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「盲導犬を蹴った」「虐待だ!」動画を拡散、駅で待ち伏せ…ネット私刑の法的リスク
2017年11月01日 09時48分

10月上旬、駅のホームで盲導犬を連れた男性が盲導犬を蹴り上げたように見える動画が、ツイッター上で拡散した。10月23日、公益財団法人「アイメイト協会」は、該当する男性にもヒアリングをするなどして、「『蹴った』『虐待』していたという痕跡も、また、本人の周囲からも、そうした事実は一切認められませんでした」とする調査結果を公表するとともに、男性に向けられた「ネット私刑」の問題についても言及した。

アイメイト協会のHPによれば、「Aさん(男性)に犬を蹴る意図はなかったこと、あくまで方向を修正する意図であった」として、虐待行為は否定。ただ「協会の指導と異なる間違った方法をとってしまったことを認識し、深く反省していることを確認しました」と付け加えた。

また動画拡散の直後、「『和光市駅で該当者を突き止めるべく張り付いている人が複数いる』との情報が入りました」として、協会は次のように警告を発した。「もしも本人に原因があったとしても、動画をネット上にさらし、『キャンペーン』 と称して個人を攻撃する行為は、いわゆる『ネット私刑』となります。個人に対する一方的な暴力であり、許されない行為であると考えます」。

協会側は、犬の健康状態に問題がなかったことを確認したそうだ。このような動画をアップすることに法的な問題はないのだろうか。また、男性を特定するために、駅に集まってしまうような行為にはどのような法的な問題があるのか。伊藤諭弁護士に聞いた。

10月上旬、駅のホームで盲導犬を連れた男性が盲導犬を蹴り上げたように見える動画が、ツイッター上で拡散した。10月23日、公益財団法人「アイメイト協会」は、該当する男性にもヒアリングをするなどして、「『蹴った』『虐待』していたという痕跡も、また、本人の周囲からも、そうした事実は一切認められませんでした」とする調査結果を公表するとともに、男性に向けられた「ネット私刑」の問題についても言及した。

アイメイト協会のHPによれば、「Aさん(男性)に犬を蹴る意図はなかったこと、あくまで方向を修正する意図であった」として、虐待行為は否定。ただ「協会の指導と異なる間違った方法をとってしまったことを認識し、深く反省していることを確認しました」と付け加えた。

また動画拡散の直後、「『和光市駅で該当者を突き止めるべく張り付いている人が複数いる』との情報が入りました」として、協会は次のように警告を発した。「もしも本人に原因があったとしても、動画をネット上にさらし、『キャンペーン』 と称して個人を攻撃する行為は、いわゆる『ネット私刑』となります。個人に対する一方的な暴力であり、許されない行為であると考えます」。

協会側は、犬の健康状態に問題がなかったことを確認したそうだ。このような動画をアップすることに法的な問題はないのだろうか。また、男性を特定するために、駅に集まってしまうような行為にはどのような法的な問題があるのか。伊藤諭弁護士に聞いた。

●肖像権侵害、プライバシー侵害、名誉毀損の恐れ

「今回のケースで言えば、肖像権の侵害、名誉毀損、プライバシー侵害に該当する可能性があります。

一般の私人であっても、その容貌などをみだりに公表されない権利(肖像権)を持っています。今回の動画は、この男性を特定可能な状態で撮影し、アップロードされていることから、男性の肖像権を侵害するものと考えられます。

また、場合によっては名誉毀損に当たる可能性があります。真実の内容であっても、それが他人の名誉を毀損する内容であれば成立します。さらに個人の情報を勝手に公開する行為はプライバシー権の侵害になります。他人の権利を侵害すれば損害賠償義務を負う可能性があります。

また、投稿や動画を引用したり、リツイート、シェアしたりしただけであっても、権利侵害があったとして、賠償義務が発生することもあります」

●「ネット私刑」の問題

なお今回の件では、男性を特定するため、駅に集まる人たちもいたようだ。

「男性を特定するために駅に集まる行為については、それ自体を法的な問題に問うことは困難です。ただ、そこで得た情報を公開すれば、動画のアップと同様に、プライバシー権の侵害や名誉毀損の問題になります。情報取得の方法に問題があれば、さらに別の責任が発生することもありえます」

アイメイト協会側が指摘する「ネット私刑」はなぜ起こってしまうのだろうか。

「今回は、動画を見て『盲導犬が虐待されている』と判断し、義憤によって男性の行動を非難し、一部の人たちが行き過ぎた行動を取っているのでしょう。行動を起こしている人々は、自分の行為に否はないと考えている。むしろ、いいことをしているんだと考えている可能性すらあります。

しかし動画は、現実の状況や投稿者の意図とは関係なく、被撮影者の権利侵害が拡散してしまう可能性をはらんでいます。ネット上の名誉毀損は、された方の被害が甚大になってしまう一方、加担している側は自分が安全圏にいるかのような錯覚をし、安易に、かつ行き過ぎた行為をしがちであるという特徴があります。

ネット上では、軽率な行為が思わぬ結果を呼びかねないことを肝に銘ずる必要があります」

(弁護士ドットコムニュース)

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