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「いじめ問題に法的なアドバイスを」 学校現場への「弁護士派遣」ひろがる
2013年02月12日 15時41分

深刻化する学校のいじめ問題。ときには民事事件や刑事事件にまで発展することがあるが、その対策の一つとして、全国の教育委員会では「弁護士」を教育現場に派遣しようという動きが広がっている。法律知識が十分とはいえない現場の教師に対して、法的な観点からアドバイスをしてもらうのが狙いだ。

●「いじめ問題の法的解決の方法は?」弁護士がアドバイス

福岡県教育委員会では、昨年9月に政府が「いじめ問題アドバイザー」として弁護士や精神科医に協力を要請する方針を明らかにしたことを受け、県としても独自に外部の専門家チームを作ることを考えている。そのチームの一員として、弁護士にも入ってもらうことを検討しているのだ。

福岡県では2006年に、筑前町の中学校に通っていた生徒がいじめを苦にして自殺するという事件が発生している。この事件を契機として、教育事務所に所属する指導主事やスクールカウンセラーで構成されるサポートチームが、いじめ問題が起きた学校に派遣されてきた。今回はさらに、弁護士を派遣することで、法的なアドバイスをもらうことを想定している。

同県教委・義務教育課の担当職員は「いじめの被害にあっている児童・生徒やその保護者が法的に問題を解決したい場合に、『いじめの相手はどんな罪になるのか』『訴訟をする際の手続きはどうするのか』といった点について、弁護士に助言してもらえればと思っています」と話す。

●学校が「どのように説明責任を果たせばいいか」を相談

また大阪府教育委員会では昨年、滋賀県大津市の中学生自殺事件をきっかけに、いじめ問題がクローズアップされるようになって以降、学校に弁護士を派遣することを検討しはじめた。その狙いは福岡県とは少し違っており、学校の「説明責任」についてどのように対応すればいいのか、アドバイスをもらうのが主眼になっているという。

「法律知識が十分とはいえない小中学校の管理職に対して、『どのように説明責任を果たしたらいいのか』という点について、弁護士に法的な助言をしてもらえればと考えています」(同府教委・市町村教育室小中学校課の担当職員)

弁護士に相談するのは「説明責任の分野」限定で、「学校の法律問題全般に対応してもらうことは、今のところ考えていません」という。「大阪府が専属の弁護士と契約し、いじめが発生した場合、学校に派遣します。人数は、1人か2人程度を予定しています」

大津市のいじめ事件では、自殺した生徒の遺族が市や加害者とされる同級生に対して損害賠償を求める訴訟を起こし、滋賀県警が学校を強制捜査したうえで同級生を暴行容疑で書類送検するという事態に発展している。深刻ないじめの場合は、民事や刑事の事件にまで至る可能性があるのだから、弁護士の法的な助言が求められるのも当然といえるだろう。

学校現場に弁護士が出向くのは異例ともいえるが、ニーズは高いようだ。「弁護士の助言で、学校が自信を持っていじめ問題に対応できるようになれば良いですね」と福岡県の担当職員は話している。

(弁護士ドットコムニュース)

深刻化する学校のいじめ問題。ときには民事事件や刑事事件にまで発展することがあるが、その対策の一つとして、全国の教育委員会では「弁護士」を教育現場に派遣しようという動きが広がっている。法律知識が十分とはいえない現場の教師に対して、法的な観点からアドバイスをしてもらうのが狙いだ。

●「いじめ問題の法的解決の方法は?」弁護士がアドバイス

福岡県教育委員会では、昨年9月に政府が「いじめ問題アドバイザー」として弁護士や精神科医に協力を要請する方針を明らかにしたことを受け、県としても独自に外部の専門家チームを作ることを考えている。そのチームの一員として、弁護士にも入ってもらうことを検討しているのだ。

福岡県では2006年に、筑前町の中学校に通っていた生徒がいじめを苦にして自殺するという事件が発生している。この事件を契機として、教育事務所に所属する指導主事やスクールカウンセラーで構成されるサポートチームが、いじめ問題が起きた学校に派遣されてきた。今回はさらに、弁護士を派遣することで、法的なアドバイスをもらうことを想定している。

同県教委・義務教育課の担当職員は「いじめの被害にあっている児童・生徒やその保護者が法的に問題を解決したい場合に、『いじめの相手はどんな罪になるのか』『訴訟をする際の手続きはどうするのか』といった点について、弁護士に助言してもらえればと思っています」と話す。

●学校が「どのように説明責任を果たせばいいか」を相談

また大阪府教育委員会では昨年、滋賀県大津市の中学生自殺事件をきっかけに、いじめ問題がクローズアップされるようになって以降、学校に弁護士を派遣することを検討しはじめた。その狙いは福岡県とは少し違っており、学校の「説明責任」についてどのように対応すればいいのか、アドバイスをもらうのが主眼になっているという。

「法律知識が十分とはいえない小中学校の管理職に対して、『どのように説明責任を果たしたらいいのか』という点について、弁護士に法的な助言をしてもらえればと考えています」(同府教委・市町村教育室小中学校課の担当職員)

弁護士に相談するのは「説明責任の分野」限定で、「学校の法律問題全般に対応してもらうことは、今のところ考えていません」という。「大阪府が専属の弁護士と契約し、いじめが発生した場合、学校に派遣します。人数は、1人か2人程度を予定しています」

大津市のいじめ事件では、自殺した生徒の遺族が市や加害者とされる同級生に対して損害賠償を求める訴訟を起こし、滋賀県警が学校を強制捜査したうえで同級生を暴行容疑で書類送検するという事態に発展している。深刻ないじめの場合は、民事や刑事の事件にまで至る可能性があるのだから、弁護士の法的な助言が求められるのも当然といえるだろう。

学校現場に弁護士が出向くのは異例ともいえるが、ニーズは高いようだ。「弁護士の助言で、学校が自信を持っていじめ問題に対応できるようになれば良いですね」と福岡県の担当職員は話している。

(弁護士ドットコムニュース)

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