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広末涼子さん高速を時速165km以上で走行か、「大谷佐々木に並ぶ」の声も 危険運転致傷罪は成立する?
2025年08月08日 11時24分

今年4月、新東名高速道路で発生した女優の広末涼子さんの追突事故の際、広末さんが運転する自動車は時速165キロ超で走行していた可能性があると共同通信などが報じています。

報道によれば、事故では同乗者が骨折の重傷を負い、現場にブレーキ痕が残されていなかったことから、警察は危険運転致傷罪の疑いで捜査を進めているようです。

SNSでは「生きてて良かったね」や、「大谷佐々木に並ぶ日本記録タイ」など、驚きの声があがっています。

現時点では詳細はわかりませんが、高速道路での速度超過事故につき、どのような場合に危険運転致傷罪によって立件されるのでしょうか。

今年4月、新東名高速道路で発生した女優の広末涼子さんの追突事故の際、広末さんが運転する自動車は時速165キロ超で走行していた可能性があると共同通信などが報じています。

報道によれば、事故では同乗者が骨折の重傷を負い、現場にブレーキ痕が残されていなかったことから、警察は危険運転致傷罪の疑いで捜査を進めているようです。

SNSでは「生きてて良かったね」や、「大谷佐々木に並ぶ日本記録タイ」など、驚きの声があがっています。

現時点では詳細はわかりませんが、高速道路での速度超過事故につき、どのような場合に危険運転致傷罪によって立件されるのでしょうか。

●「危険運転致傷罪」とはどんな罪?

まず「危険運転致傷罪」とはどのような罪なのでしょうか。

本件では、危険運転致傷罪のうち、「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」(2条2号)によって人を負傷させた場合(進行制御困難高速度)にあたるかどうかが問題となると考えられます。

同罪は、 「人を負傷させた場合には15年以下の拘禁刑」 「人を死亡させた場合には1年以上の有期拘禁刑」 というかなり重い犯罪です。

通常、自動車事故によって人を死傷させれば過失犯は成立します。危険運転致死傷罪は、過失犯として処罰するのは適切でないと考えられるような、より悪質な故意行為を、より重く処罰するものとして規定されています。

したがって、高速度で事故を起こした場合に、なんでも本条が適用可能というわけではありません。あくまでも速度が「速すぎることが原因」で、「進行を制御することが困難」となって死傷結果を生じさせた場合に成立すると考えられています。

●「進行を制御することが困難」な状況とは?

「進行を制御することが困難な高速度」とはどのような状況を指すのでしょうか。

具体的に「進行を制御することが困難な高速度」という要件にあたるかどうかは、道路の形状や路面状況などの道路の具体的な状況や、車両の性能・状態(例、タイヤの劣化の程度など)の車両の具体的な状況といった客観的な事情を基礎にして、物理的な意味で自動車の制御が困難となっているかどうかという観点から判断されます。

他方で、他の走行車両や歩行者の存在や、運転者の技能などの事情は、原則として判断要素とはならないと考えられています(名古屋高判令和3年2月12日、千葉地判平成28年1月21日、千葉地判平成16年5月7日など)。

●直線道路では危険運転致傷罪の成立が認められにくい

では今回、道路の形状はどうだったのでしょうか。

広末さんの事件で問題となった新東名高速道路では、直線道路が多く、事故が起こったと報道されている粟ヶ岳トンネルにも、地図で見る限りでは急なカーブや勾配はないようです。

直線道路で大幅に法定速度を上回る高速度で運転した場合に、進行制御困難高速度にあたるとした裁判例はあまり多くありません。

その理由は、上で挙げたような道路の状況、車両の状況について、日本の道路では、直線道路を走っている自動車が、客観的にみて「進行を制御することが困難」だったといえるような状況が少ないからと考えられます。

このような結論は不当だ、と考える方もいらっしゃるでしょうが、この場合でも過失運転死傷罪(同法5条、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)は成立します。

事後的にみれば、速度違反があって事故を起こし、死傷結果が生じた場合というのは、結局のところ自動車の制御ができていなかった、とはいえます。しかし、そういう場合を常に進行制御困難高速度にあたると考えてしまうと、過失犯との区別が出来なくなってしまうため、このように考えられています。

画像タイトル 新東名高速道路・粟ヶ岳トンネル(toshiharu_arakawa / PIXTA)

●直線道路でも危険運転致傷罪の成立を認めたケースも

もっとも、直線道路であれば常に進行制御困難高速度にはあたらない、というわけではありません。

たとえば、大分県大分市の一般道(制限速度60km/h)で、直線道路を夜間に194km/hで走行し、右折車と衝突して被害者1名を死亡、他の被害者を負傷させたケースでは、この自動車は進路を逸脱していたわけでもありませんが、危険運転致死罪を適用して懲役8年の実刑判決を言い渡しています(大分地判令和6年11月28日)。

●今回のケースでは

先に書いたように、新東名高速道路は直線道路が多く、事故が起こったと報道されている粟ヶ岳トンネル付近にも、急なカーブや勾配はないようです。

また、広末さんの場合、120km/h制限の高速道路で165km/h以上の速度とみられており、大分県のケースよりは速度超過の度合いが小さいといえます。

先に挙げた名古屋高判令和3年2月12日では、片側3車線、制限速度60km/hの直線道路を時速約146km/hで走行中に、タクシーと衝突して運転手、乗客を死傷させたというケースで、進行制御困難高速度にはあたらないという判断をしています。

また、大分県の事件では、大分地検は当初過失運転致死罪で起訴し、その後2万8千人以上の署名があって危険運転致死罪に訴因変更されたといういきさつがあったそうです。

これらの事件との比較からすると、報道されている事情だけからは、広末さんのケースでは危険運転致傷罪は成立しないように思えます。

もちろん、トンネル内での事故であることなど、その他様々な事情が、道路状況や自動車の状況の判断に影響する可能性はあります。

今後、具体的な道路状況や自動車の状況について、さらに捜査が進められるものと考えられます。

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