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雅叙園が休館、180組の婚礼カップルに影響も、迷惑料は「たった10万円」と批判 賠償請求できる?
2025年03月03日 10時14分

老舗の結婚式場「ホテル雅叙園東京」(東京・目黒区)が、今年10月以降「休館」すると発表して波紋を広げています。

雅叙園によりますと、10月以降に結婚式関係の予約は約180組入っているとのことです。結婚式関係の予約をしていた方々には日程変更を申し出ているそうですが、もし日程変更がむずかしい場合は、申込金20万円を返金したうえで「迷惑料」として10万円を支払うとしています。

SNSでは、予約していたという人から、「10万円渡すから許してねってあり得ないよ」など、「一方的なキャンセル」に怒りの声が寄せられています。

なお、2月17日には「全館をリニューアル工事する」と発表していましたが、翌18日には「建物所有者との定期建物賃貸借契約が満了となるため」と少し説明が変わっています。

結婚式の予約をした客は、会場に対して賠償請求することは可能なのでしょうか。ブライダル関係の法律問題に詳しい川村勝之弁護士に聞きました。

老舗の結婚式場「ホテル雅叙園東京」(東京・目黒区)が、今年10月以降「休館」すると発表して波紋を広げています。

雅叙園によりますと、10月以降に結婚式関係の予約は約180組入っているとのことです。結婚式関係の予約をしていた方々には日程変更を申し出ているそうですが、もし日程変更がむずかしい場合は、申込金20万円を返金したうえで「迷惑料」として10万円を支払うとしています。

SNSでは、予約していたという人から、「10万円渡すから許してねってあり得ないよ」など、「一方的なキャンセル」に怒りの声が寄せられています。

なお、2月17日には「全館をリニューアル工事する」と発表していましたが、翌18日には「建物所有者との定期建物賃貸借契約が満了となるため」と少し説明が変わっています。

結婚式の予約をした客は、会場に対して賠償請求することは可能なのでしょうか。ブライダル関係の法律問題に詳しい川村勝之弁護士に聞きました。

●結婚式場との間でどんな契約が結ばれるのか

——通常、結婚を予定しているカップルと結婚式場との間には、どのような契約が結ばれているのでしょうか。

通常、カップルが約束した日時で結婚式や披露宴会場を利用することや、結婚式や披露宴のための各種サービスを受けること、これらに対して一定の料金を支払うという内容での契約が締結されます。

具体的には、特定の日取りでの挙式日程や会場の確保、ゲスト人数、衣装、披露宴での料理やサービス内容等、結婚式や披露宴に関する様々な合意をしています。

多くの結婚式場では、婚礼約款や規約というものが定められており、その約款等で定められている内容が契約内容になっています。

●契約が履行できなかった場合、どうなる?

——今回のように、式場側の都合で一方的に契約が履行されなかった場合、式場の責任はどうなるのでしょうか。

契約不履行について、契約書や約款等で定められている条項があれば、それに従います。

式場側には、契約で約束した内容が果たせないことになりますので、債務不履行責任が発生します。

具体的には、挙式等が行えないことによって生じた損害の賠償責任を負うことになります。

●「迷惑料」10万円は妥当なのか?

——おそらく結婚式一組に対して、数百万円の契約と思われますが、今回、「迷惑料」として10万円が渡されるとのことです。契約の規模に対して、妥当な金額なのでしょうか。

迷惑料は、式場側の一定の誠意といえますが、金額については、契約の内容や規模によっては、不十分なケースもあるでしょう。

今回の件は、1年以内の挙式予定等が180組入っており、一定程度準備が進んでいたことでしょう。

また、希望していた日程で他の会場を確保することが難しくなっているカップルも多いと予想されます。

このような状況でのカップルの心情からすると、迷惑料の金額は、納得できるものではないでしょう。

法的には、今回の迷惑料が賠償金の趣旨として支払われるものか否かにもよります。

賠償金の趣旨を含まないものであれば、カップルは、式場側に対して、迷惑料のほかに、実際に生じた損害の賠償請求をすることが可能です。

仮に、賠償金の趣旨で迷惑料が支払われたのであれば、カップルに生じた損害が10万円を超えるか否かで、迷惑料の金額の妥当性は異なることになります。

●損害賠償の具体的な内容は?

——仮に損害賠償を請求するのであれば、どのような費目についての請求が考えられるでしょうか。また、それぞれの請求は認められるものなのでしょうか?

まず、挙式予定日を前提に既に支出しており、使用できなくなったものについての費用相当額やキャンセル料が考えられます。

例えば、挙式予定日にレンタルをしていたドレスや装飾品の代金、これらのキャンセル代等です。

状況によっては、ゲストのために手配をしていたホテル代や交通費、それらのキャンセル代、他の会場を探すための諸費用も損害項目として考えられます。

また、慰謝料の請求も考えられます。

慰謝料については、カップルの状況も様々なため、必ず認められるものとはいえませんが、前日にキャンセルされたケースで、カップルそれぞれに70万円の慰謝料を認めた裁判例もあります。

慰謝料の具体的な金額については、一律で判断されるものではなく、挙式日までの残りの日数、準備の進行程度、他会場の確保等、当該カップルのケースごとに判断がなされます。

●「大切な一日にしたいという方々の思いに応える、誠意ある対応を」

——川村弁護士は以下のように続けた。

今回の件は、ウエディング業界にとって、またこれから結婚式や披露宴を考える人たちに大きな影響を与えるものです。

結婚式や披露宴に対する考え方が多様化し、様々な選択肢がある中でも、結婚式に憧れを抱いている方々、結婚式や披露宴を大切な一日にしたいという方々の想いに応えるため、期待を裏切らない、誠意ある対応が望まれます。

式場の経営が困難になった場合や、何らかの理由で予定していた会場が使えなくなる事態が生じた場合でも、最大限カップルに寄り添った対応をしていただけることを願っています。

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