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川崎事件で注目される少年法の「対象年齢」 20歳から18歳に引き下げるべきか
2015年03月05日 12時04分

川崎市の中1男子殺害事件で、18歳と17歳の少年3人が逮捕されたことを受けて、世論のみならず与党幹部からも、少年法を見直すべきとの指摘が飛び出した。2月27日、自民党の稲田朋美政調会長と公明党の石井啓一政調会長が、少年法改正の必要性に言及したのだ。

「少年が加害者である場合は名前を伏せ、通常の刑事裁判とは違う取扱を受けている。(少年事件が)非常に凶悪化しており、犯罪を予防する観点から、少年法が今の在り方でいいのか課題になる」(稲田政調会長)

また、選挙権年齢を20歳から18歳に引き下げる「公選法改正案」が国会に再提出されることから、「少年法の年齢を合わせるべきだとの議論も出てくるだろう」(石井政調会長)と、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げる可能性も示した。

今回の事件については、ネット上でも「年齢の線引きではなく犯罪の重さで分けるべき」「少年法のせいで、殺人を犯した人間が数年で社会復帰なんて怖すぎる。凶悪犯には成人と同じく極刑を求む」など、現行の少年法を疑問視する声が多くあがっている。

少年法の改正は必要なのだろうか。少年事件にくわしい小野智彦弁護士に聞いた。

川崎市の中1男子殺害事件で、18歳と17歳の少年3人が逮捕されたことを受けて、世論のみならず与党幹部からも、少年法を見直すべきとの指摘が飛び出した。2月27日、自民党の稲田朋美政調会長と公明党の石井啓一政調会長が、少年法改正の必要性に言及したのだ。

「少年が加害者である場合は名前を伏せ、通常の刑事裁判とは違う取扱を受けている。(少年事件が)非常に凶悪化しており、犯罪を予防する観点から、少年法が今の在り方でいいのか課題になる」(稲田政調会長)

また、選挙権年齢を20歳から18歳に引き下げる「公選法改正案」が国会に再提出されることから、「少年法の年齢を合わせるべきだとの議論も出てくるだろう」(石井政調会長)と、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げる可能性も示した。

今回の事件については、ネット上でも「年齢の線引きではなく犯罪の重さで分けるべき」「少年法のせいで、殺人を犯した人間が数年で社会復帰なんて怖すぎる。凶悪犯には成人と同じく極刑を求む」など、現行の少年法を疑問視する声が多くあがっている。

少年法の改正は必要なのだろうか。少年事件にくわしい小野智彦弁護士に聞いた。

●「改正には慎重であるべき」

「少年法適用の年齢を、一律18歳に引き下げるという改正案については、基本的に慎重に取り組むべきだと考えます」

小野弁護士はこのように切り出した。少年法適用年齢の引き下げになぜ反対なのだろうか?

「少年による一部の凶悪犯罪を予防する観点から適用年齢を一律に引き下げれば、凶悪でない軽微な犯罪を犯した少年の更生の機会を奪いかねません。

これは、少年保護の観点からは好ましくありません。10代というのは非常に未熟な時期であり、可塑性も全くないわけではないからです」

可塑性、つまり更生する可能性が、少年は成人に比べて高いということだろう。

「私自身、少年事件をよく扱いますが、犯行時に18歳以上だった少年が、保護処分によって更生していったケースがたくさんあります。

もし、この少年達が、大人同様の刑事手続に乗せられ、『前科者』になっていたとしたら、おそらく更生の可能性は、より狭まっていたのではないかと思います。

また、私自身、18歳のときに少年事件を起こしたものの、少年法によって人生を救っていただいた経験もあり、少年法が少年の更生に果たしている役割は大きいと思います」

自身の経験をまじえ、小野弁護士はそう語る。

●「終身刑」の創設を検討すべき

少年法に改正すべき点はないのだろうか。

「少年法51条1項は『罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する』と定めています。つまり、犯行当時18歳未満だった少年の量刑については、無条件に減刑しなければ『ならない』と定めているのです。

しかし、少年事件の凶悪化に対応するための方策としては、まず、この『必要的減刑』の規定を『任意的減刑』に改正する必要があると考えています」

18歳未満の少年が、成人なら死刑を科されるような重い犯罪を犯しても、必ず無期懲役に減刑することが定められている。これを「必要的減刑」といい、それに対して、減刑しても良いし、しなくても良いとする規定を「任意的減刑」という。

「無期懲役は、現行刑法では死刑の次に重い刑です。しかし、無期懲役は仮釈放が許される可能性があり、死ぬまで刑務所から出られない終身刑ではありません。それで犯罪の抑止力となっているかは疑問も残り、終身刑を新たに創設することが必要ではないかと思います」


小野弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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