7150.jpg
ロボットを「奴隷的に拘束」したら憲法違反? 「ロボット法」の可能性を研究者が議論
2014年11月29日 12時00分

自ら学習することができたり、海外の遠隔地から操作できたりするロボットが社会に入り込んできた場合、どのような法的問題が生じうるのか——。ロボットと法律の問題を考えるシンポジウム「ロボット法 202X年のロボットと社会制度」が11月22日、東京都内で開かれた。慶應義塾大学SFC・オープンリサーチフォーラムのセッションとして、議論がおこなわれた。

自ら学習することができたり、海外の遠隔地から操作できたりするロボットが社会に入り込んできた場合、どのような法的問題が生じうるのか——。ロボットと法律の問題を考えるシンポジウム「ロボット法 202X年のロボットと社会制度」が11月22日、東京都内で開かれた。慶應義塾大学SFC・オープンリサーチフォーラムのセッションとして、議論がおこなわれた。

●ロボットを海外から操作すると「入国」になるのか

シンポジウムには、ロボットや法律の研究者らが登壇。ロボット工学やバーチャルリアリティを専門にする稲見昌彦・慶大教授は「今の労働は肉体が拘束されているが、テレイグジスタンス(遠隔地にあるものを近くに感じながら操作)によって社会が変わる。離れた国から3交代制で働くことができるかもしれない」と語った。

ロボットの操作について、「複数の人が文楽人形のように1つのロボットを操ることになると、魂と肉体の関係が、1対1から、1対多、多対多に変わるかもしれない」と見通しを示した。

同じくロボット工学の専門家である舘暲(たち・すすむ)慶大教授は、制度的な問題として「テレイグジスタンスの場合、ロボットは日本にあるが、操作するのは海外にいる人というケースもある。今は許されていることだが、そのロボットを操作することは『入国』にあたらないのだろうか」と問題提起した。

また、ロボットが事故を起こした場合の法的責任を考える参考例として「自動運転車」を挙げ、「自動車自体の問題であれば製造物責任の問題になるし、道路がおかしいのであれば道路管理の問題、操縦の間違いであれば操縦者の問題になる、自動運転車を通じて、ロボットの問題を考えることができる」と語った。

●学習するロボットと「製造物責任」の関係は?

ロボット研究者側の意見に対し、赤坂亮太・慶大非常勤講師は法学研究者の立場から、人間とロボットの「境界線」をめぐる法的課題について、次のように指摘した。

「身体的なものをロボットが模倣する方向で動いていると思うが、はたして身体になりうるのか。たとえば憲法18条では、身体について、奴隷的な拘束は認められていないが、テレイグジスタンスが高度に発達して、ロボットが拘束された場合は身体性を犯されたことになるのかという疑問がある」

また、ロボット法政策研究者でキャンペナーの工藤郁子氏は「製造物責任は『無過失責任』で、ミスがなくても製造者側に責任を負わせるようになっている。しかし、無過失責任を採用する場合、ユーザーにとってメリットはあるが、メーカーにとって重い負担になる」とした上で、「ロボット自体が自分でユーザーとのインタラクションを経て学習すると、もしかしたら技術者が把握している範囲を超えて活動するかもしれない。そのまま製造物責任を導入していいかという問題があるだろう」と語った。

ロボットと法律をめぐっては、最近も海外でドローン(無人飛行機)に関する制度的な議論が起きており、今後、技術的な進化とともに、さまざまな社会的問題が生じる可能性がある。赤坂氏や工藤氏らは今後、「ロボット法学会」の設立に向けて準備を進めていくという。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る