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「ポーカーの世界大会に出場したい」 そんな理由で「有給休暇」をとってもいいの?
2016年02月05日 11時55分

ポーカーの世界大会に出場したい――。首都圏の会社員Yさんはこのほど、海外で開かれるポーカーの大会に出場できる権利を抽選で手に入れた。通常なら出場するだけで1万ドル(約120万円)の費用がかかるが、今回は交通費以外すべてタダになるのだという。

優勝賞金は150万ドル(約1億8000万円)。ポーカーの腕前に自信のあるYさんは「一度は出場してみたい」と思っていた。だが、大会期間は1週間以上もあり、その時期はちょうど会社の繁忙期と重なっている。責任感の強いYさんは、有給休暇をとってまで行っていいものかどうかと悩んでいる。

はたして法的には、「ポーカーの大会に出場したい」という理由で有給休暇を取得していいのだろうか。もし、強行的に有給休暇を取得しようとした場合、会社からペナルティが与えられることはあるのだろうか。労働問題にくわしい大山弘通弁護士に聞いた。

ポーカーの世界大会に出場したい――。首都圏の会社員Yさんはこのほど、海外で開かれるポーカーの大会に出場できる権利を抽選で手に入れた。通常なら出場するだけで1万ドル(約120万円)の費用がかかるが、今回は交通費以外すべてタダになるのだという。

優勝賞金は150万ドル(約1億8000万円)。ポーカーの腕前に自信のあるYさんは「一度は出場してみたい」と思っていた。だが、大会期間は1週間以上もあり、その時期はちょうど会社の繁忙期と重なっている。責任感の強いYさんは、有給休暇をとってまで行っていいものかどうかと悩んでいる。

はたして法的には、「ポーカーの大会に出場したい」という理由で有給休暇を取得していいのだろうか。もし、強行的に有給休暇を取得しようとした場合、会社からペナルティが与えられることはあるのだろうか。労働問題にくわしい大山弘通弁護士に聞いた。

●有給休暇の取得に理由はいらない

「有給休暇をとるのに理由はいりませんし、会社に理由を告げる必要もありません。

したがって、そもそも『ポーカーの世界大会に出場したい』という理由で、有給休暇をとっていいものかどうかを悩む必要はありません」

大山弁護士はこのように述べる。Yさんが有給休暇を取得する場合、どうすればいいのだろうか。

「単に、取得したい日を会社に告げればよいだけです。最高裁も、有給休暇取得の目的がどういうものかは会社の干渉を許さない『労働者の自由』と言い切っています(昭和48年3月2日判決)」

●会社には「時季変更権」がある

Yさんは法的に何の問題もなく、有給休暇をとることができるのだろうか。

「注意しておきたいポイントが一つあります。有給休暇の取得によって、会社の事業の正常な運営が妨げられる場合、会社は別の日にするように要求する権利(時季変更権)があることです。

この時季変更権を会社に行使されてしまうと、有給休暇を申請した日が通常の労働日となってしまいます」

どんな場合に行使されるのだろうか。

「先ほど述べた『事業の正常な運営を妨げる場合』は、裁判上、厳格に考えられています。単に繁忙期というだけでは足りません。

会社としては、労働者が有給休暇をとれるよう、代わりの人を確保するなど状況に応じた配慮をしないといけません。そのうえで、それでも有給休暇を取得する労働者が休んでしまうと業務が成り立たない、という事情が必要になります。

一般の会社員で『余人をもって代え難い』という事情はおそらくないでしょうから、会社が時季変更をする理由はありません。もし、会社が時季変更権を行使すると言ってきたら、時季変更権の要件を満たしていないときちんと反論しましょう

●早いうちに会社に「承認」をもらおう

もし仮に、会社がそれでも聞き入れてくれない場合、どうすればいいのだろうか。

「有給休暇の取得を強行すると、会社は『無断欠勤』としてカウントするかもしれません。そうすると、戒告などの懲戒処分を受ける可能性があります。また、欠勤分の賃金をカットされるかもしれません。

しかし、要件を満たしていなければ、そもそも時季変更権の行使は無効です。労働者は当初の予定どおり、有給休暇を取得できますし、会社に対して、懲戒処分の無効と、カットされた賃金の支払いを求めることができます」

多くの会社員にとっては、そもそも無用な争いごとを避けたいのが本音だろう。どうすればいいのか。

「もし早いうちに予定がわかっているなら、なるべくすぐに会社に伝えて、会社の『承認』をとってしまうことです。

会社の『承認』は、『時季変更権を行使しませんという宣言だ』と解釈されています。会社がいったん承認したら、労働者は何の心配もなく、当初の希望どおり有給休暇を取得することができます。つまり、早めの根回しが肝心ということですね」


大山弁護士はこのようにアドバイスしていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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