528.jpg
石巻市「1億2600万円」誤って送金…受取人が勝手に引き出したら犯罪?
2016年07月15日 10時15分

宮城県石巻市が6月下旬、設計委託費や消耗品購入費など計約1億2600万円を、131の企業や個人に、誤って二重に送金していた問題で、その大部分が返金されたことがわかった。

石巻市の会計課の職員が6月14日、金融機関の振り込みサービスを担う関連会社に、口座振り込みのデータを送信した。その際、プリンターから自動的に出てくるはずの送信結果が印刷されなかった。職員は、データが送信されていないと勘違いし、データを再送信した。

その結果、金融機関から企業・個人に二重に現金が振り込まれた。6月16日に発覚し、市は電話や訪問で返金を求めていた。石巻市の会計課によると、7月11日現在、二重送金された約1億2600万円のうち、1億2530万円が返金された。返金を拒まれたケースはなかったという。

一般的に、誤振込されたお金を、法的にはどう考えればいいのか。今回のケースでは無事に返金されているが、もし、「私の口座に入っているお金だから私のモノだ」と主張されたら、返してもらえないのだろうか。桑原義浩弁護士に聞いた。

宮城県石巻市が6月下旬、設計委託費や消耗品購入費など計約1億2600万円を、131の企業や個人に、誤って二重に送金していた問題で、その大部分が返金されたことがわかった。

石巻市の会計課の職員が6月14日、金融機関の振り込みサービスを担う関連会社に、口座振り込みのデータを送信した。その際、プリンターから自動的に出てくるはずの送信結果が印刷されなかった。職員は、データが送信されていないと勘違いし、データを再送信した。

その結果、金融機関から企業・個人に二重に現金が振り込まれた。6月16日に発覚し、市は電話や訪問で返金を求めていた。石巻市の会計課によると、7月11日現在、二重送金された約1億2600万円のうち、1億2530万円が返金された。返金を拒まれたケースはなかったという。

一般的に、誤振込されたお金を、法的にはどう考えればいいのか。今回のケースでは無事に返金されているが、もし、「私の口座に入っているお金だから私のモノだ」と主張されたら、返してもらえないのだろうか。桑原義浩弁護士に聞いた。

●「誤った振り込みであることを知っていながら、引き出すことはできない」

そもそも誤って振り込まれたお金でも、受取人は引き出すことができるのか。

「誤って普通預金口座に振り込まれた場合であっても、受取人(口座の名義人のことです)と銀行との間には、振込金額に相当する普通預金契約が成立するというのが判例の考え方です(最高裁平成8年4月26日判決など)。

銀行は、預金の払い戻しのルールなどを定めた『普通預金規定』を定めていますが、この規定に預金契約が成立するかどうかを、原因関係の有無(どういった理由で振り込まれたのか)で決めるというような定めをおいていないことなどが理由です。

そのため、原則として、銀行は『預金者がお金を引き出しに来たら応じる』という対応をとることになります。

ただし、『誤った振り込みをした』と振り込み人が連絡してきたら、銀行は、受取人に確認して、組み戻しとしてお金を戻す対応をとってくれます」

●誤って振り込まれたことを知ったら、銀行に告知する義務がある

では、振り込み人が誤振込に気がつく前に、振り込まれた口座の持ち主がお金を引き出してしまった場合には、どうすればいいのか。

「誤った振り込みでれば、受取人には振り込まれたお金を受け取る法律上の原因(権原)がありません。

そのため、誤って振り込んだ者は受取人に対して、振り込んだお金を不当利得として返還するように請求することができます。『受け取る権原がないのだから、当然返す』ということですね。

誤って振り込まれたのを知りながら、受取人が払い戻しを請求することについては、詐欺罪が成立するという判例もあります(最高裁平成15年3月12日判決)。

誤った振り込みであることを知っていれば、信義則上、銀行に告知する義務があるからです。

今回は二重に振り込まれており、誤って振り込まれているのは明らかですから、これが分かっていながら引き出して使ってしまうようなことはやめた方がいいですね」

桑原弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る