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柏木由紀さんに「鼻整形した?」とSNSでツッコんだら名誉毀損? ネットにあふれる芸能人「整形指摘」
2024年02月21日 10時04分

芸能人を紹介するブログで「あごを整形したようだ」と書いてしまった——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられた。

相談者は自身のブログで、とある芸能人の比較写真を載せて「整形」に言及。断定する形で書いたことで、名誉毀損になるのではないかと不安を覚えているという。

芸能人に対する“整形”指摘は、相談者だけでなく、ネット上にあふれている。「○○ちゃん、目と鼻いじってるね」「○○、絶対整形した」とあたかも事実であるかのように言及したもののほか、「整形バレバレな芸能人●選」などのタイトルで特定の人物の比較写真を動画で堂々配信しているものもある。

中には、AKB48の柏木由紀さんのように、「鼻整形した?」というツッコミをメイクが上手いことへの褒め言葉として受け止めることを表明して、ネタとして昇華しているケースもあるが、芸能人の全てが柏木さんのような強者ではないだろう。

一方的に特定の芸能人に対して「整形だ」と指摘することは名誉毀損に当たるのだろうか。櫻町直樹弁護士に聞いた。

芸能人を紹介するブログで「あごを整形したようだ」と書いてしまった——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられた。

相談者は自身のブログで、とある芸能人の比較写真を載せて「整形」に言及。断定する形で書いたことで、名誉毀損になるのではないかと不安を覚えているという。

芸能人に対する“整形”指摘は、相談者だけでなく、ネット上にあふれている。「○○ちゃん、目と鼻いじってるね」「○○、絶対整形した」とあたかも事実であるかのように言及したもののほか、「整形バレバレな芸能人●選」などのタイトルで特定の人物の比較写真を動画で堂々配信しているものもある。

中には、AKB48の柏木由紀さんのように、「鼻整形した?」というツッコミをメイクが上手いことへの褒め言葉として受け止めることを表明して、ネタとして昇華しているケースもあるが、芸能人の全てが柏木さんのような強者ではないだろう。

一方的に特定の芸能人に対して「整形だ」と指摘することは名誉毀損に当たるのだろうか。櫻町直樹弁護士に聞いた。

●「見てすぐ目も鼻も整形てわかるっしょ」→名誉毀損になった例も

──どんな場合に名誉毀損となるのでしょうか。

名誉毀損は、人(法人、団体なども含む)の社会的評価を低下させるに足る内容を、不特定または多数に向けて発信(=公表)した場合に成立します。

刑法上の名誉毀損罪(刑法230条1項)に該当するのは「事実」を公表した場合だけですが、民事上の名誉毀損(不法行為、民法709条)は、人の社会的評価を低下させるに足る表現であれば成立し得ます。

【最高裁平成9年9月9日判決】
「問題とされる表現が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、成立し得る」

芸能人の「容貌の美しさ」が主な魅力で人気を集めている場合、「整形だ」と指摘することは、その美しさが「造られたもの」「ニセモノ」という印象を与え得るものですから、当該芸能人が社会から受ける客観的評価を低下させる、と判断される可能性は高いといえるでしょう。

──過去の裁判例ではどんな判断がされていますか。

「年々不細工になる」という表現について、「顔を整形したとの事実を摘示するもの」と解釈した上で、「読者に対し、暗に、原告は顔を整形したことがないかのように装っているが整形したことがあるとの印象を与え得るから、原告の社会的評価を低下させ得るものではある」と判示した民事裁判例があります(東京地裁平成24年8月8日判決)。

また、「見てすぐ目も鼻も整形てわかるっしょ」という表現について、「『整形手術』を受けたという事実は、一般人においては肯定的に捉える者も否定的に捉える者も含まれ得る事実ではあるものの」としたうえで、実際に書かれたネット掲示板では「『整形』を否定的な意味合いで書き込む者が多いことに照らせば、原告の社会的評価を低下させる内容」と名誉毀損を認めた裁判例もあります(東京地裁令和2年12月24日判決)。

一方、「原告が美容整形をしたような顔であるとか、歯の矯正をしたとの感想を持つ者が存在したとしても、原告が美容整形・歯の矯正をしたという事実を流布するものとはならないし、美容整形や歯の矯正をしたからといって、その事実が摘示されたことにより、直ちに社会的評価が低下することにはならない」として、名誉毀損にあたらないと判断した裁判例もあります(東京地裁平成25年11月12日判決)。

ただし、この裁判例は一般女性に関するものであり、「容貌の美しさ」が魅力の源泉となっている著名芸能人のケースとは事案が異なることには留意する必要があります。

●整形の事実公表「公共性が認められる可能性低い」

──整形の事実が「真実」であってもダメなのでしょうか。

特定人に関して社会から受ける客観的評価を低下させる表現を公表した場合でも、それが「公共の利害に関する事実」に関するものであり(公共性)、かつ、「目的が専ら公益を図ること」にあった場合で(公益性)、「摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったとき」または「真実と信じるに相当な理由があったとき」(真実性または真実相当性)は、違法性(または故意過失)が阻却され、名誉毀損についての責任を負わないという判断になります(最高裁昭和41年6月23日判決)。

ただ、「芸能人が整形しているか否か」は、一般公衆に知らしめることが社会的に正当であると認められる事実や社会一般と利害関係を有する事実というよりも、「あんなに綺麗だけど実は整形なんだよ」という興味本位・暴露的な要素が強いものであり、公共の利害に関する事実と認められる可能性は低いと思われます。

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