4219.jpg
「103万円の壁」配偶者控除「150万円」に見直し論、「撤廃して新たな控除を」
2016年12月02日 10時25分

専業主婦世帯などの所得税負担を軽くする「配偶者控除」制度の見直しをめぐり、政府が配偶者の年収制限を「150万円以下」に引き上げることなどを盛り込む方針を固めた。2017年度税制改正大綱に方針を盛り込み、年明けの通常国会に法律改正案を提出する予定。

政府の方針では、配偶者の年収の制限は、現在の「103万円以下」から「150万円以下」に引き上げる。その一方で、世帯主の年収が1120万円を超えると控除額を段階的に減らし、1220万円で対象外とする。

配偶者控除をめぐっては、専業主婦世帯を念頭においており、夫婦の働き方が多様化した現代にそぐわないといった批判があった。そのため、制度を廃止して、夫婦であれば働き方に関係なく適用する「夫婦控除」の導入が検討されていたが、結局導入は見送られた。

年収の上限を引き上げて女性の就労を後押ししたいという狙いもあるようだが、今回の案はどう評価できるのか。三宅伸税理士に聞いた。

専業主婦世帯などの所得税負担を軽くする「配偶者控除」制度の見直しをめぐり、政府が配偶者の年収制限を「150万円以下」に引き上げることなどを盛り込む方針を固めた。2017年度税制改正大綱に方針を盛り込み、年明けの通常国会に法律改正案を提出する予定。

政府の方針では、配偶者の年収の制限は、現在の「103万円以下」から「150万円以下」に引き上げる。その一方で、世帯主の年収が1120万円を超えると控除額を段階的に減らし、1220万円で対象外とする。

配偶者控除をめぐっては、専業主婦世帯を念頭においており、夫婦の働き方が多様化した現代にそぐわないといった批判があった。そのため、制度を廃止して、夫婦であれば働き方に関係なく適用する「夫婦控除」の導入が検討されていたが、結局導入は見送られた。

年収の上限を引き上げて女性の就労を後押ししたいという狙いもあるようだが、今回の案はどう評価できるのか。三宅伸税理士に聞いた。

●「所得の再分配効果に期待」

「配偶者控除とは妻(または夫)の年収が103万円以下の場合、夫(または妻)の所得から38万円の控除が受けられる制度です。

配偶者控除は、最低限の生活を保障することを目的に、扶養控除のひとつとして1961年に導入されましたが、それから半世紀がすぎ、社会環境も大きく変化しました。

共働きの世帯が多くなり、配偶者控除は『103万円の壁』と言われ、女性の就業意欲を下げ、また専業主婦への過度な優遇であると批判されています。

このような不公平感をなくすため配偶者控除廃止論が持ち上がっていました」

三宅税理士はこのように述べる。見直し案が実現されれば、不公平感は是正されるのか。

「今回の見直しは、配偶者控除の年収要件を103万円以下から150万円以下にするというのもで、配偶者控除の要件が逆に緩和されています。

パートで働く主婦の就業調整という課題の解決という点では全く効果がないわけではありません。また、1120万円以上は段階的に控除額を減らし、1220万円以上は対象外になるとのことです。こうした所得制限をかけることで高所得者から低所得者への所得再分配効果はあるでしょう」

●「103万円の壁」は配偶者控除以外にも存在する

「ただ、『103万円の壁』が『150万円の壁』になっただけでは、女性の就業促進や専業主婦の過度な優遇の根本的な解決にはならないと思います。

『103万円の壁』は、税制の配偶者控除だけではありません。民間企業が支給する「配偶者手当」の年収条件も、『103万円以下』である場合が多いです。

配偶者控除の基準を見直されたとしても、こうした会社独自の配偶者手当の廃止や基準見直しがされなければ、女性の就業意欲の引き上げ効果は限定的にとどまるのではないかと思います。

この他にも、年金や健康保険の社会保険料の支払いが義務付けられる『130万円の壁』も存在しています。

就業形態による不公平感を減らすためにも、配偶者控除は撤廃して、家族控除等の新設や、所得再分配効果が期待できる税額控除にするなども一案ではないでしょうか」

【取材協力税理士】

三宅 伸(みやけ・しん)税理士

大阪府立大学経済学部卒業後大手リース会社勤務。仕事、育児、勉強を両立しながら大阪の税理士法人に勤務。平成26年11月堂島で三宅伸税理士事務所を開業。設立当初からクラウド会計の導入をすすめている。常にお客様の立場に立って考えお客様と共に成長していくことをモットーに起業支援、介護事業支援、相続等を軸に幅広く活動している。

事務所名   : 三宅伸税理士事務所

事務所URL:  http://miyake-tax.jp/index.html

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る