3990.jpg
IRジャパン元副社長の逮捕容疑「取引推奨罪」とは?  金融法務に詳しい弁護士が解説
2023年06月07日 09時46分

企業向けコンサルティング会社「アイ・アールジャパンホールディングス」(IRジャパン)が業績予想の下方修正を社内決定した直後に同社株の売却を知人に勧めたとして、同社元副社長の男性が5月、金融商品取引法違反(取引推奨)の疑いで逮捕された。

報道などによると、同社は2021年3月30日の幹部会議で下方修正を決定した。元副社長は出席していなかったが直後に情報を把握。公表前の4月上旬〜中旬に、知人女性2人にLINEで連絡するなどして、株の売却を勧めたという。

同社は4月16日午後、2021年3月期の業績予想を公表。翌営業日の終値は、前日比15%以上下落した。

逮捕容疑となった「取引推奨」とはどのようなものか。インサイダー取引とは違うのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。

企業向けコンサルティング会社「アイ・アールジャパンホールディングス」(IRジャパン)が業績予想の下方修正を社内決定した直後に同社株の売却を知人に勧めたとして、同社元副社長の男性が5月、金融商品取引法違反(取引推奨)の疑いで逮捕された。

報道などによると、同社は2021年3月30日の幹部会議で下方修正を決定した。元副社長は出席していなかったが直後に情報を把握。公表前の4月上旬〜中旬に、知人女性2人にLINEで連絡するなどして、株の売却を勧めたという。

同社は4月16日午後、2021年3月期の業績予想を公表。翌営業日の終値は、前日比15%以上下落した。

逮捕容疑となった「取引推奨」とはどのようなものか。インサイダー取引とは違うのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。

●インサイダー取引とは

インサイダー取引の典型例は、会社内部の重要事実を知った関係者が公表前に株式を売買してボロ儲けするケースです。

実際のインサイダー取引では、重要事実を知った役員からその事実を教えてもらった部外者が事実公表前に株式売買するなど、複数の人物が関係する複雑なケースがほとんどです。

情報をもらって実際に株式売買した部外者はインサイダー取引違反となります(金融商品取引法166条3項)。

また、自分自身で株式売買をせず部外者に情報を教えただけの役員も、インサイダー取引違反となります。会社関係者が他人に対して公表前に取引させることにより利益を得させるか損失を回避させる目的をもって、情報の伝達を行うこと自体を禁止しているからです(金融商品取引法167条の2)。

●取引推奨罪の処罰対象は「実際に株式売買した場合のみ」

会社内部の重要事実を伝えずに、株式売買を推奨するだけの場合はどうでしょうか。

金商法は「情報の伝達」だけでなく「取引の推奨」も禁止しています(167条の2)。これが2014年の金融商品取引法の改正で導入された「取引推奨罪」です。「重要事実を漏らしていないからセーフ」というわけではないのです。

法定刑は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科刑で(同法197条の2第14号・15号)、課徴金の対象にもなります(同法175条の2)。ただし、刑事罰や課徴金の対象となるのは、取引推奨を受けた人が、情報の公表前に実際に株式売買した場合だけです。

たとえ刑事罰や課徴金の対象にならなくても、金融商品取引業者の場合には行政処分の対象になりますし、上場会社の役員の場合は社内規則に違反することになります。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る