6177.jpg
築50年弱のボロアパート、建て替えを阻む“最後の住人”に大家イライラ 「損害賠償請求できないのか?」
2024年12月07日 09時23分
#立ち退き #賃貸借契約

新しいアパートの建築遅れに伴う収益の損失分を損害賠償請求したい──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の大家は、アパートが築50年弱で老朽化も進んできたため、取り壊して新しいアパートを建築したいと考えています。しかし、アパートにまだ住んでいる最後の1人が「のらりくらり」として出ていってくれないようです。

その住人に家賃滞納などの問題はなく、相談者が立退料として50万円を提示しましたが、退去してもらえませんでした。住人に出てもらわないと新築できませんが、立ち退いてもらうために裁判をするとなると時間がかかることにも頭を悩ませています。

相談者としては、新しいアパートの建築が遅れたことに伴う収益の損失分を、立ち退かない住人に損害賠償請求できないかと考えているようですが、可能なのでしょうか。関戸淳平弁護士に聞きました。

新しいアパートの建築遅れに伴う収益の損失分を損害賠償請求したい──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の大家は、アパートが築50年弱で老朽化も進んできたため、取り壊して新しいアパートを建築したいと考えています。しかし、アパートにまだ住んでいる最後の1人が「のらりくらり」として出ていってくれないようです。

その住人に家賃滞納などの問題はなく、相談者が立退料として50万円を提示しましたが、退去してもらえませんでした。住人に出てもらわないと新築できませんが、立ち退いてもらうために裁判をするとなると時間がかかることにも頭を悩ませています。

相談者としては、新しいアパートの建築が遅れたことに伴う収益の損失分を、立ち退かない住人に損害賠償請求できないかと考えているようですが、可能なのでしょうか。関戸淳平弁護士に聞きました。

●契約が続いている以上、立ち退きを求めるのは容易でない

——アパートの住人は家賃滞納などをしていませんが、大家から出ていくよう言われたら従わないといけないのでしょうか。

賃貸借契約が続いている以上、賃借人(アパートを借りている住人)には物件に住む権利がありますので一方的に立ち退きを求めることはできません。立ち退きを求めるには賃貸借契約を終了させる必要があります。

本件では家賃滞納等の問題はなく、契約を一方的に解除することはできませんので、(1)合意解約する方法、(2)契約期間満了をもって契約を終了させる方法のいずれかによるしかありません。

(2)については期間満了の1年前から6カ月前までに更新拒絶の通知(期間の定めのない場合には6カ月前までに解約申入れ)をしておく必要があります。

加えて、契約を終了させるだけの「正当事由」が求められます。アパートの老朽化は「正当事由」になり得ますが、賃借人が居住しているケースでは別途立退料の支払いが求められることがほとんどです。

──建て替えたい大家としてはどのように動くべきでしょうか。

まずは話し合いでの解決を目指すことになりますが、大家としては、賃借人の対応を見ながら、解決に要するコスト(立退料や手続費用等)と期間のバランスも考えて、賃借人に提示する条件や訴訟へ移行するタイミングを検討していくことになります。

——新しいアパートから得られるはずだった収益の損失分を立ち退かない住人に損害賠償請求することは可能なのでしょうか。

賃借人は賃貸借契約によって適法に居住しているわけですから、交渉が難航してアパートの建て替えが遅れたからといってその損害賠償を賃借人に求めることはできません。

契約終了後も賃借人が違法に居座っているような場合には損害賠償を求める余地はありますが、逸失利益については因果関係や損害額の立証が難しい場合もあります。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る