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NHK受信料「時効」も最高裁判決の論点、原審支持なら「50年分一括請求も可能」
2017年12月05日 09時53分

最高裁が12月6日に判決を言い渡す「NHK受信料訴訟」。最大の争点は、受信料に関する「放送法」の規定の合憲性だが、それ以外にも重要なポイントがある。受信料支払い義務と消滅時効のタイミングだ。

NHK受信料問題に詳しい前田泰志弁護士は、「原審の東京高裁判決が支持されれば、理論上は50年分の受信料を一括請求されることもありえる」という。

最高裁が12月6日に判決を言い渡す「NHK受信料訴訟」。最大の争点は、受信料に関する「放送法」の規定の合憲性だが、それ以外にも重要なポイントがある。受信料支払い義務と消滅時効のタイミングだ。

NHK受信料問題に詳しい前田泰志弁護士は、「原審の東京高裁判決が支持されれば、理論上は50年分の受信料を一括請求されることもありえる」という。

●ワンセグ携帯、過去にさかのぼって払えと言われたら…

NHK受信料の消滅時効は、2014年の最高裁判決で5年と確定した。しかし、これは契約後、途中で滞納したという場合だ。今回の裁判では、一度も契約したことがない場合が争点になっている。

一度も契約していない場合、金額はどうなるのか。原審の東京高裁判決は、一審被告の男性に対し、受信料の支払いを命じる上で、(1)テレビ設置のタイミングまでさかのぼってNHK受信料を支払わなくてはならない、(2)時効は裁判確定後から進行する、と判断した。

この通りにいくと、たとえば、1964年の東京オリンピックのためにテレビを買って、受信料を一度も払ったことがない人は、約50年分の受信料を払わなければならないことになる。

確かに、実際に観ている人が払わないのは「タダ乗り」だし、そもそも放送法上、視聴の有無は関係ない。しかし、対象はテレビだけではない。地裁レベルで判断が分かれているワンセグについても、携帯電話購入時にさかのぼって支払えと言われる可能性があるのだ。

これに対し、男性側は、(a)支払い義務があるのは、判決が確定してからの分のみ、(b)消滅時効はテレビの設置時から進んでいる、と主張している。

時効をめぐっては、最近こんな判決があった。今年10月17日、最高裁第三小法廷は、1970年に交通事故で左下腿を切断し、2011年に障害年金の裁定と支給を請求した男性に対し、年金を受ける権利の時効5年は、障害の発生時から進行すると判断。請求から5年さかのぼった分の支給しか認めないとした高裁判決を支持した。

前田弁護士は、「この判決からすれば、時効については配慮した判決が期待できるのではないか。契約していれば、消滅時効は5年なのに、契約がなければ、実質無制限というのは不合理だ」と話している。

●NHKは時効に関係なく「全額請求」 受信料の「過払い」事例も

ちなみに、一度契約していれば、消滅時効は前述の通り5年。しかし、HPによれば、NHKは滞納分について、時効に関係なく「全額請求」の方針をとっている。

ざっくり言うと、時効は消費者側が適用を申し出ないと有効にならない(時効の援用)。時効のことを知らない消費者は、必要以上の金額を支払うはめになるのだ。

たとえば、NHK受信料を特集した、季刊誌「消費者法ニュース」の2017年7月号では、猪野亨弁護士が10年以上滞納していた高齢者に対し、徴収員が時効の説明をすることなく、約17万円をクレジット決済させたという事例を紹介している。NHKに苦情を入れても、まともに取り合ってもらえなかったという。

実際、裁判になっても返還は認められにくいようだ。東京都の女性が自宅を訪れた徴収員に、時効を超える7年分の受信料を支払ってしまったケースで、東京地裁は2016年12月、5年を超えた分は無効などとする女性側の主張を退けた。今さら時効を適用すると言われても遅いというわけだ。

消費生活センターに寄せられるNHK関連の相談は、この10年で4倍ほどになり、年間8000件を超えている。今回の最高裁判決が出た後も、混乱は続くことが予想される。

(弁護士ドットコムニュース)

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