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組幹部「娘の結婚式に出たい」、裁判所が勾留を5時間半停止…妥当な判断なのか?
2016年06月18日 10時14分

拘置所に勾留されている暴力団の組幹部(関税法違反の罪などで起訴)が娘の結婚式に出席することを希望し、大阪地裁が勾留の執行停止を認めた、と朝日新聞が報じた。本人の病気や親の危篤などではなく、祝い事での執行停止はかなり異例なことだという。

朝日新聞によると、勾留停止は5月の挙式日の午後0時半から午後6時まで認められた。大阪地検は、被告が否認していて逃亡の恐れがあり、前科もあるとの理由で反対意見を出していたが、大阪地裁は警察官と弁護人の同行を条件に認めた。

勾留の執行停止とはどのような仕組みなのだろうか。また、今回のように祝い事で停止を認めることは妥当なのだろうか。荒木樹弁護士に聞いた。

拘置所に勾留されている暴力団の組幹部(関税法違反の罪などで起訴)が娘の結婚式に出席することを希望し、大阪地裁が勾留の執行停止を認めた、と朝日新聞が報じた。本人の病気や親の危篤などではなく、祝い事での執行停止はかなり異例なことだという。

朝日新聞によると、勾留停止は5月の挙式日の午後0時半から午後6時まで認められた。大阪地検は、被告が否認していて逃亡の恐れがあり、前科もあるとの理由で反対意見を出していたが、大阪地裁は警察官と弁護人の同行を条件に認めた。

勾留の執行停止とはどのような仕組みなのだろうか。また、今回のように祝い事で停止を認めることは妥当なのだろうか。荒木樹弁護士に聞いた。

●具体的な基準はない

「勾留とは、刑事訴訟法で認められた被疑者・被告人の身柄拘束の一つです。勾留中の被疑者・被告人が釈放される制度は、いくつかありますが、代表的なものとして、

(1)執行猶予の判決が言い渡された場合

(2)保釈が許可された場合

(3)勾留の執行停止が認められた場合

などがあります」

どういうケースで執行停止になるのか。

「勾留の執行停止は、刑事訴訟法では、裁判所が『適当と認めるとき』に認められると定められているだけで、具体的な基準はありません。

また、保釈と異なり、被疑者・被告人の権利ではありません。

保釈は、刑事訴訟法上、保釈不許可事由に該当しない限り、裁判所は保釈を許可しなければなりませんが、勾留の執行停止は、裁判所の職権裁量です。認められなかった場合に不服申立をする権利もありません。

実務上、勾留の執行停止が認められるケースの圧倒的大多数は、被疑者・被告人に宿泊の伴う入院治療が必要な場合であり、この場合、検察官が勾留執行停止を求める場合がほとんどです。

その他に認められる場合としては、親しい親族の葬儀などです。また、学生である被告人が試験受験のために認められた場合もあるようです」

●結婚式の出席が認められた理由

今回のケースをどう考えればいいのだろうか。

「今回は、娘の結婚式に参加するために勾留執行停止が認められたようです。

どういったケースで勾留執行停止が認められるかは、裁判官の判断によるとしか言えないところですが、一般的には、(1)事件の重大性、(2)審理の状況、(3)執行停止の必要性、(4)罪証隠滅・逃亡の危険性、を総合判断して決めることになると思います。

今回の事案は、偽造印紙の密輸入事案であり、被疑者の前科の内容がはっきりしませんが、場合によっては実刑が見込まれる重大事案ではないかと思われます。また、犯行を否認しているとのことであり、事件関係者と手振りや合言葉を使ってやりとりするおそれもあります。また、人生最後の別れとなる葬儀とは異なり、結婚式については人道的に列席を認める必要性が高いとまでは言えないとも考えられます。

その一方で、人命に係わるほどの重大事件ではないことや、少子化により結婚式の重要度が増しているといった事情を考慮し、他の証拠関係から罪証隠滅の可能性は乏しいと見込まれるのであれば、勾留執行停止を認めるという判断もありえるのかと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

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