3880.jpg
日雇い派遣「原則禁止」から1年半・・・動き出した「解禁論」に弁護士が反論
2014年05月11日 12時08分

「不安定な働かせ方」だとして批判の対象となり、2012年10月に原則禁止となった「日雇い派遣」だが、早くもこれを解禁しようという動きが出てきている。

日雇い派遣とは、労働者と派遣会社が30日以内の短期契約を結ぶことをいう。この日雇い派遣をめぐっては、2008年のリーマンショック以降、業績が悪くなった企業が一方的に派遣契約を打ち切る「派遣切り」や契約更新をしない「雇い止め」が続出して、大きな社会問題となった。

今国会で議論されている改正派遣法案には盛り込まれていないが、派遣業界には日雇い派遣復活を望む声が絶えない。政府の規制改革会議も昨年、日雇い派遣の解禁を求める意見書を出している。

禁止から1年半あまり・・・。労働者側にたつ弁護士は「見直し論」をどうとらえているのだろうか。金子直樹弁護士に聞いた。

「不安定な働かせ方」だとして批判の対象となり、2012年10月に原則禁止となった「日雇い派遣」だが、早くもこれを解禁しようという動きが出てきている。

日雇い派遣とは、労働者と派遣会社が30日以内の短期契約を結ぶことをいう。この日雇い派遣をめぐっては、2008年のリーマンショック以降、業績が悪くなった企業が一方的に派遣契約を打ち切る「派遣切り」や契約更新をしない「雇い止め」が続出して、大きな社会問題となった。

今国会で議論されている改正派遣法案には盛り込まれていないが、派遣業界には日雇い派遣復活を望む声が絶えない。政府の規制改革会議も昨年、日雇い派遣の解禁を求める意見書を出している。

禁止から1年半あまり・・・。労働者側にたつ弁護士は「見直し論」をどうとらえているのだろうか。金子直樹弁護士に聞いた。

●派遣業は「極めて限定的に認められている」

「そもそも日本の憲法や労働法は、労働者が『直接雇用』されることを原則としています。

たとえば、職業安定法は、自分たちの管理下にある労働者を他人に使用させて、利益を得る『労働者供給』を禁止していて、違反者には刑事罰も科しています。

こうしたルールは、戦前に横行していた不当な労働者支配や中間搾取を防ぐため、戦後になってつくられたものです」

それでは、どうして「派遣」は認められているのだろうか?

「労働者派遣は、この労働者供給の例外として、1985年制定の『労働者派遣法』によって認められました。

したがって、労働者派遣業はあくまで例外で、極めて限定的にのみ認められているのだと捉えるべきでしょう」

そういう前提からすると、「日雇い派遣解禁論」はどう見れば良いのだろうか?

「日雇い派遣解禁は、許されないと考えます。むしろ、現在よりも制限を加えるべきでしょう」

日雇い派遣はすでに禁止されているのでは?

「日雇い派遣は原則禁止されていますが、日雇い派遣と見なされるのは『30日以内』のものだけ。31日以上であれば禁止対象ではありません。

さらに、例外的に日雇い派遣に従事できる人もいて、たとえば世帯年収500万円以上で、世帯の主たる生計者でない人については、日雇い派遣で働かせることが認められています」

●「日雇い派遣を解禁しなければならない理由は存在しない」

規制改革会議の意見については、どう考えているのだろうか?

「規制改革会議の意見書には、次のような記載があります。

《限られた期間・時間だけ働きたいと考える労働者がおり、短期間に労働者への需要が集中する業務もある。こうした状況の下で、日雇派遣を規制することは、むしろ就労マッチングや派遣元による雇用管理の有効性を損ない、他の形態(直接雇用等)の日雇を増加させているにすぎないとの指摘がある》

しかし、この議論には、説得力がありません」

なぜだろうか?

「さきほど述べたような広い例外があることや、期間の定めのある直接雇用が認められていることにより、『短期間に労働者への需要が集中する業務』や『限られた期間・時間だけ働きたいと考える労働者』への対応は十分だからです」

金子弁護士はこのように反論したうえで、「日雇い派遣を解禁しなければならない理由は、存在していません。解禁論は、労働者派遣ビジネスの拡大をもくろむ利益誘導で、到底許されるものではないでしょう」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る