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現行制度は憲法違反? 未婚のシングルマザーにも「寡婦控除」を認めるべきか
2013年11月11日 16時35分

相続格差の違憲判決をきっかけに「婚外子差別」の問題が注目を集めているが、結婚したことがない母親とその子どもが背負わされているハンデは、他にもある。その一つが「寡婦控除」を受けられない、という問題だ。

「寡婦控除」は、婚姻歴のあるひとり親家庭の女性が、所得税を収めるときに適用される優遇措置だ。一度も結婚したことがない親はこの控除が受けられず、税金だけでなく、それに連動して、自治体における保育料や公営住宅の家賃まで高くなる。

控除制度を変えるためには税法改正が必要だが、保育料や公営住宅の家賃については、自治体レベルでも調整できる。そこで、婚姻歴のないひとり親家庭が控除を受けたと「みなし適用」して、保育料や公営住宅の家賃を割り引く取り組みが、自治体単位で広がっているという。

朝日新聞がこのほど計126の自治体に対して行った調査によると、9月下旬時点で1県11市がみなし適用を実施していたそうだ。自治体で広がる「みなし適用」の動きや、そもそもの「格差」をどう見るべきなのだろうか。家族をめぐる法律問題にくわしい楓真紀子弁護士に聞いた。

相続格差の違憲判決をきっかけに「婚外子差別」の問題が注目を集めているが、結婚したことがない母親とその子どもが背負わされているハンデは、他にもある。その一つが「寡婦控除」を受けられない、という問題だ。

「寡婦控除」は、婚姻歴のあるひとり親家庭の女性が、所得税を収めるときに適用される優遇措置だ。一度も結婚したことがない親はこの控除が受けられず、税金だけでなく、それに連動して、自治体における保育料や公営住宅の家賃まで高くなる。

控除制度を変えるためには税法改正が必要だが、保育料や公営住宅の家賃については、自治体レベルでも調整できる。そこで、婚姻歴のないひとり親家庭が控除を受けたと「みなし適用」して、保育料や公営住宅の家賃を割り引く取り組みが、自治体単位で広がっているという。

朝日新聞がこのほど計126の自治体に対して行った調査によると、9月下旬時点で1県11市がみなし適用を実施していたそうだ。自治体で広がる「みなし適用」の動きや、そもそもの「格差」をどう見るべきなのだろうか。家族をめぐる法律問題にくわしい楓真紀子弁護士に聞いた。

●「法律婚」を経ていなければ「寡婦控除」の適用がない

「耳慣れない言葉ですが、『寡婦』とは、法律婚を経たうえで、死別・離婚によりシングルとなった女性を指します。『寡婦控除』は、寡婦の所得の一部を控除して、所得税を軽減する制度です(所得税法第81条)」

一度も結婚していないシングルマザーが、控除を受けられないのはなぜだろうか。

「寡婦控除が適用されるためには、『法律婚』を経た上で、死別または離婚によりシングルとなることが要件です。そのため、一度も結婚したことがない『非婚』のシングルマザーには、この寡婦控除が適用されないのです。

寡婦控除が適用されないと、所得税だけでなく、住民税の負担も重くなります。さらに、所得が高いと扱われることにより、自治体によっては、保育園の保育料や学童保育の利用料、公営住宅の賃料が増額されたり、住宅の入居資格がなくなるなど、様々な不利益を受けることになります」

●婚姻歴のありなしで年間20万円の格差が!?

たとえば、いくらぐらいの不利益を受けるのだろうか。

「東京都八王子市の試算によると、『年収201万円で、2歳の子どもがいる』というシングルマザーのケースでは、婚姻歴がある場合と比べて、非婚のシングルマザーは、所得税・住民税・保育料の負担が年額20万円以上も多かったということです。

母子家庭の収入は、一般の世帯の収入より低いと言われていますが、その中でも、非婚の母子家庭の世帯収入は、さらに低いと言われています。非婚のシングルマザーは、寡婦控除の適用がないことにより、さらなる経済的苦境に陥ることになります」

わずか年収200万円の世帯で、20万円もの格差があるとは……。控除が受けられないせいで、生活が破たんするというケースも、現実にあるのではないだろうか。楓弁護士は、続けてこう述べる。

●非婚の母に『寡婦控除』が適用されないのは憲法14条違反

「寡婦控除には、経済的に苦しいひとり親世帯を救済するという目的があります。非婚の母の経済事情は、ほかの母子家庭と変わらないどころか、より深刻だと言われています。それなのに、『一度も結婚をしたことがない』というだけの理由で、『寡婦控除』の適用を受けられず、不利益を受けるのは、不合理な差別であると言わざるを得ません。

親を選ぶことができない子どもの立場からみても、このような差別は不合理です。このように、非婚の母に『寡婦控除』の適用を認めない現在の制度は、法の下の平等を保障した憲法第14条に違反するものと考えられます。日弁連も同様の見解です」

●税制改正で根本的に格差をなくすべき

自治体にじわりと広がる「みなし適用」の動きを、楓弁護士はどのように評価するのだろうか。

「いま、自治体には、非婚のひとり親家庭にも『寡婦控除』を『みなし適用』することにより、保育料や公益住宅の家賃の負担を減らし、死別や離別のひとり親家庭との格差をなくそうという動きがあります。

それ自体はとても望ましいことだと思われます。しかし、実施している自治体がとても少なく、内容に差があることを考えると、現状はまだまだ不十分と言わざるを得ません」

たしかに、まだまだ実施例は少ないし、それで格差が根本的に解決するわけでもない。楓弁護士は希望を込めて、次のように話していた。

「そこで、寡婦控除のみなし適用を全国レベルに広げると同時に、立法で税制を改正し、非婚のひとり親にも寡婦控除の適用を認める措置を講じるべきだと思われます。

婚外子相続格差を是正するための民法改正案は、今国会での成立が目指されています。寡婦控除の適用についても、いずれは法改正され、差別が是正されることを期待したいものですね」

(弁護士ドットコムニュース)

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