分で借りたバッテリーを貸したところ、友人が返却を忘れてしまい、バッテリーは長期間未返却の状態に。
その結果、相談者のもとに違約金を含めた請求が届きました。相談者は、この金額を支払わなければならないのでしょうか。また、友人に対してどのような請求ができるのでしょうか。
●ChargeSPOTの「又貸し」は許されるが、貸した人は責任を負う
レンタルモバイルバッテリー業者との契約関係は、基本的に利用規約で確認することができます。
ChargeSPOTの場合、利用規約第2条第2項第2号のただし書きは、「当社は、お客様がレンタルしたポータブルチャージャーの全部又は一部を、第三者(以下、当該第三者を「使用者」といいます。)に対して貸与することを許諾するものとします」と定めています。
つまり、又貸し(貸与)自体は規約で許可されている行為です。
しかし、規約第3条8項には、「お客様が使用者に対してレンタルしたポータブルチャージャーの全部又は一部を貸与した場合、当該使用者によるポータブルチャージャーの利用に関する一切の行為は、お客様による行為によるものとみなします。
したがって、お客様は、使用者による行為であることを理由として、当社に対して、当該行為による責任を免れることはできません。」と明記されています。
このような規定は、消費者の利益を不当に害するようなケースでは無効となることもあるのですが、本規定は「勝手に又貸ししてもいいけど、責任はとってください」という意味であり、不当とはいえないと考えられます。
したがって、友人(使用者)が起こした紛失や未返却による損害、それに伴う違約金の支払い義務は、又貸しした相談者本人が負うことになります。具体的には、サービス提供者に対して違約金や利用料を支払う義務を負います。
●規約で請求の上限額が定められている
ChargeSPOTの利用規約4条2項「利用料」によると、利用時間が「レンタル開始120時間以上」だと、利用料+違約金の合計額が4080円と記載されています。
また、利用規約では、バッテリーを紛失した場合には補償金を払うこととされていますが(6条12号)、その金額も4080円とされています。
したがって、相談者は、4,080円を上限として支払い義務を負うと考えられます。
なお、この利用規約は2025年10月15日現在のものであり、この規約は今後変更される可能性があります。
●友人への損害賠償請求(求償)は可能か
相談者がサービス提供者に対して適正な違約金や利用料を支払った場合、相談者は、バッテリーを返却しなかった友人に対してその金額を請求すること(求償)が可能です。
仮に相談者が一定時間使ってから友人に貸したのであれば、相談者が友人に又貸しせずにすぐに返していれば支払わなくて済んだ増額分は、友人に請求できると考えられます。
相談者が規約に基づき友人への又貸しを許諾していたとしても、友人は借りた物を相談者に返却する義務(または代わりに事業者に返却する義務)を負っています。
友人がこの義務を果たさず紛失させたことは、相談者に対する債務不履行にあたります(民法415条)。相談者は、自らが支払った金額を友人に対して請求できます。