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YouTubeで「通り魔」を予告!? 「殺人予告動画」の投稿はどんな罪になる?
2013年07月04日 15時00分

福岡市のJR博多駅で通り魔を行うと宣言する不気味な「殺人予告」動画が6月上旬、YouTubeに投稿された。犯行場所や時間など予告された内容が具体的だったこともあり、これを知ったネットユーザーたちが福岡の人に注意するよう呼びかけるなど、一時騒然となった。幸い、予告日とされた6月14日に事件は起こらなかったが、少なからぬ人たちに恐怖を与えた。

インターネット上の掲示板や、ツイッターなどのSNS犯罪を予告する事件は後を絶たない。こうしたネット上での犯罪予告はどのような罪に問われるのか。また、具体的な犯罪予告ではなく、冗談で「ぬっ殺す」などと書き込むだけで罪になってしまうのか。犯罪となる「境界線」も気になるところだ。元検事で、刑事事件にくわしい高岡輝征弁護士に聞いた。

●「脅迫罪」「業務妨害罪」「軽犯罪法違反」の3つがある

「成立する可能性があるのは、脅迫罪、業務妨害罪、軽犯罪法違反の3つです。それぞれ見ていきましょう」

――脅迫罪が成立するのはどんなとき?

「脅迫罪は『人の身体や生命に対する害悪』が具体的に告知されれば、成立します。実際に成立した事例としては、ある講演会を特定し、ネットに「教室に灯油をぶちまき 火をつければ あっさり終了」などと書き込んだケース(東京高判平成20年5月19日)があります。

では『ぬっ殺す』だった場合はどうでしょう。これは『明白かつ現在の危険』が生ずるとまではいえないものの、通常、人を畏怖させる程度の害悪をほのめかしたとはいえます。ただし、これだけでは、誰を『ぬっ殺す』のかが特定されません。脅迫罪となるには、対象人物がある程度特定される必要があります。そこで、同時または前後に書き込まれた他の記載内容等により、対象人物がある程度特定される場合に限り、脅迫罪が成立します。なお、脅迫罪の罰則は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です」

――業務妨害罪は?

「冗談だろうと、具体的であろうと、犯罪の予告がされれば、たとえば、警察は警備をし、学校は生徒の安全を守り、店舗は防衛策をとったり、予告投稿があったサイトの運営者は削除を迫られます。このように、これらの業務が妨害されるおそれが生じさえすれば、『業務』の『妨害』になります。

そして、『業務』の『妨害』を招いた予告が人の自由意思を制圧するような形であれば『威力』業務妨害罪が成立します。上記の講演会についての書き込みは、脅迫罪のほかに、威力業務妨害罪の成立も認められました。

一方、予告が人を欺いたり、勧誘したり、または他人の無知や錯誤を利用する形であれば『偽計』業務妨害罪となります。『JR土浦駅で無差別殺人を行う』という内容の嘘の予告をした事例(東京高判平成21年3月12日)等では、偽計業務妨害罪の成立が認められました。なお、業務妨害罪の罰則は、いずれも3年以下の懲役または50万円以下の罰金です」

――最後に、軽犯罪法は?

「もし、犯行予告の違法性が低く、脅迫罪や業務妨害罪にならない場合は、軽犯罪法1条31号が成立する可能性があります。違法性の低い『いたずら』で業務を妨害した場合に適用される罪で、罰則は拘留または科料となります」

なお、高岡弁護士によると、『殺す』と犯行予告をしただけでは殺人行為そのものの準備行為ではないので、「殺人予備罪」にはならないということだ。

今回の「殺人予告動画」事件は、結局、東京都内に住む17歳の少年が威力業務妨害の疑いで逮捕されるという形で、一応の決着がついた。報道によれば、「なかなか仕事もみつからず、悪いことをしないで生きていても、明るい未来はないと思った。殺人を本当にやるつもりはなかった」と供述しているという。

(弁護士ドットコムニュース)

福岡市のJR博多駅で通り魔を行うと宣言する不気味な「殺人予告」動画が6月上旬、YouTubeに投稿された。犯行場所や時間など予告された内容が具体的だったこともあり、これを知ったネットユーザーたちが福岡の人に注意するよう呼びかけるなど、一時騒然となった。幸い、予告日とされた6月14日に事件は起こらなかったが、少なからぬ人たちに恐怖を与えた。

インターネット上の掲示板や、ツイッターなどのSNS犯罪を予告する事件は後を絶たない。こうしたネット上での犯罪予告はどのような罪に問われるのか。また、具体的な犯罪予告ではなく、冗談で「ぬっ殺す」などと書き込むだけで罪になってしまうのか。犯罪となる「境界線」も気になるところだ。元検事で、刑事事件にくわしい高岡輝征弁護士に聞いた。

●「脅迫罪」「業務妨害罪」「軽犯罪法違反」の3つがある

「成立する可能性があるのは、脅迫罪、業務妨害罪、軽犯罪法違反の3つです。それぞれ見ていきましょう」

――脅迫罪が成立するのはどんなとき?

「脅迫罪は『人の身体や生命に対する害悪』が具体的に告知されれば、成立します。実際に成立した事例としては、ある講演会を特定し、ネットに「教室に灯油をぶちまき 火をつければ あっさり終了」などと書き込んだケース(東京高判平成20年5月19日)があります。

では『ぬっ殺す』だった場合はどうでしょう。これは『明白かつ現在の危険』が生ずるとまではいえないものの、通常、人を畏怖させる程度の害悪をほのめかしたとはいえます。ただし、これだけでは、誰を『ぬっ殺す』のかが特定されません。脅迫罪となるには、対象人物がある程度特定される必要があります。そこで、同時または前後に書き込まれた他の記載内容等により、対象人物がある程度特定される場合に限り、脅迫罪が成立します。なお、脅迫罪の罰則は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です」

――業務妨害罪は?

「冗談だろうと、具体的であろうと、犯罪の予告がされれば、たとえば、警察は警備をし、学校は生徒の安全を守り、店舗は防衛策をとったり、予告投稿があったサイトの運営者は削除を迫られます。このように、これらの業務が妨害されるおそれが生じさえすれば、『業務』の『妨害』になります。

そして、『業務』の『妨害』を招いた予告が人の自由意思を制圧するような形であれば『威力』業務妨害罪が成立します。上記の講演会についての書き込みは、脅迫罪のほかに、威力業務妨害罪の成立も認められました。

一方、予告が人を欺いたり、勧誘したり、または他人の無知や錯誤を利用する形であれば『偽計』業務妨害罪となります。『JR土浦駅で無差別殺人を行う』という内容の嘘の予告をした事例(東京高判平成21年3月12日)等では、偽計業務妨害罪の成立が認められました。なお、業務妨害罪の罰則は、いずれも3年以下の懲役または50万円以下の罰金です」

――最後に、軽犯罪法は?

「もし、犯行予告の違法性が低く、脅迫罪や業務妨害罪にならない場合は、軽犯罪法1条31号が成立する可能性があります。違法性の低い『いたずら』で業務を妨害した場合に適用される罪で、罰則は拘留または科料となります」

なお、高岡弁護士によると、『殺す』と犯行予告をしただけでは殺人行為そのものの準備行為ではないので、「殺人予備罪」にはならないということだ。

今回の「殺人予告動画」事件は、結局、東京都内に住む17歳の少年が威力業務妨害の疑いで逮捕されるという形で、一応の決着がついた。報道によれば、「なかなか仕事もみつからず、悪いことをしないで生きていても、明るい未来はないと思った。殺人を本当にやるつもりはなかった」と供述しているという。

(弁護士ドットコムニュース)

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