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女性アスリートの性的画像問題、条例での対応には限界も… 今後の対応策は?
2020年11月10日 17時29分

女性アスリートを性的な目的で撮影した写真や、わいせつ加工された画像が拡散される被害が問題視されている。

アスリートにカメラを向ける行為自体は昔から見られる光景だが、高品質なデジタルカメラが普及したことに加え、SNSの利用が広がり、撮影された写真や画像などがネットで容易に拡散・閲覧できるようになったことで、被害が広がりやすくなっている。

競技団体側も対策をしていないわけではない。撮影できる人を許可されたメディアや大会関係者に限定したり、撮影できる場所を観客席(スタンド)に限定するなど、被害防止に取り組んでいるが、観客が自由に出入りできるような競技会ではこれら対策にも限界がある。

今後さらなる被害を防ぐためにはどうすればいいのだろうか。スポーツ選手の肖像権などにくわしい河西邦剛弁護士に聞いた。

女性アスリートを性的な目的で撮影した写真や、わいせつ加工された画像が拡散される被害が問題視されている。

アスリートにカメラを向ける行為自体は昔から見られる光景だが、高品質なデジタルカメラが普及したことに加え、SNSの利用が広がり、撮影された写真や画像などがネットで容易に拡散・閲覧できるようになったことで、被害が広がりやすくなっている。

競技団体側も対策をしていないわけではない。撮影できる人を許可されたメディアや大会関係者に限定したり、撮影できる場所を観客席(スタンド)に限定するなど、被害防止に取り組んでいるが、観客が自由に出入りできるような競技会ではこれら対策にも限界がある。

今後さらなる被害を防ぐためにはどうすればいいのだろうか。スポーツ選手の肖像権などにくわしい河西邦剛弁護士に聞いた。

●撮影が「性的な目的」によるものなのかを判断するのは容易でない

――現時点での盗撮に対する法規制はどのようになっていますか。

現状、全国一律に盗撮を規制している法律は存在しません。各都道府県の迷惑防止条例で盗撮を規制しています。

もともとは昭和の時代からある迷惑防止条例でした。しかし、盗撮の手口は、スマホの発達やWi-Fi機能を有する小型カメラの開発など、数年違えばその犯罪手口も変容してきます。

昨今、条例改正が進み、2018年7月から東京都でも規制場所が拡大されました。ただし、現在の条例違反で規制される盗撮は「衣服で隠されている部分」です。たとえば、駅で通行人のスカート内を撮影する行為は明らかに条例違反となります。

しかし、規制が難しいのが、競技場などでのユニフォームなどの着衣状態の撮影行為です。

――どうして規制が難しいのでしょうか。

そもそも衣服の上の撮影ですし、選手を撮影する行為が「性的な目的」で撮影しているのか、競技そのものを撮影しているのかを区別することが、第三者には困難だということが挙げられます。「競技を撮影していたんだ」という反論は必ず出てきます。

また、プロスポーツを始めとして、ある程度撮影されることについては、そのスポーツ自体の盛り上がりや普及目的のためにも選手自身が承諾しているケースもあります。

――たしかに「魅せる」こともスポーツの重要な要素です。

しかし、プロの選手自身も性的な目的での撮影行為には嫌悪感をもつでしょう。

また、プロでない学生競技などの場合には、撮影について抵抗があるものの、自分自身の判断で出場する大会と出場しない大会を選ぶことができないというケースもあります。

性的な目的での撮影行為から選手を保護する必要性は高いといえます。

●条例での規制には限界が…「法律による規制が必要」

――具体的にどう対応すべきでしょうか。

現在の迷惑防止条例においても、盗撮行為そのものとは別に、「公共の場所」における「卑わいな言動」を刑罰の対象にしています。競技場は不特定多数の人が出入りするので、駅などと同じように「公共の場所」といえるでしょう。

ですので、特に学生など盗撮禁止の必要性が高い会場では、会場側の権限(施設管理権限)により撮影を一律禁止にし、それでもなおカメラを隠して撮影している行為については条例が規制している「卑わいな言動」に該当するとして、警察を呼んでカメラをチェックさせるという対策が考えらます。

最高裁の判例でも、ズボンを着用した女性の臀部を携帯カメラで執拗に撮影した行為が「卑わいな言動」に該当すると判断された事例もあります。

そのうえで、記録データから悪質な態様が残っている場合には実際に摘発していくという方法により、現状の条例のもとでも規制をしていくことは不可能ではありません。

――その場での現行犯的な対応は難しいのでしょうか。

自分で対処せずに警察に通報するというのが現実的な対策です。駆けつけた警察がカメラのデータをチェックすることもありますし、撮影者に対する事実上のけん制にもなります。悪質なデータがあれば事件として立件できる可能性も出てきます。

ただ、警察が来る前にデータを消すことも可能であり、警察を呼んだうえでの摘発も実際にはハードルが高いですので、現在の迷惑防止条例の下での規制にはやはり限界があります。

プロスポーツを中心に、競技をしている身体やその動き自体がスポーツの魅力になっており、それをSNSで発信することで競技の普及にもなるという側面があることは否定できません。

しかし、卑わいな写真がSNSで拡散される被害も無視できません。特にプロでないとりわけ学生に対する撮影行為については法律による規制が必要になるでしょう。

具体的には、撮影の一律禁止ではなく、施設管理者の判断で撮影不可にした場所での盗撮行為については取り締まるといった立法政策があり得るところだと考えます。

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