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スーパーで売られているカニを放流、在来種でも「やめて!」 環境省やYouTuberが呼びかけるワケ
2025年03月15日 09時42分
#環境省 #外来生物法 #カニ #在来種

スーパーで売られているカニが生きているので、川に逃がしてあげた――。まるで美談のように思えるかもしれないが、実は生態系に悪い影響を及ぼすおそれがあり、立ち止まって考えてほしい。環境省の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に「現地の自然を壊しかねないのでやめて」と呼びかけている。

スーパーで売られているカニが生きているので、川に逃がしてあげた――。まるで美談のように思えるかもしれないが、実は生態系に悪い影響を及ぼすおそれがあり、立ち止まって考えてほしい。環境省の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に「現地の自然を壊しかねないのでやめて」と呼びかけている。

●モクズガニの放流は「違法ではない」が・・・

この問題が大きく注目を集めたのは、主に魚介類を食べるチャンネルを運営している人気YouTuber、水ラーメンさんのX投稿だ。

「スーパーの生きている食材達を自然に返すのは絶対にやめて下さい!!!」

水ラーメンさんは、YouTubeのコメント欄についた「スーパーで買ったモクズカニを川に逃した」という投稿を引用して、放流しないように注意喚起している。

通常、スーパーで売られている「モクズガニ」は、国産の在来種であると考えられる。環境省・野生生物課の担当者は取材に対して「放流自体は違法ではない」という見解を示した。

しかし、同じモクズカニ属でも、上海ガニの名で知られる「チュウゴクモクズガニ」は特定外来生物に指定されているため、外来生物法の対象になる。

もしもチュウゴクモクズガニを許可なく放流した場合は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が課せられる。

●「遺伝子汚染」につながるおそれも

また、モクズガニの放流は違法ではないものの、専門的な知識のない人が、在来種を放流することについて「遺伝子汚染につながる」(担当者)という。

遺伝子汚染とは、地理的に隔離され、出会うことのない近縁種や異なる遺伝子系統の個体群が放流など、人の手によって出会ってしまい、交雑することで本来の遺伝子型を失ってしまうこと。

たとえば、「メダカ」という標準和名の魚は、現在は存在せず、北日本に生息するキタノメダカと、南日本に生息するミナミメダカという別種として分類されている。両種は数百万年以上前に分化したとされているが、交雑が可能だ。

そして、キタノメダカの分布地でミナミメダカ(品種改良されたメダカ含む)が発見されている地域もあり、「地域を越えた放流」が人為的におこなわれた結果であると指摘する研究もある。

在来種でも本来の生息域ではない国内の地域に、人の手により持ち運ばれた生物は国内外来種と呼ばれる。

環境省の担当者は「良かれと思って地域性を考慮せず放流したことで、両種が交雑し、遺伝子汚染が起きる可能性が指摘されている。『日本の在来種を、自然の分布域を越えて人為的に放流する問題』は、メダカ類に限らず、いろいろな生物で発生している」と強調する。

●環境省「食材として売られているものは、きちんと食べてほしい」

全国各地に生息するモクズガニの研究でも、南方の個体群と北方の個体群では、遺伝子レベルで差異がある可能性が高いことが指摘されている。

「九州産のモクズガニを北海道で放流してしまうことで遺伝子汚染が引き起こされる可能性は否定できない。病原体などの拡散リスクもある」(担当者)

環境省の担当者は「遺伝子汚染は生物の自然な進化を人間が邪魔してしまっているということ。自己責任で育てるのは構わないが、食材として売られているものは、生きているからと放流するのではなく、きちんと食べてほしい」と話している。

なお、冒頭のモクズガニのケースで、コメント欄に投稿した人は「その蟹が捕れた地元の川なので心配ないと思います」と述べているが、こうした自己判断は「カニの恩返し」どころか、思わぬ「しっぺ返し」を招きかねないだろう。

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