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犯罪歴あっても「覚悟があるなら採用支援したい」求人誌を発刊…定着目指して奮闘
2018年03月18日 09時50分

刑務所や少年院から出所・退院した人の社会復帰を応援する求人誌「Chance!!」が3月、発刊された。サービス業や建設業、製造業など12社が掲載され、普通の募集要項には見かけない「採用できない罪状」といった項目もある。

作成したのは犯罪や非行の前歴がある人の採用支援事業をしている「株式会社ヒューマン・コメディ」(東京都豊島区)の代表・三宅晶子さん。この求人誌について「絶対にやり直すという覚悟のある人と、それを応援したいという企業とを繋ぐためのもの」と話す。

刑務所に再入所することになった人の約7割が再犯時に無職というデータもあり、仕事と再犯は切っても切れない関係にある。働きたい人と会社とのマッチングはうまくいっているのだろうか。三宅さんに話を聞いた。

刑務所や少年院から出所・退院した人の社会復帰を応援する求人誌「Chance!!」が3月、発刊された。サービス業や建設業、製造業など12社が掲載され、普通の募集要項には見かけない「採用できない罪状」といった項目もある。

作成したのは犯罪や非行の前歴がある人の採用支援事業をしている「株式会社ヒューマン・コメディ」(東京都豊島区)の代表・三宅晶子さん。この求人誌について「絶対にやり直すという覚悟のある人と、それを応援したいという企業とを繋ぐためのもの」と話す。

刑務所に再入所することになった人の約7割が再犯時に無職というデータもあり、仕事と再犯は切っても切れない関係にある。働きたい人と会社とのマッチングはうまくいっているのだろうか。三宅さんに話を聞いた。

●犯罪歴がある人、やり直しがきかない現状

ーー犯罪歴がある人の採用支援をしているということですが、会社設立のきっかけはなんだったのでしょうか。

元々はサラリーマンをしていたのですが、人が好きなので人材系の会社に転職しようと思い、2014年に10年間勤めていた情報通信系の会社を辞めました。そこで人材育成の道に進むなら、今の社会で特に生きづらさを感じている人たちと接しておこうと思い、鹿児島県奄美市の青少年支援センターと都内の受刑者支援の団体で、ボランティアとして数週間働きました。

そこで非行歴や犯罪歴のある人が、なかなかやり直しがきかないという現状を知りました。満期で出所しても、家族からは「顔を見せるな」と言われて身寄りもない。所持金が尽きると物を盗んでやり過ごして、結局刑務所に戻ってしまう。そんな現実にショックを受けました。

そこで、少年院や刑務所を出た人の支援する会社を作ったら、皆過去を包み隠さなくても社会で輝けるようになるのではないか、なんて妄想が膨らんでしまって(笑)。それでお金もノウハウも何もない状態だったのですが、ついつい会社を登記してしまいました(笑)。そうして2016年の10月、「採用支援」を事業として営業を開始しました。

●信じてくれる人がいれば、変わるきっかけになる

ーー今回の「Chance!!」にはサービス業や、建設業、製造業など12社が掲載されています。受け入れ企業はどのようにして見つけるのですか。

「Chance!!」に掲載していない企業も含めると、現在の協力企業は30社くらいで、知り合いのつてで紹介してもらうことが多いです。昔はやんちゃをしていたような社長も多くいます。彼らと共感するところもあるようで、求人誌には「最初はみんな自分の人生を親や誰かのせいにしているけど、いい大人との出会いで人は変わる」「僕と同じように人から認めてもらえなかった連中が集まればいいなと思っている」といった代表者メッセージも掲載しています。

受け入れてくれるならどんな会社でも協力をお願いする訳ではありません。実際に社長と会ってみて、「どんな人でも一緒に成長したい」という思いがあり、逮捕されることがあっても待って受け入れてくれる会社を選んでいます。「人手だったらなんでもいいからとにかくよこせ」という会社は、お断りしています。

