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奨学金で過大請求、保証人が返還求め提訴 「全額の返済義務なし」説明せず
2019年05月14日 17時14分

奨学金の保証人には未返還額の半額しか支払い義務がないのに、日本学生支援機構がそれを伝えずに全額請求したとして、北海道と埼玉県、山梨県の30〜70代男女4人が5月14日、機構に過払い金の返還と慰謝料など総額約879万円の支払いを求めて、東京、札幌の両地裁にそれぞれ提訴した。

提訴後、東京地裁に提訴した山梨県の男性(72)と埼玉県の男性(37)が東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。同席した代理人弁護士は「保証人が法的な知識がないことにつけ込んで、全額返済を請求していた。極めて違法性の高い行為だ」と機構を批判した。

奨学金の保証人には未返還額の半額しか支払い義務がないのに、日本学生支援機構がそれを伝えずに全額請求したとして、北海道と埼玉県、山梨県の30〜70代男女4人が5月14日、機構に過払い金の返還と慰謝料など総額約879万円の支払いを求めて、東京、札幌の両地裁にそれぞれ提訴した。

提訴後、東京地裁に提訴した山梨県の男性(72)と埼玉県の男性(37)が東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。同席した代理人弁護士は「保証人が法的な知識がないことにつけ込んで、全額返済を請求していた。極めて違法性の高い行為だ」と機構を批判した。

●原告側「契約上、違法な請求」と主張

機構は奨学金を申し込む際、「人的保証制度」か、保証機関が連帯保証する「機関保証制度」のいずれかを選択するよう求めている。

人的保証制度は、奨学生と連帯して返還の責任を負う「連帯保証人」(原則親)と奨学生と連帯保証人が返還できなくなったときに代わって返還する「保証人」(おじ・おば・兄弟姉妹など)を選任する必要がある。

原告側は、「保証人」は「未返済額の半分しか返還義務を負わない」と指摘する。民法の「分別の利益」により、保証人が複数いる場合、連帯保証人でない限り、保証人はそれぞれ等しい割合で義務を負うためだ(民法456条、427条)。

しかし、訴状などによると、機構は保証人に対して「分別の利益」を説明することなく、全額返済の請求を行っており、「全額を請求したのは、法律上支払い義務のない支払いを請求したものであって、実体法上、契約上、違法な請求である」としている。

例えば、姪の奨学金の保証人だった男性(72)に対しては、2018年10月1日付で、返還が遅滞していた約922万円全額を一括で支払うよう通知した。別の男性(37)は、弟の奨学金の保証人として2015年4月から17年7月まで返還をしていたが、機構から全額の返還義務があることを前提とした延滞金内訳表を送られていた。

今回の訴訟では、過払金の返還と共に、機構が保証人に対して「分別の利益」を隠して全額を請求したことが、契約違反および不法行為に当たるとして、損害賠償請求も求めている。

消費者契約法は「消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない」(3条1項)などと定めており、「全額請求はいちじるしく違法性の高い行為で、契約上も違法であることは明らか」としている。

●代理人「法律の解釈を大きく間違っている」と批判

今回の奨学金過大請求問題は昨年11月、朝日新聞が報じたことで明るみに出た。一連の報道をきっかけに、機構は一部の保証人に必要以上の返済を求めていたことを認めている。しかし、機構のスタンスは「保証人から分別の利益を主張された場合」のみ減額に応じるもので、保証人が主張する前にすでに支払った分を含んだ返還には応じていない。

男性は新聞報道をきっかけに、機構に対して「分別の利益」を主張した。しかし、機構は2018年12月、「分別の利益を主張がなされずにお支払いされた返還金は、弁済として法的に有効なため、機構に返金義務がなく、ご返金には応じることはできません」と文書で回答した。代理人の岩重佳治弁護士は「法律の解釈を大きく間違っている」と批判する。

男性(37)は訴訟を決断した理由について、「気づかないで真面目に払った人がそのままで、気づいた人については機構が認めるというのは、自分の中で引っかかった」といい、「提訴したことで、今困っている方や保証人の方に情報が伝わって救われればいいなと思っている」と話した。

岩重弁護士は「なぜ、保証人に対して全額請求をしてきたのか。誰がどういう方針で決めたのか。裁判のなかで明らかにしたい」と話した。現時点で追加提訴の予定はないが、必要があれば検討するという。

●機構「コメント控える」

機構は「訴状内容を確認できていないので、コメントを控えさせていただきたい」と回答した。

(弁護士ドットコムニュース)

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