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マイナンバーでワクチン接種管理、何のため? 自治体からは負担増に懸念も
2021年02月03日 10時01分

新型コロナウイルスのワクチン接種にマイナンバー活用論が浮上しました。国が新しいシステムをつくり、マイナンバーを使ってワクチン接種情報をリアルタイムに把握し、混乱が起きないようにするといいます。ただ、自治体からは現場の事務作業の負担増を心配する声も上がっています。コロナ禍で何かとマイナンバーが話題に上りますが、どんな仕組みなのでしょうか。(ライター・田中瑠衣子)

新型コロナウイルスのワクチン接種にマイナンバー活用論が浮上しました。国が新しいシステムをつくり、マイナンバーを使ってワクチン接種情報をリアルタイムに把握し、混乱が起きないようにするといいます。ただ、自治体からは現場の事務作業の負担増を心配する声も上がっています。コロナ禍で何かとマイナンバーが話題に上りますが、どんな仕組みなのでしょうか。(ライター・田中瑠衣子)

●きっかけは平井デジタル改革相の発言

そもそもの始まりは1月中旬、平井卓也デジタル改革相の発言でした。記者会見で「ワクチン接種と国民唯一のIDであるマイナンバーと紐づけると間違いが起きない。私のほうから河野大臣にマイナンバーを使うことを強く進言したい。

マイナンバーを使った管理システムを現場とうまく連動できるようにすれば間違いが起きない。なんのためのマイナンバーかと考えた時に、税と社会保障と災害、災害の中の感染症ということだから今回使わなくていつ使うんだと私自身は思っている。国民の安全なワクチン接種に向けてマイナンバーを使うことを強く要望したい」と、ワクチン接種の管理にマイナンバーを活用するべきという考えをいきなり示したのです。

「具体的にどんなシステムなのか」との記者の質問に対し、平井大臣は「今のところ何にもない。全部未確定の話を自分を追い込む意味で言っている。マイナンバー担当としてここでマイナンバーを使えないという状況だけは避けるという、私の強い思いの記者会見だと思っている」と強調しました。

平井氏の発言の後、河野太郎ワクチン担当相もツイッターで「自治体をまたいで引っ越しした人や居住地以外で接種した人を把握するためにマイナンバーでの連携を検討している」と発信しました。

コロナワクチンの接種は原則、住民票がある市区町村の医療機関や接種会場で受けます。一定の間隔を空けて2回接種となる見込みです。仮に1回目のワクチン接種の後に、別の町へ引っ越した場合は転居先で情報がすぐに共有されないケースも想定されます。そこで接種記録をリアルタイムに近い形で管理できるシステムづくりを国の費用で進めることになったのです。

●政府「会場でマイナンバーやカードを使うわけではない」

ちなみにマイナンバーと紐づけることができる事務は、法律で「税・社会保障・災害」の3分野に限定されていて、予防接種は社会保障にあたります。

システム設計を担当する内閣官房IT総合戦略室は「システムをどんな設計にするかなどはまだ詳しく答えることができませんが、自治体をまたいで転居した人や居住地ではない場所で接種を受けた人を把握しやすくするために有効と考えています。あくまでもバックオフィスで活用するもので、予防接種の会場で住民がマイナンバーやマイナンバーカードを使うものではありません」と説明します。

ややこしいのですが、実は市区町村は住民の「予防接種台帳」というものを既に持っています。これは医療機関から子どもや高齢者の予防接種情報を受け、自治体が台帳で管理しています。

IT総合戦略室によると、各自治体の予防接種台帳への登録は今回のコロナワクチンの接種でも行われます。「予防接種台帳への登録が完了するのに長い場合は2~3カ月後ということが想定されるため、デジタル技術を活用しリアルタイムに近い形で同様の状況を把握できるようにしたいと考えています」(担当者)。

●市長会「自治体の事務が増えることは非常に困る」

自治体の担当者はどう見ているのでしょうか。東京都の町田市保健所の担当者は「予防接種台帳は、住民基本台帳と連携しているので、広い意味ではマイナンバーと紐づいているといえます」と説明します。

ただ、町田市の場合は、これまでは居住者が転居した場合も接種済み証を本人に渡したり、子どもの場合は母子手帳に記録したりするので、予防接種に関してはマイナンバーで他の自治体と情報連携したことはないといいます。今回、国が進める新システムについて担当者は「国から具体的な情報がきていないため、どんなシステムを想定しているのはわかりません」と答えます。

時事通信などの報道によると、全国市長会の立谷秀清会長(福島県相馬市長)らは1月下旬、ワクチン接種の情報管理にマイナンバーを活用することに対し、河野太郎ワクチン担当相に「自治体の事務が増えることは非常に困る」との懸念を示しました。

●思い出される現金給付の混乱

今回のワクチン接種とは内容が全く違いますが、新型コロナの経済対策の10万円の現金給付では、国がマイナンバーカードを使って申請をスムーズに進めようとしました。しかし、住民基本台帳との照合が手作業になってしまったり、マイナンバーカードの暗証番号を忘れた人たちが窓口に押し寄せたり、自治体の職員に大きな負担がかかりました。

今回は大丈夫でしょうか。国のIT総合戦略室の担当者は「自治体の声も伺いながら、早い時期に皆様にお知らせできるようにしたい」と話しています。

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