7728.jpg
「社費留学」した10カ月後に退職しよう・・・会社に費用を返さないといけないの?
2016年02月28日 11時07分

会社の費用で海外留学をした後、しばらくして退職しようーー。そんなことを考えている会社員の男性が、退社したら留学費用を返還しなければいけないのかという疑問を、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せた。

男性によれば、「自主都合で退社する場合、留学後5年間の退社であれば留学費用の一部あるいは全額を返還という誓約書に署名しています」という。男性は留学後、10カ月での自己都合での退社を考えている。そのため、費用の返還が必要となってくるが、できるだけ支払いたくない意向だ。

この男性以外にも、ネット上では留学後の費用返還をめぐるトラブルが多く寄せられている。退職に際しては、社費留学の費用を返還しなければいけないのだろうか? 靱 純也弁護士に聞いた。

会社の費用で海外留学をした後、しばらくして退職しようーー。そんなことを考えている会社員の男性が、退社したら留学費用を返還しなければいけないのかという疑問を、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せた。

男性によれば、「自主都合で退社する場合、留学後5年間の退社であれば留学費用の一部あるいは全額を返還という誓約書に署名しています」という。男性は留学後、10カ月での自己都合での退社を考えている。そのため、費用の返還が必要となってくるが、できるだけ支払いたくない意向だ。

この男性以外にも、ネット上では留学後の費用返還をめぐるトラブルが多く寄せられている。退職に際しては、社費留学の費用を返還しなければいけないのだろうか? 靱 純也弁護士に聞いた。

●留学に「業務性」があるか?

「留学費用の返還は、その留学に業務性があるか否かによって、判断がわかれます」

どういうことだろうか。

「業務性が認められる場合は、費用返還するとの誓約書があったとしても、労基法16条に違反して無効であり、費用を返還する必要はありません。

業務遂行に必要な費用は本来、使用者が負担すべきものです。そのため、退職したときは労働者が費用を支払うという合意は、実質的には労働者の『退職の自由』を不当に制約するものといえます。

したがって、このような誓約書は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償を予定することを禁止している労基法16条に違反するため、無効と判断されます」

●返還するべき場合とは?

留学費用を返還しなければならないのは、どのような場合だろうか。

「いっぽうで、留学に業務性がない場合、本来その費用は労働者が負担すべきものです。そこで、留学に業務性がなければ、原則として留学費用を返還する必要があります。

一定期間内に退職した場合に留学費用を返還するとしても、労働者の退職の自由を不当に制約するとまではいえません」

留学の「業務性」はどのように判断されるのだろうか?

「裁判では、具体的な事情を検討して業務性の有無を判断しています。

海外留学の事例で、留学を職場外研修の一つに位置付けており、業務に関連する学科の専攻を命じられていたケースでは、留学の業務性を認め、費用返還が否定されました(東京地裁平成10年9月25日 新日本証券事件)。

他方、同じ海外留学の事例でも、留学が形式的には業務命令だったとしても、留学先での科目選択や留学中の生活が本人の自由に任せられていたケースでは、業務性が否定され、費用返還が認められています(東京地裁H14.4.16 野村證券事件)。

今回の相談者の投稿内容からは、どのような留学であったかは不明です。しかし、誓約書を書いていても、返金しなくてよい場合もありますし、費用全額ではなく一部の返金でよい場合もあります。

その留学に業務性があったか否かをもとに、会社側と交渉することになります」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る