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横断歩道で「歩行者のお辞儀」は必要?SNSで賛否分かれる…警視庁「指導していない」「ぬくもりのある社会願う」
2025年03月24日 10時01分
#お辞儀 #横断歩道でお辞儀

横断歩道を渡り終えた子どもが振り向いて、停止してくれた自動車のドライバーにお辞儀をする。SNSやメディアがこのような様子を「ほほえましい光景」として取り上げることがある。

一方で、「わざわざお辞儀をする必要はない」というのも、またよくある反論だ。横断歩道で停止するのは、自動車側の義務であり、「歩行者優先」が交通ルールの原則だからだ。

お辞儀をすることで、ドライバー側が「譲った」という意識になれば、歩行者優先が軽視されるおそれも考えられる。

「お辞儀」について、警視庁は弁護士ドットコムニュースの取材に「子どもに対する交通安全教育の一つとして、横断歩道で停止した運転手に対してお辞儀をするように明確な指導はしておりません」と回答した。

横断歩道を渡り終えた子どもが振り向いて、停止してくれた自動車のドライバーにお辞儀をする。SNSやメディアがこのような様子を「ほほえましい光景」として取り上げることがある。

一方で、「わざわざお辞儀をする必要はない」というのも、またよくある反論だ。横断歩道で停止するのは、自動車側の義務であり、「歩行者優先」が交通ルールの原則だからだ。

お辞儀をすることで、ドライバー側が「譲った」という意識になれば、歩行者優先が軽視されるおそれも考えられる。

「お辞儀」について、警視庁は弁護士ドットコムニュースの取材に「子どもに対する交通安全教育の一つとして、横断歩道で停止した運転手に対してお辞儀をするように明確な指導はしておりません」と回答した。

●歩行者の年齢別死傷者について「7歳の事故」が最も多い

警察庁によると、2019年〜2023年まで5年間の交通事故のうち、歩行中の小学生の死者・重傷者は「2011人」にのぼる。小学1年生(472人)と2年生(493人)が飛び抜けて多く、小学6年生が最も少ない(162人)。

同じ5年間の東京都内における歩行者の年齢別死傷者数について、警視庁は「7歳の事故」が最も多いとしている。

政府広報オンラインでは、小学校1年生の歩行中の交通事故は「横断中」に多く起こっているとされている。

子ども1人だけで出歩くようになる新1年生の交通事故のリスクはよく指摘されており、痛ましい事故を防ぐための教育や発信は非常に重要だ。

政府広報オンラインは次のように注意喚起している。道路に飛び出しがちな子どもたちに、教える必要はあるだろう。

・横断歩道橋、横断歩道や信号機が近くにあるときは、そこまで行って横断すること。
・横断する前に、「必ず立ち止まる」「右左(みぎひだり)をよく見る」「車が止まっているのを確認する」こと。
・横断歩道では、手をあげる、手を差し出す、運転者に顔を向けるなどして横断する意思を表示すること。
・信号が青のときも、必ず右左を見て、車が止まっていることを確認してから横断すること。
・横断中も、右左を確認しながら歩くこと。

ただ、地域によっては、子どもたちに、横断歩道を渡る際に停止したドライバーに「お辞儀」をすることを指導しているようだ。

画像タイトル 横断歩道をわたる子どもたち(YUMIK / PIXTA)写真はイメージです

2022年4月8日、テレビ朝日のネット記事(「ありがとうございます」一時停止の車にお辞儀 新1年生が横断歩道で実践)は、千葉県四街道市の新1年生たちが、警察から「止まってくれた車の運転手さんにお辞儀をします」との声かけ指導をしたことを伝えている。

この報道が波紋を呼ぶことになり、それ以前以後も「歩行者のお辞儀」は賛否のわかれるテーマとなっている。

●「1秒でも早く離れてほしい」「頭下げられると良い気持ち」

信号のない横断歩道は、そもそも歩行者優先(道路交通法38条)で、運転者には横断歩道手前での減速や停止の義務がある。

とはいえ、歩行者が、渡り出す前に手をあげたり、軽く会釈したりして運転手とコミュニケーションをとることは、安全につながる行動と言えよう。

一方で、渡り終えたあとのお辞儀は、行動としては「マナーの範疇」にあるのではないだろうか。

「お辞儀」について、ネットやSNSでは、このような反対意見がある。

「横断歩道で子供がお辞儀するやつ、そこまで礼儀を要求するつもりはないが、運転者からすると『こちらを視認している』という意思表示をしてくれる点は安心につながる」

「渡りきった所で出発しようとした途端、急に振り返るので『戻って来るのか?』と思い 急ブレーキ! ヒヤヒヤします。実際、急に振り返った瞬間バランス崩して車道に倒れ込んで来た子どももいました」

「個人的には横断歩道でお辞儀してほしくないな。1秒でも早く横断歩道から遠ざかって欲しい。ともかく離れて欲しい」

「そりゃまぁ、私もありがとって会釈はするけど、お辞儀させなくてよくない…?むしろいきなり振り返って頭下げるの危ないし…」

続いて、賛成意見は次のようなものだ。

「うちの地域の小中学生はほとんどの子が横断歩道を渡り終えてから立ち止まってこちらに向かって頭下げてて良い気持ちになる」

「車を運転していると、横断歩道で小学校低学年の女の子が手を挙げていた。車を止めて渡らせようとすると、女の子は渡る前にしっかりとしたお辞儀をし、手を挙げたまま横断歩道を渡り、渡りきった後振り返ってもう一度丁寧なお辞儀をして去っていった。日本の教育って凄いなと感じた瞬間でした」

●警視庁「『ありがとう』自然に出るぬくもりある社会願う」

全国各地の警察では、子どもたちに向けた交通安全の取り組みに力を注いでいる。弁護士ドットコムニュースが取材を申し込んだところ、警視庁が回答した。

画像タイトル 警視庁(gandhi / PIXTA)

——警視庁では子どもに向けた交通安全の指導の取り組みで、横断歩道で停車した運転手にお辞儀することも指導していますか

「警視庁として、子どもに対する交通安全教育の一つとして、横断歩道で停止した運転手に対してお辞儀をするように明確な指導はしておりません。

ただし、横断歩道を渡る際に、大きく手を上げる、横断中も車のほうを見るなど、自身の存在をアピールして、安全に道路を横断するように指導しています。

実際に、横断歩道を横断中の歩行者を被害者とする交通事故が多く発生している現状を見れば、法律に定められた運転手の義務についての交通安全指導だけではなく、歩行者側も自身の安全を守るための交通行動をとることは交通事故防止に有効であると考えています」

続いて、横断歩道で止まった運転手に、お辞儀とともに感謝を伝える行為が必要なのかどうかも尋ねた。「一般論として」という前置きで、警視庁は次のように回答した。

「なお、一般論として、心身ともに成長段階にある子どもにとって、周囲の人たちに感謝の気持ちを伝えることは、相手に対する思いやりを持った大人に成長する糧になるのではないかと考えています。

『ありがとうございます』という言葉や行動が、子どもたちから自然に表現されるようなぬくもりのある社会になることを願っています」

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