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関西スーパー統合「ルーズヴェルトゲーム」の勝者は誰か 最高裁の判断に注目集まる
2021年12月11日 09時17分

まるで逆転また再逆転のルーズヴェルトゲームである。非上場のディスカウントスーパー「OKストア」を率いる「オーケー」(神奈川県横浜市)と創業62年の大手小売業「関西スーパーマーケット」(兵庫県伊丹市)の法廷闘争は、最高裁へとその舞台を移し、息もつかせぬ師走の最終決戦を迎えている。

週明けにも下される決定次第で、両社は天国と地獄の違いを味わうことになるのだ。(ジャーナリスト・森下太郎)

まるで逆転また再逆転のルーズヴェルトゲームである。非上場のディスカウントスーパー「OKストア」を率いる「オーケー」(神奈川県横浜市)と創業62年の大手小売業「関西スーパーマーケット」(兵庫県伊丹市)の法廷闘争は、最高裁へとその舞台を移し、息もつかせぬ師走の最終決戦を迎えている。

週明けにも下される決定次第で、両社は天国と地獄の違いを味わうことになるのだ。(ジャーナリスト・森下太郎)

●一人の株主の不可解な投票行動で混乱の極みに

事態がこじれてしまった経緯を簡単におさらいしておくと、横浜市に本社を置く「オーケー」(非上場)が老舗「関西スーパー」(東証一部)に買収提案を行ったのは2021年6月。その内容は、関西スーパーの上場来最高値である2250円で株式の公開買付けを行い、関西スーパーを非上場の子会社とするものだった。

この提案を好感して、株式市場では当時1000円前後だった関西スーパーの株価が7月末からうなぎ上りで、9月に2000円を超えて値上がりしたのである。

一方、買収の脅威を感じた関西スーパーは必死に生き残り策を模索した。その結果、同じ関西圏の小売業、阪神阪急グループ「エイチ・ツー・オー(H2O) リテイリング」(大阪市北区)との経営統合を決め、10月末にその可否を問う臨時株主総会を開催。3分の2以上、具体的には66.67%以上の賛成を勝ち取り、オーケーからの提案を撃退しようと試みた。

この運命の株主総会で起きた珍事の詳細については、前の記事(関西スーパー統合、一株主の「うっかり」が招いた大どんでん返し 裁判でわかった舞台裏)をご参照願いたいが、総会に出席した一人の株主の不可解な投票行動で、事態は混乱の極みに達してしまったのだ。全国紙の経済部記者が説明する。

「関西スーパーの株を0.87%ほど保有する山口県に本社のある大株主のスーパーの副社長が株主総会に来たのです。このスーパーの社長は、オーケーの買収提案には反対しており、総会の前に関西スーパーとH2Oの経営統合に賛成する委任状を郵送しています。

ところが、傍聴に訪れた副社長が傍聴席でなく、株主総会に出席してしまった。さらに、質疑応答の後の投票で、未記入の投票用紙を投票箱に入れるという二重のアクシデントが起きてしまったのです。総会に出席すると、事前に郵送した委任状が無効になると知らずに、二重の投票になるといけないと誤解したようです」

●株主総会で大株主が覚えた「胸騒ぎ」

未記入の投票行動は棄権とみなされ、事実上、オーケーを利する結果に繋がる。細やかな集計に時間が掛かる中、僅差だというアナウンスを聞いた副社長は何やら胸騒ぎを覚え、自ら、自分の意思が関西スーパーとH2Oの経営統合に賛成だったことを事務局に申し出たという。

驚いた関西スーパーが、その主張を受け入れて集計をやり直した結果、66.68%の賛成で関西スーパーが勝利。もし、副社長が訂正を申し出ていなければ、関西スーパーは負けていたことになる。

「しかし、オーケー側は白紙投票を後に訂正したことは、不正だとして神戸地裁に訴え、11月下旬に認められてしまいました。神戸地裁は、株主総会に出席した上で白票を投じたことは、関西スーパーの議案に賛成でないという意味にしかならないし、投票のための議場閉鎖が解除された後は訂正できないという原則論に立ったのです」(同)

形式を重視して当該の副社長の投票行動を解釈した結果、薄氷の勝利を収めたはずの関西スーパーは、一転、氷が破れて冷たい水の中に落ちてしまったわけだ。

H2Oとの経営統合の夢が絶たれれば「OKストア」の子会社になるしか道は残されていない。ところが、一縷の望みを繋いで、大阪高裁に保全抗告した結果、12月7日、まさかの再逆転。

「大阪高裁は、株主総会の詳細なルールについては専門家でなければわからないし、副社長が賛成票を二重計上されないように白紙で投票した行動も無理からぬもので、副社長の投票を賛成として集計したことを正当だと評価したのです。この決定によって、H2Oとの経営統合が蘇り、オーケーの傘下に入らなくてもよくなりました」(同)

●オーケーに残された切り札とは

一方、目前の勝利を逃したオーケーは納得できない。さらなる再々逆転を目指して目下、最高裁に抗告し、まもなくその判断が下ることになる。

だが、もしもその願いが叶わずに敗れたとしても、オーケーにはもう一枚、とっておきの切り札が残されている。それが株式の買い取り請求である。

というのも、経営統合に関する特別決議に反対した株主は、保有する持ち株の買い取りを求めることが会社法で認められていて、今回、オーケーが敗れたときには、その権利が発生するのだ。

有価証券報告書によれば、2016年以降、オーケーは関西スーパーの株231万株を市場から取得して保有している。この時の平均株価はおおよそ1300円程度と見られ、ざっと見積もると取得費用は約30億円。これをこのところの直近数カ月の平均株価、仮に1800円程度で売却することができれば、10億円以上の利益が生じる計算だ。

つまり、もしもTOBの望みがかなわなくても、大々的に買収提案を行ったおかげで、オーケー側は特別な費用もかけずに関西スーパーの株価を高値まで吊り上げ、売り抜けられると見ることもできる。

果たして混迷するルーズヴェルトゲームの真の勝者は誰だったのか。最高裁は週明けにも判断を下す模様だ。

【筆者プロフィール】 森下太郎(ジャーナリスト):政治、経済分野を中心に1990年代から取材活動をおこなう。

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