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官邸落下で「ドローン規制」が本格化?「ドローン自体を禁止すべきではない」と専門家
2015年04月23日 10時24分

東京・永田町の首相官邸の屋上ヘリポートに、小型の無人飛行機「ドローン」が落下しているのが見つかり、衝撃が走った。4月22日午前のことだ。

報道によると、発見されたドローンは直径約50センチで、小型カメラや長さ約10センチのペットボトルのようなものが付いていたという。機体には放射線を示すマークが描かれ、微量のセシウムも検出された。

菅義偉官房長官は記者会見で「ドローンを利用したテロの発生も懸念される。今回の事案を踏まえ、不断の見直しと検証を政府一丸で行い、テロの未然防止に全力を尽くす」と無人機の運用のあり方やテロ対策を見直す考えを表明した。今後、ドローンをめぐる法規制はどうなるのだろうか。

東京・永田町の首相官邸の屋上ヘリポートに、小型の無人飛行機「ドローン」が落下しているのが見つかり、衝撃が走った。4月22日午前のことだ。

報道によると、発見されたドローンは直径約50センチで、小型カメラや長さ約10センチのペットボトルのようなものが付いていたという。機体には放射線を示すマークが描かれ、微量のセシウムも検出された。

菅義偉官房長官は記者会見で「ドローンを利用したテロの発生も懸念される。今回の事案を踏まえ、不断の見直しと検証を政府一丸で行い、テロの未然防止に全力を尽くす」と無人機の運用のあり方やテロ対策を見直す考えを表明した。今後、ドローンをめぐる法規制はどうなるのだろうか。

●公共的な建築物の上空で飛ばせなくなる?

ロボットと法律の問題にくわしい小林正啓弁護士は「ドローンが悪用される可能性が現実化したことで、今後は規制の話も進むでしょう」と語る。

現状の法規制については、次のように解説する。

「現在、ドローンに適用されうる法律として考えられるのは航空法です。ドローンは、航空法施行規則が定める『模型飛行機』にあたると思われます。

『模型飛行機』には、『何人も、航空交通管制圏、航空交通情報圏、高度変更禁止空域又は航空交通管制区内の特別管制空域における航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのあるロケットの打上げその他の行為で国土交通省令で定めるものをしてはならない』という航空法99条の2第1項が適用されます。

つまり、航空機の運航に危険を及ぼす空域での飛行が禁止されます。具体的には、航空路管制圏等以外の場所でも、上空250メートル以上の高さを飛行させることが禁止されています。違反した場合は、50万円以下の罰金が科されます」

ただ、ドローンは通常、250メートル未満の低空で飛ばすことが想定されており、今回も250メートル以上の高さではなかった可能性がある。そうなると、たとえ首相官邸の上にドローンを飛ばしても、航空法の規制を受けないことになる。そこで、今後は、250メートル未満の場合も規制対象になる可能性があるという。

「政府機関や自治体などの公共的な建築物の上空などでドローンを飛ばす行為が規制される可能性があります。

ただ、銃刀法で、銃の所持を禁じているように、ドローン自体を禁止すべきではないでしょう。行き過ぎた規制にならないように配慮してほしい」と語る。

●免許や保険制度の導入が論点になる可能性も

また、ロボットと法制度の問題を研究している赤坂亮太・慶応義塾大学環境情報学部講師(非常勤)も「ドローン規制論はすでにアメリカなど諸外国で起きていますので、こういった事件が起こったことで、日本でも規制の議論が加速する可能性があります」と語る。

法規制の論点として、次のように指摘する。

「航空法、道路交通法による『事前規制』と、民法などによる『事件発生後の対応』の両面から考える必要があります。たとえば航空法で、ドローンのような『模型航空機』の扱いをより厳しくするという点があるでしょう。

また、道路交通法によって公道上空の交通ルールを整備するといったことや、免許を必要とするということもあるでしょう。さらには、製造物責任など、責任の明確化や自賠責保険のような強制的な保険による損害補償制度が必要ではないか、という点も考えられます」

ただ、赤坂氏は「本当に新たな規制が必要かどうかは、慎重な議論が必要です」と主張する。

「現行法でも、公道上空の使用には規制があるわけです。まずは現行法上の規制の運用を行いつつ、整備されてないルールを補充する必要があります。ドローン自体を違法とするような事態は避けたいところです」

また、ドローンからセシウムが検出された件については「本来、技術をいかに規制するかという問題で、そのような極端に悪質な事例のみを考慮すべきかどうかは、議論が分かれそうです。ただ、より大規模なテロなどに用いられる可能性が明らかになったという影響は、大きいのでないでしょうか」と述べた。

(弁護士ドットコムニュース)

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