また、「こいつダメだ」とすぐ人を排除するのではなく、「皆でなんとかしよう」というチーム体制のある会社は、対応力も高く、会社として成長し続けているところが多いように感じます。「『二度と刑務所に戻らない』という思いを背負ってる人の方が頑張って働く」と言う社長もいます。

ーー事業を始めて1年5か月ですが、これまでにどんな人を企業と繋いだのですか。

当社第一号の人材は、更生保護施設から連絡があった男性(40代)でした。家庭というものをほとんど知らずに育ってきて、人間関係では不器用だけど、とても優しい人です。解体業をやりたいということで、愛知県の解体会社を紹介して即採用になりました。社長から「(彼が)絶対にコケるわけにはいかないと頑張っている」という話を聞いて、とても嬉しかった。

その彼が半年後に行方不明になり、その1か月後に窃盗罪で逮捕されました。翌日会いに行き、「生きててよかった」と伝えましたが、その5か月後にも行方不明となり、再び逮捕されたのです。2度目の時には怒鳴りました。「恩のある人に対して、仲間に対して、そういう形で何かを伝えたり、悲しませたりしてはいけないんだよ!バカヤロウ!」と。

「コケるわけにはいかない」と無理して頑張るのではなく、「自分は弱い人間だから、コケたりもする」って本人が思えることが大事なのではないかと今になって思います。覚悟は必要ですが、自分を認めるには皆きっかけがいるし、時間もかかります。

彼は今、更生保護施設にいます。自分を信じてくれる人が一人でもいたら、それが肉親でなくたって、人が変わるきっかけになるのではないかと思っています。自分もそんな役割でありたいし、そういう社長に繋げていきたいです。

●失敗を許せる社会でありたい

ーー事業として、うまくいってるのですか。

この1年5か月で17人の面談をした中で、自分で就職先を見つけた人が5人。再犯して刑務所に戻った人が1人。当社が関わって採用に至ったのが6人で、そのうち続いているのはたった1人。そんな現状で、ようやく少しずつ形になってきたところです。

受入先企業と人材との連絡を定期的にとって、双方の間に立ち仕事が長く続くようフォローをしています。選び抜いた会社であっても、本人と合わない場合もあるので、別の会社を探すこともできると伝えています。職場で言えないような話も、当社には言えるような信頼関係を築けるようになることが理想です。

それでも無断欠勤から連絡が取れなくなったり、行方不明になったりと、なかなか事業としても立ち行かない部分はあります。この人なら大丈夫、会社に喜んでもらえると思った人たちも、辞めていく。なかなか難しいです。なので会社としては、別の事業に柱を作ってやっていこうと考えています。

ーー試行錯誤の日々だったと思いますが、それでも三宅さんがこの事業を続ける理由はどこにあるのでしょうか。

私自身、中高生の時は悪さばかりしていました。家出はしょっちゅうで、警察のお世話になったことも何度もあります。通っていた私立高も退学になりました。それで病床の母親を泣かせてしまった時に、自分の人生どん底まで堕ちているなと感じました。でもその時に、「いつか自分はこの経験をネタに変える、プラスに変える」と決めたんです。

人間は誰でも失敗してしまうし、間違うこともある。「犯罪をした人はやり直せないのも自業自得」という風潮もあるけど、それを許せる社会でありたいと感じています。誰もが明日には交通事故の加害者になる可能性だってある。

たとえ過ちを犯したとしても、そこから人の役に立つように働いて、人を笑顔にして、最後は自分も笑って死ねるように生きればいい。すべての人間が「過去があるからこそ今がある」「人は変われる」と信じて未来に向かって生きることができるよう、きっかけを作っていけたらと思います。

【プロフィール】

三宅 晶子(みやけ・あきこ)。1971年、新潟県生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、輸出入代行会社に入社。北京やカナダへの留学を経て、2004年大塚商会に入社。通販仕入れ、社内監査などに携わり、2014年退職。2015年7月、株式会社ヒューマン・コメディを設立。

(弁護士ドットコムニュース)

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