7817.jpg
「黒髪以外NG」「ヒゲ、ツーブロック禁止」会社の身だしなみルール、厳しすぎない?
2023年09月05日 09時45分

ヒゲや茶髪、ツーブロック禁止など「身だしなみ」についての独自ルールを設ける会社がある。特に客先に出向くことが多い営業であれば、自分好みの髪型やカラーを楽しめないことも少なくない。

「スパイラルパーマで会社に行ったら怒られた」「紫のインナーカラーがバレて、やめるように言われた」など、ネット上には実際に怒られたサラリーマンからの投稿が並ぶ。人前に出るという理由で「黒髪以外NG」の企業もあるようだ。

そもそも、社内ルールで従業員の髪型を制限することは許されるのだろうか。中村新弁護士に聞いた。

ヒゲや茶髪、ツーブロック禁止など「身だしなみ」についての独自ルールを設ける会社がある。特に客先に出向くことが多い営業であれば、自分好みの髪型やカラーを楽しめないことも少なくない。

「スパイラルパーマで会社に行ったら怒られた」「紫のインナーカラーがバレて、やめるように言われた」など、ネット上には実際に怒られたサラリーマンからの投稿が並ぶ。人前に出るという理由で「黒髪以外NG」の企業もあるようだ。

そもそも、社内ルールで従業員の髪型を制限することは許されるのだろうか。中村新弁護士に聞いた。

●ルール自体は違法ではないが、ペナルティは慎重に

ーーそもそも、企業は服装・髪型についてのルールをつくってもよいのでしょうか。

はい。企業秩序を維持するため、服務規律の一環として服装・髪型などについて一定のルールを定めることができます。ルールを定める場合、就業規則の「服務規律」もしくは「遵守事項」の項に内容が記載されることが多いでしょう。

他方、服装や髪型の自由は、自己決定権ないし表現の自由の一環として個人に憲法上保障される権利です。そのため、過度の制約に至らないようバランスを取ることが必要です。

制約は、企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内においてのみ認められます。具体的な制限行為の内容については、制限の必要性、合理性、手段方法としての相当性を欠くことのないよう特段の配慮が要請されます(東谷山家事件:福岡地小倉支判平成9年12月25日)。

ーー具体的には、どのようなことであれば許されるのでしょうか。

職務の性格上必要な制服・制帽などの着用を就業規則で義務づけることは可能です。接客業などの場合、顧客に不快感を与えるおそれがある髪型や服装を禁止するルールを就業規則に設けても、それ自体を違法・無効ということはできません。

しかし、ルール違反を理由としてペナルティまで課すことには慎重な配慮が求められます。以下の裁判例が参考になります。

【イースタン・エアポートモータース事件:東京地判昭和55年12月15日】
「ひげ」を禁止する就業規則に違反して口ひげを剃らなかったハイヤー運転手を乗務停止処分にした事例です。服務規律規定は、顧客に不快感を与える「無精ひげ」、「異様・奇異なひげ」のみを禁じるものとする限定解釈がされました。

【郵便事業(身だしなみ)事件:大阪高判平成22年10月27日】
ひげを生やしていることが社内の身だしなみ基準に反しているとして注意され、マイナスの人事評価をされた事例です。裁判所は「顧客に不快感を与えるようなひげ及び長髪は不可とする」という内容に限定して制限すべき、として考課を違法としました。

●明確に望ましくない髪型などは就業規則で「例示」を

ーー企業は、どのようにルールの文言を考えればよいのでしょうか。

業務の性格上望ましくない服装や髪型を明瞭に想定できる場合には、就業規則で例示しておくことが最善の対処法でしょう。

しかし、実際に「企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内」の規制を明示することには、かなりの困難が伴うと思われます。例示や指定があまりに細部まで及んでしまうと、規制そのものの有効性が疑われることにもなりかねません。

「業務遂行に支障をきたすような髪型・服装をしないこと」などの概括的な規定を就業規則に置いたうえで運用を積み重ね、企業秩序維持のために必要な服装・髪型の範囲についてコンセンサスを形成していく方針が現実的だと思います。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る