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新入社員の履歴書を回覧して「かわいい」か評価、あだ名の命名も…問題ない?
2018年10月31日 09時40分

新入社員の履歴書を回し読みして、歓迎会で容姿を評価、芸能人に例えてあだ名をつけているーー。ツイッターにこんな投稿が寄せられている。

投稿者によれば、勤め先の上層部が、新入社員の入社前に履歴書を回し読みし、フェイスブックなどを確認。歓迎会の陰で容姿の評価を行ったり、芸能人に例えた「裏あだ名」をつけたりしているという。

本来、履歴書は採用活動のために利用されるもののはずだが、採用活動とは関係なく社内で回し読みするような行為は、個人情報保護法などに抵触しないのだろうか。また、職場のハラスメントになる可能性はないのか。岩城穣弁護士に聞いた。

新入社員の履歴書を回し読みして、歓迎会で容姿を評価、芸能人に例えてあだ名をつけているーー。ツイッターにこんな投稿が寄せられている。

投稿者によれば、勤め先の上層部が、新入社員の入社前に履歴書を回し読みし、フェイスブックなどを確認。歓迎会の陰で容姿の評価を行ったり、芸能人に例えた「裏あだ名」をつけたりしているという。

本来、履歴書は採用活動のために利用されるもののはずだが、採用活動とは関係なく社内で回し読みするような行為は、個人情報保護法などに抵触しないのだろうか。また、職場のハラスメントになる可能性はないのか。岩城穣弁護士に聞いた。

●様々な問題に発展する可能性

「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が2005年に施行されたこともあって、最近では『個人情報の保護』が声高に叫ばれるようになりました。

個人情報保護法は、『個人情報取扱事業者』に個人情報の適正な取扱いをさせることにより、プライバシーを含む個人の権利利益の侵害を未然に防止することを目的としており、『個人情報取扱事業者』は『個人情報データベース等を事業に用いる者』(国、地方公共団体等以外)とされています。

以前は5000人分を超える個人情報を取り扱う事業者に適用されましたが、2017年の法改正により、5000人分以下の個人情報を取り扱う事業者にも適用されるようになりました」

今回の場合はどうなるのか。

「新入社員の同意のない目的外使用にあたるでしょうから、『利用目的による制限』(第16条)に抵触する可能性があります。また、個人情報取扱事業者には、『安全管理措置の実施』(第20条)や、『従業者の監督』(第21条)が義務付けられており、これらの点からも問題になる可能性があるでしょう」

他にはどんな問題になりうるのか。

「新入社員の履歴書には、氏名、生年月日のほか、顔写真、学歴、職歴、保有免許、賞罰などの個人情報が多数記載されており、これらが当該新入社員のプライバシーとして保護されなければならないことは当然であり、会社や関係者がこれに違反した場合は、民法上の不法行為や刑法上の名誉毀損罪が成立する場合があります。

今回、新入社員の採用担当者が履歴書を回覧することは問題ありませんが、それを超えて『勤め先の上層部』の人たちが新入社員の入社前に履歴書を回し読みしたり、フェイスブック等を確認したりすることは、新入社員のプライバシー侵害として違法となる可能性があります。

また、歓迎会の陰で容姿の評価を行ったり、芸能人に例えた『裏あだ名』をつけたりすることは、それ自体が違法とまではいえませんが、それが職場環境を悪化させ、当該新入社員を不愉快な気持ちにさせるような場合は、いじめやセクシャルハラスメントに該当して違法となる場合もあると考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

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