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店員の7割が悪質クレーム被害「土下座を強要」「セクハラを制止され、ネットで中傷」
2018年05月26日 10時53分

外食や流通などの労働組合が加盟する「UAゼンセン」は5月25日、従業員が顧客から受ける悪質なクレームについてのアンケート調査と分析結果を公表した。分析にあたった関西大学社会学部の池内裕美教授は「悪質クレームに対する明確なガイドラインを設け、可能なら法律の制定を通して社会的に抑制すること」を対策として挙げた。

アンケートは2017年6月1日から同年7月14日までを期間とし、4万9876の回答があった。

外食や流通などの労働組合が加盟する「UAゼンセン」は5月25日、従業員が顧客から受ける悪質なクレームについてのアンケート調査と分析結果を公表した。分析にあたった関西大学社会学部の池内裕美教授は「悪質クレームに対する明確なガイドラインを設け、可能なら法律の制定を通して社会的に抑制すること」を対策として挙げた。

アンケートは2017年6月1日から同年7月14日までを期間とし、4万9876の回答があった。

●百貨店、家電関連が多い傾向

「業務中に来店客から迷惑行為に遭ったことがあるか」という問いに、全体の70.1%が「ある」と回答。業種別では百貨店が84.5%と最も高く、家電関連が82.9%と続いた。これについて、池内教授は「高額商品や知識を要する商品を取り扱い、消費者も購入に慎重な傾向。接客時間が長くなり、接客態度に対する苦情が発生しやすくなると考えられる」とした。

一方、スーパーマーケットでは迷惑行為に遭遇する割合が61.2%と低めだったが、それでも会計時のトラブルは多発しており、「態度が悪い」という趣旨の暴言・罵倒があることが指摘された。他の客や従業員が見ている前で延々と説教を受ける恥ずかしさが「精神的苦痛につながる可能性がある」(池内教授)という。

業務中に受ける迷惑行為の種類を複数回答で選んでもらったところ、「暴言」が66.5%で最多。「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」が39.1%、「説教態度」が36.4%、「威嚇・脅迫」が35.2%、「長時間拘束」が26.6%、「セクハラ行為」が13.4%などとなった。

●厳しい現場の実態「生の声」から浮き彫り

また、アンケートの自由回答欄にあった声は以下のとおりとなっている(一部を抜粋)。現場の従業員がいかに厳しい状況に置かれているか、想像に難くない。

<暴言>

・客のストレスのはけ口になっていて、「このババア」と言われた

・商品在庫が無い旨伝えたら、「売る気がないのか。私が店長だったらクビにするぞ」と延々怒られた

<セクハラ行為>

・男性から体型の事をしつこく言われた

・問いかけの際に腰のあたりをなでられて、とても不快だったが、お客様だと思い注意できなかった

<土下座の強要>

・商品不良のため返金した際、丁寧に謝罪しても納得されず、土下座での謝罪を要求された

<ネットでの誹謗中傷>

・女性従業員に触れるセクハラをする客を止めようとする男性従業員にクレーム。警察に通報したところ逆ギレされ、ネット掲示板で実名をあげて誹謗中傷をされ、拡散された

こうした問題を受け、UAゼンセンは「悪質クレーム(迷惑行為)が精神疾患や退職につながっている懸念がある。迷惑行為をなくし、サービスを提供する側と受ける側がともに尊重される社会を実現することが必要」と政府に具体的な対策を求めている。

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

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