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ギュウギュウ詰め、破裂しそうな「コンパクトカー」…大柄「3兄弟」の帰省で起きた悲劇
2020年02月07日 10時18分

「ギュウギュウ詰めの車に乗って事故を起こしたとき、保険の受け取りなどで不利になるのでしょうか」。このような相談が寄せられました。

相談者の男性は、年末年始に家族で集まるため地元に帰省。家族構成は、父、母、兄、男性、弟の5人です。

外出には父母が最近買い替えたコンパクトカーに乗りました。「私たち家族は全員大柄で、男4人の平均身長は180センチです。父が運転して、私を含めて3兄弟が後部座席に乗りました。後部座席では3人の体が完全に密着する状態で、ほとんど身動きが取れませんでした」

「ギュウギュウ詰めの車に乗って事故を起こしたとき、保険の受け取りなどで不利になるのでしょうか」。このような相談が寄せられました。

相談者の男性は、年末年始に家族で集まるため地元に帰省。家族構成は、父、母、兄、男性、弟の5人です。

外出には父母が最近買い替えたコンパクトカーに乗りました。「私たち家族は全員大柄で、男4人の平均身長は180センチです。父が運転して、私を含めて3兄弟が後部座席に乗りました。後部座席では3人の体が完全に密着する状態で、ほとんど身動きが取れませんでした」

●乗車定員は守っていたが「満員電車級の後部座席」

コンパクトカーの乗車定員は守っていましたが、男性は「東京の満員電車に匹敵するほど身動きすら取れない車で事故を起こして怪我をしてしまったら、保険金の受け取りや、相手との交渉で不利になるのでは」と不安になったそうです。

このように車内がパンパンになるほど身を寄せ合う状態で車に乗ることは、道交法違反などの罪になりえるのでしょうか。仮に事故にあった場合、密集状態だったことを理由に不利益を被ることはあるのでしょうか。中村友彦弁護士に聞きました。

●乗車定員を守っていれば、道交法違反ではない。しかし…

ーーコンパクトカーの後部座席に乗車した3人が肩を寄せ合い、身動きすら取りにくい状態に法的な問題はあるでしょうか。

コンパクトカーの乗車定員を守っているならば、3人が肩を寄せ合い、身動きが取りにくい状態で乗車していること自体は、道路交通法に違反することにはなりません。

道路運送車両の保安基準・道路運送車両の保安基準の細則を定める告示では、乗員1人あたり55キログラムで考えているようですが、仮に乗員の体重がそれを超えるからといって、違反として罰則があるということにはなりません。

ーーでは、この事例では法的な問題はないのでしょうか。

いえ、そうではありません。

身長180センチメートル程度の大柄の男性が2人後部座席に座り、母親も含めて3人が座ることで、密集状態になっていることから、運転者はミラーで後部を確認するのが難しい状態になっている可能性があります。

また、後部座席に座る3人の体重の総計によっては、車体の後部に負荷がかかり、運転の安定を欠いている可能性もあります(特にカーブなどでは運転の安定を欠く可能性が高いと思います)。

●運転を妨げてはいけない・場合によっては道交法に違反する可能性がある

ーーそれぞれ、どのような法律に抵触するのでしょうか

1つ目が、後部座席の確認が難しい場合には、道路交通法(55条2項)の規定に違反する可能性があります(「車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない」。罰則は、5万円以下の罰金か科料)。

さらに、この場合には、運転手以外の乗員についても、道交法55条3項に違反する可能性があります(「車両に乗車する者は、当該車両の運転者が前二項の規定に違反することとなるような方法で乗車をしてはならない」。罰則は2万円以下の罰金か科料)。

また、道交法55条の違反にならなくても、運転者は、車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければなりません(道交法70条)。

車体の後部に負荷がかかり、運転の安定を欠いているような乗車状態により、運転に影響が出ている場合には、特に慎重に運転することを求められ、交通事故等を起こせば、道交法70条違反になる可能性もあります。

●過失が大きいと判断される可能性もある

ーーこの状態で事故に遭った場合、不利益を被ることはありますか。

仮に交通事故に遭った場合には、上記乗車状態が運転に影響を与えており、当該影響が関係して交通事故が生じたのであれば、運転者は特に慎重に運転することを求められていたというべきですので、通常の事案よりも過失が大きいものとして扱われるという不利益を被る可能性があります。

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