千葉刑務所に服役中の受刑者が、同室の受刑者を殺害した疑いで千葉県警に逮捕された。
報道によると、受刑者(46)は8月24日朝、千葉刑務所で同じ部屋に収容されていた別の受刑者の男性(51)の頭などを水筒で殴り、殺害した疑いがあるという。
過去の新聞記事によると、この受刑者は2006年、勤務先の同僚女性の首を絞めて殺害し、無期懲役刑が確定して服役していたとみられる。
千葉刑務所では2024年にも、無期懲役囚が刑務官をノミで複数回刺す事件が起きている。
さらに弁護士ドットコムニュースは昨年、無期懲役囚が服役中に別の受刑者を殺害し、2度目の無期懲役判決を受けた事件を報じている。この受刑者は2022年に仮釈放され、約64年ぶりに社会に戻ってきた人物だった。
今回の事件は、罪の償いの場であるはずの刑務所で新たな重大犯罪が重ねられたかたちとなった。このまま殺人罪で起訴された場合、裁判所は量刑を決める際に現在の服役状況をどのように考慮するのか。また、被害者が服役中の受刑者であることは影響するのだろうか。
元検察官の落合洋司弁護士に聞いた。
●服役中の事件、量刑にどう影響する?
──服役中に事件を起こしたことは、量刑で考慮されるのか。
刑罰は、あくまで犯した犯罪に対する制裁であり、その内容に応じて決まりますが、日本の法定刑の幅は広く、量刑の際には情状も重視されます。
服役中に刑務所内で事件を起こすことは、本来更生を目指すべき場で犯した行為であり、悪質な情状として検察官の求刑や裁判所の判断にも影響するでしょう。
──被害者が受刑者である点はどうか。
被害者が受刑者であること自体が、量刑に直接影響するとは限りません。ただし、事件の経緯の中で被害者に落ち度があったかどうかは、判断材料の一つになる可能性があります。
●無期懲役受刑者の殺人、死刑になる可能性は?
──無期懲役の受刑者が刑務所で殺人を起こした場合、死刑となる可能性は高いのか。
今回の事件は、被害者1人であり、動機や態様を踏まえると、いわゆる「永山基準」に照らしても、ただちに死刑相当とは言えないと思います。ただし、無期懲役中という立場が、悪質な情状として考慮されることにはなります。
死刑の可能性を完全に排除することはできませんが、被害者が1人であること、刑務所という特殊な環境での犯行であること、またその手段がことさらに残虐だったわけではないことなどの事情から見て、あえて死刑を選ぶまでもないと判断される可能性のほうが高いのではないでしょうか。