四国にある天台宗の寺で尼僧が、14年にもわたり住職から性加害を受けたとうったえている問題で、天台宗は、この住職を「罷免」(住職の職を解く)としたことがわかった。また、性加害を手助けしたとされる大僧正については処分なしと判断した。
住職ら2人の僧籍はく奪を求めていた尼僧、叡敦(えいちょう)さんは4月4日、東京・永田町で記者会見を開いて、今回の処分について「本当に絶望している」と心境を吐露。宗務総長による不服申し立てや第三者委員会の設置を求めていることを明らかにした。
●「信じがたい結果」別の寺で住職になれる「罷免」
「悲しくて生きていることが耐え難く苦痛」。叡敦さんは、会見で涙ながらに声を振り絞った。
申告書によると、住職は2009年10月から2023年1月までの間、既婚者である叡敦さんの意に反する性暴力や説教という名目で、侮辱や恫喝(どうかつ)したとされる。
叡敦さんは、住職と加害の手助けをしたとされる大僧正に対し、僧侶としての身分ををはく奪する「擯斥」(ひんせき)にするよう申し立てた。
天台宗は申し立てを受けて、1月から3月にかけて3度、非公開による審判会を開催。加害した僧侶については「罷免」。加害の手助けをした大僧正については、「懲戒規定に該当しない」と決定した。
罷免は、その寺院の住職ではなくなるものの、天台宗の僧侶として活動でき、他の寺院であれば住職にもなれる。叡敦さんは「信じがたい結果」と嘆いた。
審判結果の内容について、天台宗の宗務庁は「不服申し立て期間中なので、結果も含めて答えられない」とした。
●審判会には一度も呼ばれず「手を合わせられなくなった」
審判会には叡敦さん側が呼ばれることは一度もなく、書面による審議だったという。
「非公開での審判会が開催され、たった3回で不当な決定が下されました。ショックが大きく、何も手がつけられませんでした。どのように考えてよいか本当にわかりませんでした」(叡敦さん)
審判結果に対する不服申し立ての期間は20日間あるが、不服申し立てできるのは、住職ら2人と宗務総長だけで、叡敦さんには権利がない。
そのため、細野舜海宗務総長に対して、不服申し立てをおこなうよう書面を送ったことを明かした。
加えて、第三者委員会の設置も要望。代理人をつとめる佐藤倫子弁護士は「性犯罪に関する知見があるわけでもない天台宗の僧侶3人で、本当にきちんとした事実認定や適切な判断が果たしてできるのか。甚だ疑問」とした。
この日の会見後半、記者から信仰心を問われた叡敦さんは「今回の処分を聞いて、手を合わせることができなくなった。それこそ神も仏もないのかという感じ」と力なく答えた。