レトルトカレーの切り口が開けにくく、力を入れて開けたところ、中身が飛び散ってしまった――。そんな悲しい相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者によると、勢いよく飛び出したカレーは新しい壁紙に付着してしまったとのこと。賃貸物件のため、大家から壁紙の張り替え費用を請求される可能性があるそうです。
レトルトカレーのパッケージには「開封時の飛び散り注意」などの注意書きはなく、相談者はメーカーに対して責任を問いたいと考えています。はたして、その主張は認められるのでしょうか。大和幸四郎弁護士に聞きました。
●借主に「過失」があるといえる
――壁紙の張り替え費用をレトルトカレーのメーカーに請求することはできるでしょうか。
なかなか難しい問題です。たしかに「開けにくい」という注意書きがないので、メーカーに過失があり、張り替え費用を請求したいという心情は理解できます。
しかし、今回のようなケースは、まさにアクシデントであり、メーカーに賠償責任を負うまでの過失はないと思います。開けにくいのであれば、ハサミを使って開ければよかったはずで、相談者側にも過失があるといえます。
万が一、メーカーが賠償責任を負うことになったとしても、その額は少ないと思います。
アメリカでは、マクドナルドのドライブスルーで買ったホットコーヒーを膝の上にこぼしてヤケドを負ったとして、客が裁判を起こして、数億円の支払いが命じられた事例があります(のちに和解)。
このような高額の損害賠償のことを「懲罰的損害賠償」といいますが、日本国内では原則として認められていません。ただ、もしも今後、訴訟社会化が進んでいけば、今回のようなケースも問題となるかもしれません。
●張り替え費用も出さなければならない
――結局、借主は張り替え費用を出さないといけないでしょうか。
今回のケースは借主に過失があるといえます。このような場合、借主は退去時などに張り替え費用を出さなければならないと思います。
問題はその額です。壁紙をすべて張り替える必要はないでしょうから、借主と大家との話し合いで相当な額に落ち着くと思います。
なお、通常の使用による壁紙の劣化の場合、壁紙の交換費用は原則として、賃貸人である大家が負担することになっています。
壁紙は家を普通に使っていてもある程度は汚れますので、賃貸借契約の期間によっては、カレーで汚してしまっても、壁紙代の全部または一部を負担しなくてすむ可能性があります。
また、入居した際に敷金を支払っている場合、壁紙の張り替えにかかる費用のうち、借主の負担部分は敷金から差し引かれます(民法622条の2)。