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血縁がないと知らずに「我が子」を育てる夫…「托卵」妻を待ち受けるリスク
2016年04月12日 00時00分

「托卵」という言葉をご存知でしょうか?

「托卵」とは、カッコウなどが自分の卵を他の鳥の巣に産みつけて、その鳥に育児を任せる習性のこと。ここから転じて、夫以外の男性との間にできた子どもを、夫の子と偽って育てる女性を「托卵女子」ということもあるようです。

ネット上の掲示板には、「弟が『托卵女子』の餌食にされた」という女性が、書き込みを投稿していました。投稿者の女性によると、「托卵」がわかったのは、子どもが高熱を出し、血液検査をしたときだったそうです。

「幼稚園の年中さんくらいの頃だったと思う。その時に初めてちょっと血液型があり得ないんじゃないかな? ってわかった。弟、弟嫁両方ともB型だったのに、(子どもは)A型だった」。 不審に思った弟が妻に尋ねると、「病院で取り違えられたかもしれない。でも今まで育ててきたんだからこの子でいい」。

その後、子どもの病気は治りましたが、夫婦間にできた溝はうまらず、調停を経て、離婚が決まりました。 親権は弟の妻にわたり、離婚から半年後には、はやくも再婚したそうです。弟は養育費の支払いを続けていますが、投稿者は「私は絶対に弟が托卵されたと信じている」と、いまだに怒りはさめやらないようです。

夫以外の男性との間にできた子を夫の子と偽って育てる「托卵」には、法的にどのような問題があるのでしょうか。村上真奈弁護士の解説をお届けします。

「托卵」という言葉をご存知でしょうか?

「托卵」とは、カッコウなどが自分の卵を他の鳥の巣に産みつけて、その鳥に育児を任せる習性のこと。ここから転じて、夫以外の男性との間にできた子どもを、夫の子と偽って育てる女性を「托卵女子」ということもあるようです。

ネット上の掲示板には、「弟が『托卵女子』の餌食にされた」という女性が、書き込みを投稿していました。投稿者の女性によると、「托卵」がわかったのは、子どもが高熱を出し、血液検査をしたときだったそうです。

「幼稚園の年中さんくらいの頃だったと思う。その時に初めてちょっと血液型があり得ないんじゃないかな? ってわかった。弟、弟嫁両方ともB型だったのに、(子どもは)A型だった」。 不審に思った弟が妻に尋ねると、「病院で取り違えられたかもしれない。でも今まで育ててきたんだからこの子でいい」。

その後、子どもの病気は治りましたが、夫婦間にできた溝はうまらず、調停を経て、離婚が決まりました。 親権は弟の妻にわたり、離婚から半年後には、はやくも再婚したそうです。弟は養育費の支払いを続けていますが、投稿者は「私は絶対に弟が托卵されたと信じている」と、いまだに怒りはさめやらないようです。

夫以外の男性との間にできた子を夫の子と偽って育てる「托卵」には、法的にどのような問題があるのでしょうか。村上真奈弁護士の解説をお届けします。

A. 「托卵」は不法行為! 離婚や慰謝料請求ができる可能性も

夫の子ではないと知りながら、「あなたの子よ」と偽って子どもを育てることは、「不法行為」と言っていいでしょう。妻が「本当はあなたの子ではないのよ」と認めれば、たとえ妻が離婚を拒否したとしても、裁判で離婚できると考えられます。慰謝料請求も認められる可能性が高いです。

ただ現実には、投稿者の弟さんのように、妻に言い訳をされたり、「この子は本当にあなたの子よ」などとトボけられたりするでしょう。その場合には、立証するのは難しく、証拠の有無によって結論が変わってくるでしょう。

また、「生物学上の父親」という論点とは別に、「法律上の父親」が誰なのかという問題もあります。 原則として、妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定されます。これを覆すには、「嫡出否認調停・訴訟」か「親子関係不存在確認調停・訴訟」を起こす必要があります。法律では、原則として、いきなり訴訟(裁判)ではなく、まずは調停を申し立てるよう規定されています。

「嫡出否認調停・訴訟」とは、夫が子の出生を知ったときから1年以内に、「この子は自分の子ではない」という旨の調停または裁判を起こすことです。

もう1つの「親子関係不存在確認調停・訴訟」は、父、母、子どもなどが、「子どもは夫(または妻)の子ではない」という旨の調停または裁判を起こすことです。 親子関係不存在確認の方は、妊娠時にご夫婦が完全に別居しているなど、夫の子を妊娠できないことが客観的に明らかである場合に起こせます。

今回のケースのように夫婦が同居していた場合には、「親子関係不存在確認調停・訴訟」を起こせる可能性は低いでしょう。

また、弟さんのケースでは、子どもが「幼稚園の年中さんくらいの頃」に「托卵」の疑惑が生じたということですから、夫が子の出生を知ってから1年はゆうに経過しています。そうすると、「嫡出否認調停・訴訟」も起こせず、法律上の親子関係を否定することが難しくなってきます。

「法律上の父」である限り、離婚しても養育費の支払義務があるのが原則です。しかし、諸事情を考慮し、法律上の親子関係があっても、生物学上の血縁関係がない子について養育費を請求することは、権利の濫用にあたるとして支払義務を否定した判例もあります。

また、元妻が再婚し、子が元妻の新しい夫と養子縁組をした場合は、新しい夫が子を養育する義務を負いますから、養育費を支払わなくてすむこともあります。

今の法律ができた当時は、DNA鑑定などの科学技術は想定されていませんでした。ですので、たとえ血縁上の父でなくとも、法律上の父になってしまうという問題が近年増えています。そろそろ時代に合わせて、法律を変える時期がきているのではないでしょうか。

(弁護士ドットコムライフ)

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