7793.jpg
「大失業時代」に懸念 「9月以降さらなる危機」コロナ労働相談、現場からの報告
2020年07月27日 15時44分

「失業時代、解雇される時代がこれから続いてしまうかと思う。適切な対応を考える必要がある」(日本労働弁護団の水野英樹幹事長)

第2回「コロナ労働問題連絡会議」が7月27日、オンライン開催され、労働組合など約15団体が実態を報告した。

4月7日の第1回会議では、新型コロナに関する労働問題の情報共有がなされ、各労組から「5月に生きていられるかわからない」など経済的に立ち行かない切迫感が報告されていた。あれから約3カ月。危機を脱するどころか、課題は山積みだ。

「失業時代、解雇される時代がこれから続いてしまうかと思う。適切な対応を考える必要がある」(日本労働弁護団の水野英樹幹事長)

第2回「コロナ労働問題連絡会議」が7月27日、オンライン開催され、労働組合など約15団体が実態を報告した。

4月7日の第1回会議では、新型コロナに関する労働問題の情報共有がなされ、各労組から「5月に生きていられるかわからない」など経済的に立ち行かない切迫感が報告されていた。あれから約3カ月。危機を脱するどころか、課題は山積みだ。

●賃金不払いに加えて雇い止めが増加

4月時点の報告では、労働者からコロナ関連の相談は、賃金不払いや休業補償が多かった。労弁の水野弁護士によると、賃金不払いの相談は継続的に届いているという。加えて、最近では雇用契約の終了、雇い止めの相談も増加しているそうだ。

非正規労働者は切迫している。連合の「なんでも労働相談ホットライン」に寄せられる電話相談は、2020年1〜6月で計1万298件で、これは前年同月比で2244件増。特に、3月以降の相談者の6割強が正社員以外の非正規労働者で「弱い立場のかたへのコロナの影響がみてとれる」(連合)

一方で、雇用は維持されるものの、給料が全く支払われず、事実上、退職に追い込まれるなどの実態もあるそうだ。

●出版業界 フリーランスの弱い立場が明確に

出版・印刷・広告関連業界のフリーランスを対象にした出版ネッツによる6月のアンケート調査では、支払い遅延、仕事の延期・中止などの回答が寄せられたそうだ。

さらに、正規との間で働き方の「差」が顕在化した。「常駐フリー」で働く労働者の多くが、正社員には補助が出たテレワークに必要な通信量や機材費用を自己負担したという。ほか、「社員のかわりに出勤させられた」「社員用の消毒液はフリーの人は使えない」などの非正規差別も存在するという。

●犯罪に手を染める土壌ができかねない

相談者の8割が外国人労働者という「ユニオンみえ」には、フェイスブックなどSNSを通じた相談が3月から今日まで800件近く届いている。

「労働者の多くが働いて得た賃金を母国の家族に送金している。各国では防疫対策で外出禁止措置がとられ、身動きがとれず、生活困窮に陥っている。日本の労働者も賃金が苦しい」

仕事を切られた労働者は、家族のピンチをうけて必死に仕事を探すものの、働き先の工場はどんどん閉鎖されて仕事が見つからないという。「より短期で安価な求人に吸引されて、暴力的な労働環境や賃金不払いの労働相談が増えていくと感じる」

会議の司会を務めた労弁の棗一郎弁護士も「就職口が見つからず、下へ下へ向かう傾向がある。最悪、犯罪的な行為の仕事に手を染めることが起こっているようです」と懸念を示す。

オンライン会議の様子 オンライン会議の様子

●さらに寒い秋冬 大失業時代がやってくる?

「9月末や3月末の決算期の事業閉鎖、整理解雇の危機があると思っている」(全国ユニオン)など、各労組では口々に秋や冬にかけてのさらなる危機が語られた。

「東日本大震災のときは、国から各都道府県に予算を付けて、交付金を出したり、事業を作ったりして、雇用を作ることもした」(全労働)。しかし、今回のコロナの労働問題で同様の対応は困難である。

棗弁護士は「雇用創出がなく、大失業時代がくる。9月以降に、雇い止めや、コロナ切りが増えるというのは組合のみなさんの予想は一致している」と訴え、会議に参加した団体に対して、統一的に政策提言など実施していく共闘を呼びかけた。

●遅々として進まぬ労災認定

会議では、コロナを理由とした労災請求の認定事例の少なさも問題提起された。厚労省発表の「新型コロナの労災請求件数」(7月21日時点)は772件。そのうち、支給決定は195件。

東京労働安全センターでは「調査中が圧倒的に多い。民間も地方公務員の災害補償請求も46件中、認定は15件でかなり低い状況だ」とする。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る